2003年12月31日水曜日

Green-Tinted Sixties Mind

Mr.Big [ P.Gilbert ]

聴いた瞬間から一発で気にいった曲だ。風変わりなイントロ、落ち着いた出だしから盛り上がるサビ、厚いハーモニー、変拍子がありながら分かりやすい間奏、今と昔をつなぐようで色彩のある歌詞、どれも最高だ。Mr.Bigの代表曲ではあるが、もっとヒットしてもおかしくないように思う。

ギターのメロディが印象的なイントロだが、ギターをやっている人の方が風変わりで難しいフレーズだということが分かるだろう。難しさの原因は音程の幅だ。流れるような16分音符のフレーズでありながら、ギターで弾くとローポジションからハイポジションまで駆使しなければならない。Paul Gilbertはライトハンドを使って弾いているが、使わなくても弾ける。しかし難しいことには変わりない。

ブリッジからサビにかけてのコード進行は、ほとんどベース音が変わるだけなのだが、とてもいい感じの響きで面白い。「That's reaching into her dreams」からのブリッジ部は「EonD」 「EonC#」 「EonB・B」 「D」で、半分以上が「E」だ。サビの部分は「E」 「EonF#」 「EonG#」 「EonA」 「EonC#」 「EonB」 「A#m7(♭5)」 「A・B」で、またまたほとんど「E」。しかしベース音だけで随分違って聴こえるものだ。「A#m7(♭5)」も実に良い。

ライブでは間奏の直後に演奏を止めてアカペラ状態でハーモニーを決めていたが、Mr.Bigはハーモニーも売りにしているだけあって本当にキレイだ。メンバー4人すべて歌えるのだが、この曲は3声のハーモニーではないだろうか?あと一つは??

タイトルにも出て来るが、「60年代」というのが一つのキーワードになっている。作者のPaul GilbertはかなりのBeatlesでも有名だが、この曲はとてもBeatles的だ。曲の構成は特にBeatlesっぽいわけではないのだが、例えば間奏に出て来る16のタンバリンやコーラスワークがそう感じさせるのだろう。

歌詞も60年代の雰囲気を歌っている箇所がいくつもあって、「Janis」とはあのブルーズの女王・Janis Joplinのことだろう。タイトルの「Green」というのも、何となく昔の映画が緑っぽく変色しているような感じを連想させて、「古き良き時代」を想うようになっている。セピア色とか黄色く変色するというのはよく使われたりしてありがちだが、「緑っぽい雰囲気」というのはよく分からないのに、あの時代を想う時、どこか「緑っぽさ」を感じる。意味も分からないのに納得してしまうような表現だ。
ちなみに「あの時代」と言っているのはBeatles全盛時代の後にやって来る、フラワー・ムーブメントの時代、すなわち1960年代後半、ウッドストックをはじめとするあの時代の感覚だ。

この曲のビデオ・クリップもそれっぽくて良い。Beatlesの映画「Magical Mystery Tour」を連想させるカラフルな色使いはモロに「あの時代」のサイケデリックな感じだ。

2003年12月25日木曜日

All I Want For Christmas Is You

Mariah Carey [ W.Afanasieff/M.Carey ]

日本ではテレビ・ドラマで使われたそうで(実はよく知らない)、「恋人たちのクリスマス」という邦題でかなりの人気の曲となり、今やクリスマス・シーズンの定番の一曲となっている。
実は個人的には特に「凄く好き」と言えるほどの曲ではない。彼女の曲では、感動的に歌い上げるようなものが好きだ。ただし、ライブで聴いた時は元気なリズムも含め、とても楽しめた。CDとライブとでは違うのだ。
なぜこの曲を取り上げたかというと、今日、偶然ラジオで聴いて、色々なことがフラッシュバックするように頭に浮かんだからだ。

人は、あまりにも理想的なものを得るとどうなるだろうか。まるで手に届かないような夢のような話しが突然現実と化し、しかも自分が望んでいる以上の形で手に入り、更にはそれが自分が考えていた以上に素晴らしいものだったとしたら・・・。
実際、そんなことが起こるのかどうか、それは別として考えてみてほしい。

もちろん嬉しくなるだろうし、踊り出したくなるかもしれない。夢ではないかと頬をつねってみるかもしれない。
その後はどうなるのだろう。間違いなく現実であるということが分かり、簡単には消えてなくなることがないことも分かった。

多分、精神的にとても不安定になるのではないか。それだけ素晴らしいものを手に入れたのなら、それを失うことを極端に恐れるだろうし、傷つけたりすることも怖がるだろう。究極的に理想的なものなら、正気を保つことも難しいかもしれない。
それは精神的未熟さだろう。または経験の問題か。一度、そのような体験をしていれば、次に同じ状況になった際は比較的冷静でいられるのかもしれない。しかし、そのような理想的な状況は、人生に何度もあるものではないように思う。

クリスマスは平日であることが多い(イブのイブは祝日だが)。恋人たちは仕事等の合間をぬって時間を作る。それも叶わない人たちもいる。障害や欠点、負のベクトルがあるからこそ安定的な幸せに向かえるのではないだろうか。

もし、理想が手に入りそうな場合、急いで確保すべきだろうか。慌てずゆっくり確実に進むべきだろうか。分からない。

しかし確実に言えることは、手に入った後はゆっくり時間をかけるべきだということ。決して走ってはいけない。踊り出し、走り出したいのをジッとこらえることは、時間で想いを蓄積する楽しみでもあると言えるのではないだろうか。

2003年12月24日水曜日

Happy Xmas

John Lennon [ J.Lennon ]

