1998年10月29日木曜日

Butterfly

Mariah Carey [ J.Horner/W.Jennings ]

昨年リリースされたアルバムからの曲で、いつも通りの抜群の歌唱力で聴かせる。私生活では色々あったようだが、相変わらずの歌声だ。

ソウル系に影響されてるであろうマライアの声は、序盤は抑え気味にささやくような感じで歌い、後半には天まで届くような圧倒的な声量となる。まさに殻を破ってチョウが空を舞うイメージそのままだ。しかもそのチョウが最高に美しい。声も美しければ見た目も美しい。マライアは殻を破って更に美しく羽ばたくのだろう。

ささやくような部分はサナギのようでかわいらしい感じすらする。それでいて声のセクシーさ、後半の圧倒的な存在感、そして美、感情表現。女性の素晴らしさを全部持っているような曲だ。

曲はピアノで静かに始まる。まさに外に出る直前のようだ。この音は本物の生ピアノに違いない。最近ではサンプリングした音や、生だとしても周波数を細かくコントロールしているものがほとんどで、ピアノの音が好きな者には高音が強調され、抜けが良すぎるような音は違和感を覚えるものが多いが、この曲のピアノはまさに本物の音だ。

ピアノの音に加え、ベースの音も好きだ。土台を支える重低音は、主張することなく縁の下の力持ちに徹している。アタック音がそれほど強くなく、高音の成分も少ないこのような音が本来のベースの醍醐味ではないかと思う。

この曲のサビは重厚なハーモニーになっている。最近のマライアの曲は比較的このようなタイプが増えてきているように思う。私は重厚なハーモニーと自由にフェイクするリード・ボーカルというパターンが好きだ。この曲もその典型例だ。しかもマライアのフェイクはとてもテクニカルで、そしてエモーショナルだ。終盤はハーモニーが聴こえなくなってしまうほど引きつけられてしまう。

静かでムードのある序盤から圧倒的な後半、そして最後は静かなピアノで終わる。起伏が凄まじく、曲が終わる頃には本を読み終わったり映画を見終わった時のような心地よい疲労感すら漂う。わずか数分の曲だが、起伏に富んだ感情の旅を終えた感じだ。これこそが音楽を聴く価値であり、素晴らしい時間の過ごし方のように思う。

何だか最後は大袈裟な話しにまで発展してしまった。^_^;