2004年7月25日日曜日

Substitute

The Who [ P.Townshend ]

昨日、伝説のバンドThe Whoの初来日を横浜で見た。60年代当時から荒くれ者のイメージのあった彼らの曲は、後のメタル・バンドのようなリフを重視した曲があったり、ボーカルもかなりラフにシャウトしたりというものが多いのだが、よく聴けば60年代の音楽そのものだ。美しいメロディやハーモニーがあり、曲もアイディアに満ち溢れている。そのワイルドさと知的さのバランスが最高なのだ。

この曲は1965年の曲だが、実はこの曲を知ったのはThe Whoでではない。80年代のLAメタル・バンドのGreat Whiteというバンドがカバーしているのを聴いたのが最初だ。チープなメタル・ソングだと思っていた。LAめたるのチープさが実に似合う曲だと思っていた。
ところがずっと後にThe Whoのバージョン(つまりオリジナル)を聴いて、そのアコースティックなアレンジやハーモニー、雰囲気が素晴らしいことを知った。何でもギャップの差を感じさせるものは面白いと思う。この曲も軽やかなパートとヘヴィな雰囲気のパートの対比が一つの注目点だと思う。

まず出だしのリフ。ルート音の「D」を鳴らし続けていて、上が「D」「A」「G」「D」と下がって来る感じだが、とても印象的だ。最初の歌い出しの部分のベースもポップで良い。別に珍しいパターンではないが、こういう曲で使うところが良い。

ブリッジ部の「Em」のところが良い。Great Whiteのバージョンでも、ここはメタル風を強調して「ドドドド」という風に弾いていたと思うが、ギターやベースの一番低い音で畳み掛けるような雰囲気が出せるとカッコいい。コード進行的には「Em」「G」「D」とシンプルだ。

このヘヴィな部分に続いてイントロと同じパターンで「Substitute」というコーラスに入る。やはりこの曲はこの3音節がすべてといって良いほど素晴らしいというか面白い。一番目立つ高い音は、実は主旋律ではない。

このハーモニーを追うように出て来るボーカルの低めでラフな掛け合いが最高だ。

2004年7月7日水曜日

Heaven Tonight

Yngwie J. Malmsteen [ Y.Malmsteen/J.L.Turner ]

クラシカルで叙情的な早弾き王として君臨していたYngwieにしてはポップで売れ線狙いのシングルかなと思わせる曲だ。

まず、それまでの彼の曲からすると驚きのコーラス・ハーモニーで曲がスタート。4声くらいの印象的なハーモニーで、毎回サビで登場するが、伴奏なしはイントロだけだ。この出だしで「おっ」と思っていると、結構キーボードが目立つイントロに入る。マイナー調がほとんどの彼のイメージとは随分異なり、明らかに明るくポップな雰囲気だ。
ボーカルが入って来てからもキーボード4分打ちをしていて、やはりポップだ。このアルバムに参加したボーカルのJoe Lynn Turnerがポップな人なのでその影響かもしれないが、このような曲調でもYngwieのギターは最高にカッコいい。音もクリアで暖かみのある音で実に良い。彼のギターはストラトキャスターだが、ストラトはシングルコイルなので音が生々しい。気持ち良く歪んでいるが、生々しい音が素晴らしい。

ギター・プレイを見てみると、早弾き王らしく、ソロ以外でも随所で弾きまくっている。最初のヴァースの繰り返しの間も、16分音符でハーモニック・マイナーを下るパートがある。ブリッジからコーラス部に移るところでも16分音符でスケールを上って下るパートがある。

曲にとってどうしても必要なパートとは思えないが、早弾きの美しさや凄さが強調されるし、何より意気が良い曲になる。若さとエネルギーが有り余っていて元気で良い。

ギターソロはお約束的に早弾きのオンパレードで、それはそれで凄いのだが、ソロの後のコーラスが好きだ。ボーカル・ハーモニーと8分打ちのキーボードでギターはなし。裏打ちのリズムとそれに合わせるベース。たまに入るベースの「ズドーン」という感じのスライドがカッコ良い。

この曲のビデオ・クリップで初めて動いている彼を見たのだが、何となく気難しそうな雰囲気だし、これほどハイレベルなプレーなのだから、怖い顔をしてギターに集中しながら手ばかり見て弾くのだろうと思っていた。ロックだから、さすがに椅子に座っていることはないだろうが、相当に集中出来る環境でないと厳しいだろうと予想していた。
ところがところが、ライブ仕立てのビデオ・クリップの中の彼は、様々なアクションを決めながら大暴れしながら余裕で弾いている。激しいアクションながら、ギターを触る手は軽やかで、かなり余裕の様子。トップ・プロのレベルの違いに打ちのめされたのを覚えている。

もちろんビデオは純粋なライブではなく、あくまで演技なのだが、実際の彼のライブでもビデオと変わりなく暴れ回りながらのプレーなので、その衝撃度は変わることはない。