キリスト教の国でもないのに、クリスマスの季節になるとあちこちでイルミネーションがとてもキレイだ。ロマンチックな雰囲気が溢れる。
この曲の中にも「so happy Xmas, and happy new Year」と出て来るように、欧米では「クリスマス休暇」のようにしてクリスマスと新年を祝う。しかしなぜか日本では12月24日がメインで、25日が過ぎれば完全にクリスマス気分は終わり、新年を迎える体勢に切り替わる。今度は和風な感じだ。

この曲で歌詞で印象的なのは「War is over if you want it」の部分だろう。まったくその通りで、あなたが望めば戦争は終わる。「あなた」とは、ある特定の一人ではなく、誰かにとっての「あなた」であり、それは複数いる。英語で「you」の複数形も「you」なのに感心してしまう。
戦争を望む誰かがいるから戦争が起こるのだ。イラク戦争のあった今年はこれが実感出来る。しかし、人類と戦争は切っても切れない関係なのかもしれない。
いやいや、「人類」などと言っている間はJohnのメッセージを分かっていないことになる。それではまるでひと事だ。「私は戦争を望まない。あなたは?」これを繰り返し、ずっとつながっていけば、やがて「Happy Xmas」ということになる。

先日発売されたJohnのビデオクリップ集のDVDにこの曲のものもあったが、あまりに悲惨な戦争の映像に、思わず目をそむけたくなった。しかし、目をそむけようとも、これが現実なのだ。現実である以上、「目をそむける」「忘れよう」というような行為は逃げにすぎず、偽善者と呼ばれても仕方がない。まずは現実であることを知り、何が起こっているかを考えることから始めなければならないと思った。それがJohnのメッセージでもあるのだろう。

曲の冒頭でJohnとYokoがささやいている。前妻、前夫との子供に呼びかけており、「複雑な事情があってもクリスマスを祝おう」ということなのだろう。

演奏で印象的なのはマンドリンだ。たくさんのコーラスが出て来る壮大な曲だが、このマンドリンのおかげで素朴な感じもして良い。

エンディングまでしっかり収録されているバージョンは意外に少ないようだが、当初からのバージョンは感動する。長いリフレインが終わって演奏が終わって、拍手や歓声が聞こえるのだが、その中からやがて「Happy Xmas」の大合唱へと変化していく。

2003年12月20日土曜日

Rising Force

Yngwie Malmsteen [ Y.Malmsteen/J.L.Turner ]

ハードロック/ヘヴィメタル界のスーパー・ギタリスト・Yngwieの初登場だ。知らない人のための簡単に紹介するが、まずこの名の発音だが、カタカナ表記ではよく「イングヴェイ」と書かれる(実際の発音とは微妙にニュアンスが違う)。スウェーデン出身なので、おそらくそちらでは普通の名前なのだろう。
1980年代中盤に登場した超ハイテク・ギタリストで、凄まじい限りのスーパープレイで世界中を早弾きブームにした。クラシック音楽からの影響を曲に大胆に取り入れ、叙情的かつ劇的な曲が人気を呼び、ギタープレイもまるでオーケストラの第一バイオリンのような演奏ぶりだ。
ただ、クラシックの影響を強調してはいるが、基本的には根っからのロック人間で、当然のことながらクラシックよりもロックからの影響の方が圧倒的に多く、優れたロック・ギタリストであることは言うまでもない。

この曲はアルバムのオープニングを飾るアップテンポの曲で、スピードメタル系の曲に通じるものがある。が、そこは彼の曲、かなりメロディアスで、単に勢いだけの曲ではない。スローにして、ピアノとかアコースティックの曲にしても通用する美しい曲でもある。

また、サウンドも素晴らしい。特にギターの音は、ストラトとマーシャル・アンプだろうが、暖かみのある太い音で、それでいてクリアで極上だ。

圧巻はやはりソロだろう。ギターとキーボードの掛け合いになっているが、出だしのギターの超速フレーズなどは全ての音を聴き取ることすら困難なほど早い。かなり早いテンポの曲にも関わらず6連符が続くので、1小節で24音もある計算になる。音的にはコードトーンにトップの音だけがメロディとして変化するものだが、とにかく早い。しかも直後には2拍ごとにオクターブ違いとなる。ギターで言えば、この早いテンポの中で一挙に12フレットもの大移動が要求されるという恐ろしいフレーズだ。これがこれでもかというほど出て来る。ライブではこれをYngwieはアクションを決めながら余裕で弾くわけである。

もう一つ圧巻なのはエンディングだ。ギターとキーボードのユニゾンによるフレーズだ。これも先程のソロほどではないにしろ、かなりの早さの上、キーボードと合わせなければならない。実質、不可能に近い。しかし、このフレーズに続いて、最後の3つのコードが「ジャ、ジャ、ジャーン」と決まると、交響曲のエンディングのようで最高にカッコいい。

最後に、このアルバムのみで共演しているボーカルのJoeの存在も忘れてはならない。彼のポップな感じがとてもうまくブレンドしていて、この曲以外も含め素晴らしい仕上がりになっている。

2003年12月17日水曜日

宝くじ

ARB [ Emma ]

連続でARBの登場だ。この曲は昨日の「淋しい街から」と同じく1stに入っている。1stは数日前にゲットしたため、初めて聴く曲も半分はあったのだが、この曲も初めて聴いた曲の一つだ。

初めて聴いた感想は、「お笑い系の曲。でも演奏はカッコいい!」という感じ。実際、歌詞は笑える。これは笑いつつ風刺になっているのだろう。当然、狙って書かれているはずだ。
ロックもギャンブルのようだが、簡単に成功はしない。「ギャンブルに生きている人はどんどんやってみな」という逆説的な批判なのだろうと思う。

この曲は、この1st限りで脱退するキーボードのEnmaによるものだ。当然、ARBの歴史の中でも珍しいタイプの曲調になっている。この曲以外にもう1曲彼の曲があるのだが、やはり他の曲とは少し雰囲気が違う。しかし最も毛色が違うように感じるのは、やはりこの「宝くじ」だろう。もちろん演奏メンバーは同じなので、ARBらしい部分もあるのだが、雰囲気は明らかに他とが異質だ。

最も他との違いを醸し出しているのはボーカルだろう。オクターヴで歌われていて、下は石橋凌だと思うが、上のパートは誰だろう?「賭けてごらんよ~」の叫びも誰だろうか。ARBでコーラスをとるのは田中一郎だし、実際、彼っぽい声に聞こえる。ひょっとしてEnma本人か。

演奏は、2ビートのリズムにマイナー全開の音使いのアヤシイ雰囲気のギターが印象的だ。このギターも左右でオクターヴになっている。ピアノだけになる部分も印象的で、ギターのリフとの対比になっていて曲に惹きつけられる。が、歌詞が笑えるというのが不思議な感覚だ。
サビの部分は突然メジャー・キーになっていて、「おやっ?」と思わせるが、それ以上に歌詞を聴いてしまう。

しかし、こうしてリリースから四半世紀近くたった今になって改めて1stを聴いてみると、かなりバラエティに富んでいるのが分かる。凌の曲はすでにこの後のARBワールドそのままだが、ここに田中一郎の曲が加わり、そして異色のEnmaがいれば結構面白かったかもしれないと今さらながら思った。(個人的にはARBと言えば、凌、一郎、キースで決まりだったから余計に)

2003年12月16日火曜日

淋しい街から

ARB [ 石橋凌 ]

あまり有名でないが、ARBは1980年代の日本のバンドだ。パンクの影響を受けた骨太ロックで、強烈な社会批判の歌詞が多いのも特長だ。
私が中学から高校の頃に結構聴いていたのだが、その頃はすでに全盛期を過ぎていた頃だ。いつ頃を全盛期と呼ぶかは解釈によってかなり違って来そうだが、私は初代ギタリストの田中一郎が在籍していた頃の末期頃ではないかと思っている。次の斉藤光浩もお気に入りのギタリストだった。
売れたという意味では3代目の白浜久の時代がピークかもしれないが、個人的にはダントツで田中一郎時代が一番だ。

さて、この曲は1978年のデビューアルバムに入っている曲で、もう15年くらい聴いていなかった曲なのだが、ずっと頭の中に残っていたものだ。それを最近、ようやくCDをゲットすることが出来て久しぶりに聴けたというわけだ。

ARBは強烈な曲が多いのだが、最もよく聴いていた中学・高校時代から随分経った今、よく思い出すのはなぜかしっとりした曲が多い。不思議なものだ。そしてそのしっとり系の曲がまた素晴らしいものが多い。

曲はレゲエのようなリズムだが、なかなか感動的な美しい曲だ。まず出だしのツインギターが好きだ。シンプルなフレーズだが、上昇フレーズのあたりなど何度も聴きたくなってしまう。

石橋凌が、故郷の久留米の街を思って書かれた曲だそうだ。久留米には行ったことがないので「灰色に痩せた街」なのかどうかは分からないが、それは久留米が悪い街という意味ではなく、若き凌には小さすぎる街だったということだろう。

ちなみにこの曲、ずっと後の1990年代に入ると、ライブで凌一人によるアコースティックの弾き語りで演奏されることも多い。ツインギターのメロディが消えてしまったのは寂しいが、これがまた美しさを強調するかのような素晴らしい出来で、アコースティックギターがとても綺麗だ。

オリジナルではシンプルに「G」「A」「Bm」「Bm」というパターンで、「Em」「A」「DM7」「F#monC#」「Bm」「G」「A」「Bm」という感じ。

アコGバージョンではもっと工夫したコードで弾いていた。

2003年12月13日土曜日

Over The Hills And Far Away

Gary Moore [ G.Moore ]

私の大好きなギタリストの一人だ。1990年代はブルーズに行ってしまったが、本来はハードロックの人だ(本人は「本来はブルーズだ」と言いそうだが)。この曲は、そのハードロック時代末期の曲で、故郷のアイルランドを強く意識して作られた作品『Wild Frontier』に入っている。
この曲もリフなどにアイリッシュなムードが漂っている。アイリッシュなメロディは意外にも日本人好みするもので耳に馴染みやすい。

何と言っても圧巻はギター・ソロだ。アームを使ったトリッキーなフレーズから入ると、すぐに超高速フレーズになる。一聴するとライトハンドでのタッピングのように聴こえるが、Garyはライトハンドはやらない。答えは左手によるタッピング的なハンマリング&プリングの連続なのだが、それにしても本当に超高速だ。これはGaryの得意技の一つなのだが、開放弦を絡めないハンマリング&プリングのの超高速トリルなどは人間技とは思えないスピードだ。私も挑戦したが、とてもではないがあのようなスピードは出せない。左手の薬指や中指を、ああも早く動かすことが出来るものなのだろうか。不思議でしょうがない。
ソロの最後はピックでのトリルで上昇するフレーズだが、凄いのは一番最後の1音、決めのロングトーンのビブラートだ。これが出来るだけで一流のギタリストと言えるかもしれないほど感動を増幅させる。

Garyはボーカルもギターも両方こなすフロントマンだが、私としてはギタリストとして見ている部分が大きい。
この曲にしろ、ライブにしろ、素晴らしい太い音で本当に気合いの入ったソロを弾く。とてもテクニカルで早弾きも多いのに、単なる腕自慢コンテストのようにならないのは、やはり根性の入った迫力のピッキングと劇的なビブラートのせいだろう。

この曲で唯一残念なのは、ドラムがあまりに平坦だということだ。それもそのはず、これは人間ではなくマシーンだ。最近は人間のようなノリを出すプログラムも可能だそうだが、1987年の時点ではまだ無理だったようで、完璧ではあっても、あまりにつまらない。これが曲の感動を随分引き下げていると思う。これはこのアルバムの全ての曲に言えることだ。
しかしそれを嘆いていたり批判したりしていてもしょうがないので、その分、Garyのギターやボーカルを堪能すべきだろう。

転調した後、エンディングでもソロが出て来て、おそらくフリーで弾いているのだろうが、こちらもカッコいい。Garyのギターは「気合い」とか「根性」という表現が似合うのが理解出来ただろうか?

2003年12月8日月曜日

Starting Over

John Lennon [ J.Lennon ]

なんと23回目にもなるJohnの命日だ。まだBeatlesを知って間もない頃は、この季節にラジオ等でBeatles関連の番組が沢山かかり嬉しかったものだ。あの頃は「Johnの3回目の命日です」というような紹介だったのに、いつの間にか、もう23回目だ。月日が経つのは本当に早い。
この日だけはJohnの曲を聴いて、色々思いにふけりたい。様々な彼のメッセージを思い出すだけでなく、自分自身の昔のピュアな心を思い出す日でもある。夢中でラジオを聴きあさっていた時代の気持ちを忘れないでいたい。

さて曲だが、鐘のような音に続くイントロはギターでコードをジャラ~ンと弾き、ボーカルと同時に曲が始まる。イキナリ歌から入るパターンはメロディを印象づけるのに有効だし、そういえばBeatlesの曲にもよくあった。

ざっとコードを拾ってみると、「A」「Aang」「A6」という風に「A」の5度の音が上がったり下がったりするだけだが、このパターン、結構Johnは得意としている。
次のパートはイントロとちょっと似ているが、「A」「Aaug」「Bm」「E」「Bm」「E」「C#m」「F#」「Bm」「E」という感じで続き、特に「F#」がドラマチックだ。
中間部は「G」「Am」「D7」「G」「Em」「Am」「D7」「G」「E」となって元に戻る。
全体としてはBeatlesの香りも漂う、60年代風の曲だと思う。

リズムはシャッフルだ。新しく始まった80年代について「再出発」を歌っているのだが、この直後に暗殺されてしまうため、まるで「天国への再出発」のような気持ちで聴いてしまいがちだが、この軽快なリズムは「くよくよ考えるな」と言っているように思える。「新しい誓いを立てて、元気を出していこうじゃないか」というメッセージかもしれない。

「Why don't we take off alone」からの部分がとても好きだ。ポジティヴな雰囲気が更に強調されて元気が出て来るようだ。 

Johnがこれだけやる気を出していただけに、23年前のこの日がとても残念だ。

2003年12月5日金曜日

Piece Of My Heart

Janis Joplin [ J.Ragovy/B.Berns ]

偶然テレビでこの曲の一部がかかったのを耳にした。久しく聴いていなかったので、とても懐かしくなった。

私にとって、Janis Joplinというとブールズの女王という感じだ。
ブルーズという音楽を味わうポイントは音楽的にも感覚的にもいくつもあるが、Janisを聴いて一番感じるのは、ものすごい説得力だ。論理的に説明して説得するのではない。心を訴えるようにして説得するのだ。

前々から「Janisっていい女だな」と思っていた。私がまだ1歳になったばかりの頃に死んでいるので、当然、会ったこともないし、性格も知らないし、特別美人というわけでもない。それでも「いい女」という言葉がピッタリのように思う。
歌詞の内容については今回は触れないことにするが、久しぶりに聴いてみてどこから「いい女」というイメージに結びついていくのかが分かった。

歌に説得力があるのは、圧倒的なパワーと太い声でたたみかける部分と、笑みを浮かべながら語りかけるように歌う部分のバランスやコントラストが絶妙だからだ。
この曲の場合、「Come on, Come on」の部分が前者で、その直後が後者だ。
前者は女性としての生き方や凄み・重みを感じさせ、後者は優しさや包容力を感じさせる。女性は子供を産むし、子育ても父親より母親の方が子供に近く愛情を注いでいるように感じる。誰もが母親から産まれ、母と子の絆は絶対的なものであり神秘的なものでもある。そういう偉大さを感じさせつつ、女性としての可愛いらしさ、優しさもあわせ持つ。これは顔の形やスタイルのことではない。 この2つを持った女性は、誰でもとても魅力的なのではないだろうか。男が絶対に叶わない圧倒的な母性を感じさせるということだ。
母の大きさと恋人の可愛さがあれば、それは男にとって「いい女」としか言いようがない。

そんなJanisは27歳の若さで孤独に死んでいってしまった。

2003年12月2日火曜日

Cocaine

Eric Clapton [ J.J.Cale ]

おととい、単独公演としては初めてのEric Claptonのライブを見た。過去にないほどの代表曲をセレクトしたセットリストだったが、その中でもハイライトの一つになったのがこの曲だ。

Creamの「Sunshine Of Your Love」を思わせるイントロのリフだ。それにボーカルの入りも同じだ。意識してか分からないが、Cream時代の雰囲気を狙ったのかと思ってしまう。
ただしこの曲、Claptonのオリジナルではない。オリジナルであるJ.J.Caleのバージョンは聴いたことがないのだが、どうやらリフはJ.J.Caleのオリジナルに近いものらしい。だとすれば「Sunshine Of Your Love」との関連を云々するのは無意味になる。たんにもともとこういうリフだったというだけかもしれない。

「Sunshine Of Your Love」と似てはいるものの、ライブでイントロを聴いた瞬間は、「Sunshine Of Your Love」ではなく「Cocaine」だということはすぐに分かった。

ハードな「Sunshine Of Your Love」と比べると、もっとレイドバックした感じになっていて、ゆったりと大きなリズムを持った曲だ。それ事体がこの曲のカッコ良さになっている。このような大きなノリを感じさせるドラムは大好きなのだ。

今回の来日でのセットリストでは「Cocaine」から「Knock On Heaven's Door」となっており、意味深な流れだ。が、私が見た日は「Knock On Heaven's Door」をやらず、一気に「Layla」へ流れ込み、盛り上がりは最高潮となった。

それにしても、日本ではこんなタイトルの曲は絶対に許されないだろうな。まして売れっ子ミュージシャンが、なんて。

2003年11月24日月曜日

Get Back

Beatles [ J.Lennon/P.McCartney ]

オリジナル『Let It Be』では最後の曲だったが、『Let It Be...Naked』の1曲目を飾る。1曲目の意味は、アルバムタイトルと同様、「当時の状態(オリジナル)に帰ろう」ということだろう。作詞作曲はポール。

旧来のものとは、曲の前後の話し声が消える等、細かなこと以外は大きく変わっていないが、音質が格段に上がり、各楽器の分離も非常に良くなった。左右でジョンとジョージのギターがはっきりと分かれているためにそれぞれがどのように弾いているかも細かなところまで分かるようになった。

曲はほとんど「A」と「D」しか出て来ないが、ここまでシンプルな曲なのに聴きどころが盛り沢山なのが凄い。
まずはギターだが、珍しくリード・ギターとリズム・ギターの役割が逆転していて、ジョンがリードだ。もちろんソロもJohnが弾いている。Johnのソロというと、リズム・ギターの延長上にあるようなソロで勢いのあるものが多いのだが、この曲ではソロらしい単音のメロディによるソロになっている。スピードアップするフレーズも何なくこなしている。スピードアップするのは同じフレーズを2度繰り返した後の一番最後の部分で、ちょっと弾きにくいフレーズだ。スピーディな2弦から4弦への弦飛びもあるし、意外にテクニカルだ。

ソロよりも、サビで「Get back」と歌うPaulのボーカルの合間に出て来るフレーズが面白いかもしれない。こちらはリズム・ギターの延長にあるようなフレーズだ。4拍目に早い16分音符が出て来る。
スライドでアップして6弦9Fからの上昇フレーズ。5弦の7F、9F、4弦の7Fと、ここまでの4音は同じでその後がコードに合わせた早いフレーズ(というかコード)。「A」の時は3弦2弦1弦の順に9F、8F、9F(つまり「A7」の音)、「D」の時は7F、7F、8F(つまり「D7」)を押さえ、「チャララララ」と素早く弾く。簡単そうで意外に難しい。

この曲で最高にカッコいいのは、ゲスト参加のBilly Prestonのキーボード・ソロではないだろうか。エレピ(エレクトリック・ピアノ)でのソロだが、「Don't Let Me Down」同様、完全にアドリブのソロのようだ。細かな装飾音符がついたフレーズは、ジョンやポールが弾くようなものとは違う、正に本職のプレイだ。また、クラシック系のジョージ・マーティンのソロとも明らかに毛色が違う。ジックリと組み立てられたようなソロではなく、軽やかで、コードを崩したようなタイプだ。こんな感じでソロが弾けたら良いが、慣れないとなかなか難しい。(というか、私は弾けない)

ほとんど同じリズムのドラムもシンプルながら印象的だ。ずっと同じリズムで、スネアで「タッタカ タッタカ」とやっているだけ。「ジャーンジャーン」と合わせる部分だけシンバルが入る。ベースもポールにしては珍しくほとんどルート弾きの超シンプル。
複雑な構成の曲が増えていた後期にあって、タイトル通り「シンプルだった昔に帰ろう」ということなのだろう。

Beatlesはシンプルで印象的なものがとても多い。誰にでも分かるもので、しかも斬新なものを新たに生み出すのは本当に難しいだろうが、色々な曲のあちこちから次々と出て来て凄い。

このシンプルな構成のこの曲は学ぶことが多い。

2003年11月21日金曜日

Dig A Pony

Beatles [ J.Lennon/P.McCartney ]

話題の『Let It Be...Naked』が発売された。今までのオリジナル『Let It Be』は解散後に外部プロデューサーによって編集&ダビングされて制作されたものであり、本来、Beatlesが作ろうとしたものではないと言われている。実際、アルバム『Let It Be』は、当初は『Get Back』という名で、初期の生々しいロックバンドとしての演奏を重視した形で録音されリリースされる予定であった。ミックスも終わり、ジャケット撮影まで行われていながら、内容がいまいちだったためそのままお蔵入りとなっていたものが解散後に同名の映画のサントラ盤としてリリースされた。しかしオーケストラや女声コーラス等がダビングされており、『Get Back』の主旨に反する仕上がりとなっていたため、30年以上も経過した今になって、「装飾のない裸の姿」という意味で『Naked』のリリースとなったわけだ。
で、実際、聴いてみて、確かに無駄な装飾がそぎ落とされ、生々しいバンド演奏になっている。音は現代のテクノロジーで格段にクリアになっている。素晴らしいの一言だ。 1曲目はオリジナルの『Let It Be』とは違い「Get Back」だ。本来の主旨に帰るという意味とかけてあるのだろう。

しかし、実際のところは、これは現代のテクノロジーが可能にした技を駆使した歴史の捏造ではないかという意見もある。
当初の『Get Back』制作の際に録音されたものはかなり完成度の低い散漫なものであり、故にお蔵入りになった。
今回はこの時の膨大なテープの中からベストプレイだけを抜き出し、つぎはぎして編集されたのだ(曲によるが)。良いところばかり選択しているのだから良い演奏なのは当たり前だ。
これは「生々しいバンド演奏」とは正反対のアプローチということになる。生々しく見せるのに成功しているだけであり、実際は生々しくないのだ。裸に見えるが、実際は化粧だらけというわけだ。
うーん、なかなか難しい問題だ。どう評価すべきだろうか、悩むところだ。

しかし、実際のところは、これは現代のテクノロジーが可能にした技を駆使した歴史の捏造ではないかという意見もある。 当初の『Get Back』制作の際に録音されたものはかなり完成度の低い散漫なものであり、故にお蔵入りになった。 今回はこの時の膨大なテープの中からベストプレイだけを抜き出し、つぎはぎして編集されたのだ(曲によるが)。良いところばかり選択しているのだから良い演奏なのは当たり前だ。 これは「生々しいバンド演奏」とは正反対のアプローチということになる。生々しく見せるのに成功しているだけであり、実際は生々しくないのだ。裸に見えるが、実際は化粧だらけというわけだ。 うーん、なかなか難しい問題だ。どう評価すべきだろうか、悩むところだ。

2003年11月18日火曜日

Baba O'Riley

The Who [ P.Townshend ]

ロック史上初といえるオペラを成功させ、次なる成功を勝ち取った、その名も『Who's Next?』というアルバム。この1曲目を飾るのがこの曲だ。

イキナリThe Whoらしくないとも思われるシンセ・サウンドで始まる。これはディレイをかけているサウンドだろう。ステレオの左右をグルグル回るような不思議なサウンドだ。間もなく2つ目のメロディが絡み不思議さが倍増する。
これに中低音のピアノがバーンと入って来る。これだけで最高にカッコいい。「何が始まるんだろう」とワクワクさせるようなイントロはどんなジャンルの曲でも最高だ。

ボーカルが入ってくればいつものThe Whoだ。意外にも結構高めのメロディだ。ワイルドなイメージが前面に出ているThe Whoだが、この曲をはじめ多くの曲がとてもメロディアスで、Roger Daltreyの声が耳に入りやすい。

ドラムのKeith Moonはいつでも最高だ。大陸的なグルーヴとビッグなサウンドを出せるドラムはそれだけで気分が良い。大きなグルーヴに手先の細かなオカズが入る独特のプレイは彼にしか出来ない。

イントロでピアノが鳴らしていたコードは途中からギターがかぶって来る。これでライブでも最高となるのだ。

3度ブレイクがある。1回目はギターのPeteの歌が入る。あまり上手くない。しかし見せ場でもある。
2回目はギターソロ。ソロというかピアノとギターの短いコンビネーションだ。
3回目はエンディング・ソロ的な部分だが、出だしで全員で合わせてからギターを中心にしたアンサンブルでこれまたカッコいい。決まったフレーズからだんだん自由に弾けるギターは気分が良いだろう。思わず一緒にソロを弾きたくなる。バイオリンのような音色からエンディングの2ビートの部分に雪崩こむ。最高のアレンジだ!

2003年11月17日月曜日

The Chance

Helloween [ R.Grapow ]

Helloweenといえば、疾走感のあるヘヴィメタル・バンドというイメージが強い。この曲もそういう要素を含みつつ、しかしサビはかなりポップだ。このあたりがHelloweenの魅力なのだろう。

曲は、この時点では新加入のRolandによるものだ。何と言ってもサビのハイトーン・ボーカルが気持ち良い。一番高くなる音が非常に良い。かなりの高音だが、ボーカルのMickael Kiskeは楽々と出している。というか、まだまだ余裕がありそうだ。終盤では転調して更に音が上がる。

Kiskeはこの声を維持するために、ジョギングや腹筋を欠かさないそうだが、ここまで来るともはやボーカルも体力とパワー勝負であり、スポーツに近いものがある。たんに鍛えた体でないと音が出せないというだけではなく、ロック音楽には、行くべき時は怒濤の猛攻撃、そして耐えしのび徹底的に抑える部分などが存在するが、これなどもスポーツの試合に通じるものを感じる。

Rolandの曲だから当然、ギターソロも彼だろう。しかしサビのメロディが良いせいか、ギターソロにはあまり魅力を感じない。やはり気持ちの良いハイトーンのボーカルがあってこそだ。

ところが後にKiskeが脱退し、バンドの存続も危うくなったことがあるのだが、その時はPink Cream 69の大黒柱・Andi Derisを新ボーカルに迎えて再スタートするのだが、この直後のライブで演奏されていたAndi版「The Chance」は・・・、高音は一瞬だけ無理に出している感じがアリアリで、非常にツライものになってしまっているのだ。頑張ってはいるのだが・・・。Andiも見栄えのするライブが得意なボーカリストなのだが、こういう曲は単純に歌の実力がないと厳しいのだなと痛感させられてしまった。と同時に、Michael Kiskeの歌の上手さには改めて敬意を表したい。

ところで、作曲者のRolandといえば、Kai Hansenの後釜でHelloweenに加入したが、Kaiは元ボーカルだっただけに歌の面でも非常に貢献度が高かったが、そのKaiを失ったのはバンドにとっても痛手であった。と思ったら、このローランド、Kiskeからのレクチャーもあり、Kai以上に本格的なハイトーン・ヴォーカリストに変貌した。

Andi加入後のライブ・アルバムでもそれが聴ける。Andiとしては、同じバンドに自分以上の太くて高い音の出せるヴォーカリストがいる状況ってどうなんだろう・・・?

2003年11月16日日曜日

I Call Your Name

Beatles [ J.Lennon/P.McCartney ]

あまり有名でない曲なので知らない人も多いかもしれない。初期のJohnの曲で、ロックンロール・タイプの曲だ。カウベルの音が軽快なミドルテンポの曲で、よくありそうなロックかと思いきや、やはり彼らの曲、ヒネリが効いている。

まず聴いてすぐに気がつくのはギターソロの部分のリズム。イキナリここだけシャッフルに変わるのだ。これを違和感なく聴かせるのは結構難しいかもしれない。ベースは完全に4ビートのノリ。ドラムは8だ。少なくとも、ここの部分で曲の雰囲気が大きく変わることはチェックしたいところ。

曲は「7thコード」の連発だ。コード進行的には「E7」「C#7」「F#7」「B7」といった感じ(2小節ずつ)。
非常によく聴かないと分からないが、2回目の繰り返しの部分で「A」「Am」「E7」という部分が一瞬出てくる。「I call your name」と歌う部分だ。コードを鳴らしている方のギターをよーく聴くと分かる。まるで気がつきもしないような部分だが、この進行がある方が圧倒的にカッコいい。

「A7」「C#m」「F#7」「C7」「B7」というところは最高にカッコいい。リードギターとベースのユニゾンになるバッキングが古いロックンロールタイプのものだが、少しだけ違う。例えば「A7」の部分で言うと「C音」「C#音」が出て来て、コードトーンで言えばマイナー3度からメジャーへいく。カントリー系によく出て来るフレーズだが、実に効果的だ。
また、「C7」「B7」と半音下がる進行もとてもカッコいい。シンプルなロックソングかと思いきや、実によく練られていて驚く。おそらくバンドでこの曲をやろうとしても簡単にはいかないだろう。

イントロを含め、リードギターがずっと印象的なフレーズを弾いている。これはGeorgeの12弦ギターの音だろうか。オクターブ違いの音が聴こえる気がする。印象的な音とフレーズで、曲の重要な要素になっていると思う。

2003年11月10日月曜日

チャンス紅陵

拓大紅陵吹奏楽部 [ M.Fukita ]

千葉県高校野球の強豪・拓大紅陵の応援曲。かつて野球王国と呼ばれた千葉県もここ数年は関東大会では苦戦続き。春の選抜甲子園出場がかかる秋の関東大会では低迷が続いていた。そんな中、先日行われた今年の大会では拓大紅陵が快進撃を見せ、堂々の関東第2位に輝いた。関東からは4~5校が甲子園に選ばれるので、千葉県勢5年ぶりの出場は間違いなし。来年は寂しい春にならなくて済む!

さて、この曲は数ある応援曲の中でも私のお気に入りの一曲だ。高校野球の応援曲というと、「ポパイのテーマ」や「狙いうち」「サウスポー」等がお馴染みだが、拓大紅陵の場合は全曲オリジナル曲だ。最近では他校が真似をしているのも耳にする。

オリジナル曲を作ってまで応援するほどだから、当然、吹奏楽部をはじめとする応援にも力が入っている。反対側のスタンド聴いていると、明らかに他の高校とは違うハイレベルの演奏が聴けて、これもまた高校野球応援の楽しみの一つだ。是非ともスタンドで生で聴いてほしい。

応援曲の入ったCDがあるそうだが、私の弾くピアノは球場で聴いて覚えたものだ。正確さは要求しないでほしい。当然、キーが違うだろうし、細かなメロディも違うだろう。

まず出だしが良い。コードトーンを順番に上がっていくだけのシンプルこの上ないフレーズだが、野球の応援に複雑なものは必要ない。気分が盛り上がればそれで良い。球場で聴くと、同じ繰り返しだけの重低音が最高にカッコいい。メロディが上昇し、それに合わせて気分も高揚するのに、バスだけは変化しない。クールだ。
メインの部分も何てことはないフレーズだが、野球にピッタリだ。

今度高校野球を球場やテレビで見る機会があったら、プレーそのものだけではなく、是非とも吹奏楽部の活躍にも注目してほしい。

2003年11月7日金曜日

Hannibal

Miles Davis [ M.Miller ]

ジャズの帝王・Miles Davis初登場だ。ジャズはそれほど詳しくないが、Milesのトランペットが最高なのは分かる。たんなる楽器とは思えないほど様々な表情があり、とても雰囲気がある。トランペットとジャズというと、どうしても夜のイメージ、酒場のイメージになるが、私にとっては、Mailesの演奏は朝のイメージにも夕暮れのイメージにも解釈出来るものが結構ある。
Miles最後の来日の時に伊豆で観たが、あの時は夕暮れ時だったから、その印象も強い。もの凄い存在感だったなぁ。

私にとってジャズという音楽は、とても音楽的にテクニカルで難しい音楽だ。クラシックと比べてもずっと複雑な和音の響きがあるし、音の使い方も独特だ。
しかしMilesの奏でるメロディはとてもメロディアスだ。テクニカルでないという意味ではない。とてもテクニカルであり、かつメロディアスなのだ。

この曲は晩年の1989年のアルバム『Amandla』(彼の最後の作品)に入っている曲だ。それほど有名な曲ではないだろうと思う。しかしカッコいい曲だ。

まずベース、ギター、ドラムで始まるのが良い。イントロだけならジャズかフュージョンかロックか分からない。リズムが気持ち良い。ベースのシンコペーションが最高。そこへあのトランペットが入って来る。ハネたシンセに対し、ゆったり伸びやかなトランペット。次第にメロディがからまっていく。

長いソロの後、終盤でのトランペットとサックスの掛け合いは凄い。全く違う音色、雰囲気。サックスが聴こえる時は「サックスっていいな」と思い、トランペットが聴こえる時は「トランペット最高」と思う。両者のフレーズの隅々まで聞き耳をたてたい。フェイド・アウトする最後までエモーショナルだ。

2003年11月3日月曜日

Paranoid

Black Sabbath [ T.Butler/F.Iommi/J.Osbourne ]

Black Sabbath最大の有名曲。かなりシンプルな構成の曲で、勢いのノリの良さが軽快で良い。重さで勝負のBlack Sabbathが「軽快なノリ」とは変な感じもするが、それはリズムが軽快ということで、ギターやベースの音などはヘヴィだ。そのヘヴィ・サウンドと軽快なリズムのミスマッチ(?)が魅力なのだ。

曲の構成は非常にシンプルだ。コード進行で言えば「Em」「D」、時折「C」も混ざる。たったのこれだけだ。いわゆる「パワーコード」の元祖のような曲で、最初の「Em」も本当は3度の音がないのでメジャーかマイナーかは判別出来ない。ボーカルのメロディから「Em」と判別している。そのくらいシンプルだ。
このことからも、曲の魅力がリズムとサウンドであることが分かるというものだ。

もう一つの魅力はギターのリフだ。Black Sabbathの曲はどの曲も印象的なリフがあるが、この曲も定番中の定番になっているものだ。フレーズとしてはとてもシンプルだが、雰囲気を出すのは意外に難しい。音が歪むほどのヘヴィなピッキング加減もあるし、シンプルな音とはいえ、その使い方も考えなければならない。

私が弾く場合、個人的には次のようにしている。まず最初の1音目が重要だ。ここでカマさないと迫力がなくなってしまう。
音的には5弦7フレット、4弦9フレットの2音だけでもOKだが、これに6弦開放と3弦9フレットも追加し厚みを出す。両方とも重要だ。これで「E音」は3オクターブに渡って出ていることになる。特に一番下の6弦を強調するとヘヴィ度が増す。このリフ以外にも曲の要所要所で6弦開放を折込む。連発すると音がグチャグチャになってメリハリがなくなるだけなので、あくまで要所要所だ。
更に、1音目の直前に装飾音符風に4弦と3弦は1音下から始め、素早く「Em」コードにする。
続くオカズ的な4音のフレーズは機械的にというか、キッチリ同じテンポで弾く。

この曲のシンプルなリフについて解説したが、このようにどんなにシンプルでも細かな工夫を忘れてはいけない。ことわっておくが、これらは「オリジナルがそう弾いている」と言いたいのではなく、「そう弾くとヘヴィでカッコいいのでは?」という意味なので悪しからず。

2003年10月31日金曜日

Love Me Do

Beatles [ J.Lennon/P.McCartney ]

何とこのコーナー始まって最初のBeatlesである。各メンバーのソロ曲はすでに登場しているが、Beatlesとしてはこれが第1回目だ。私の場合は「一番好きなバンド」「二番目に好きなバンド」とあっても、Beatlesだけは常に別格で、1位、2位ではなく、ボクシングのランキングのように1位の上にチャンピオンがいるという感じだ。
当初はBeatlesだらけになるのではないかと危惧したほどだったが、逆にBeatlesは日常的すぎて、あえて「今日の一曲」というほどになることは滅多にない。

記念すべき第1回目のBeatlesはデビュー曲のこの曲だ。別にこの曲は最初にしようと狙っていたのではないが、とにかくこの曲だ。

この曲は、実はリリース当時の1962年,63年から2バージョン存在していた。デビュー時、Beatlesはドラムが不安定と言われ、プロのセッション・ドラマーのAndy Whiteがこの曲をレコーディングした。結局はRingo Starrのものが使われ、Andyバージョンはアルバムに入ったというわけだ。ちなみに『Anthology』では前任ドラマーのPete Bestのバージョンも聴くことが出来る。

Andyのドラムは軽快で歯切れが良く、さすがプロという感じ。Ringoの方がヘヴィで力強い。

この2バージョンだが、ドラムだけでなくすべてが別録音のため、細かなところが微妙に違う。ボーカルは、出だしのハーモニーの音量が違っていて、アルバムバージョン(Andyの方)よりシングルバージョン(Ringoの方)がJohnの声が大きい。Paulの方が主旋律っぽく、Johnの方が難しく聴こえる。

イントロは有名なハーモニカのフレーズだ。単純で分かりやすいフレーズで、明るいポップな感じだ。しかし、実はこの曲、彼らが下積み時代に3度目のハンブルグ行きの際、メンバーの一人で画家を目指すためにドイツに残っていたStuart Sutcliffeの死を知った頃に作られた曲なのだ。特に一番の親友であったJohnの悲しみは大きく、この曲のハーモニカの微妙なヴィブラートの揺れに悲しみを感じることが出来れば、相当の感性の持ち主だ。吹いているのはもちろんJohnだ。

2003年10月27日月曜日

サザンクロスの聖夜

島田奈美 [ 船山基紀/吉元由美 ]

昨日、超久しぶりに聴いたことで、すっかり島田奈美づいてしまった。「そうそう、この曲、好きだったんだ~」という感じだ。
第2弾は同じ2ndの3曲目のこの曲だ。アップテンポの曲の代表例のような曲で、元気が良くてノリがいい。

リズムはジャングル・ビートではないのだが、それっぽい雰囲気がある。とにかく「明るくノリ良く元気良く」という感じだ。ビッグなドラムサウンドがあれば、それだけで決まりだろう。

例によってキーが分からないが、多分プラスマイナス半音程度の誤差だろう。
イントロはまずベースから入る。「D音」をメインにしているが、ハネ気味のリズムやフレーズで早くもノリを全面に出している。
続いて登場するゴージャスな音のキーボード。ブラス系の音だろうが、歯切れが良く気持ちいい。コードを主体にサビと同じメロディを弾いている。
コード進行は「G」 「Gm」 「F#m7」 「Bm7」といった感じ。前に何かの曲でメジャー→マイナーの進行に弱いと言った覚えがあるが、イキナリここで出て来ている。パッと聴くと気づかないが、この進行が実にカッコいい。

コード進行的には「D」 「F#m」 「Am7」 「B7」 「Em・A7」 「F#m7・Bm7」 「Em7」 「A7」という感じだ。個人的には「Em」でなく「G」を使いたいところだ。
この進行の中では、3番目の「Am7」が抜群にカッコいい。これを強調するためか、2度目の繰り返しではグロッケンのような音で「F#m」のコードトーンを下って来るのだが、「ド#ラファ#ド#ド」というように、最後が半音階になるようにしてある。これで「Am7」が強調される。「Am7」がカッコいいというのは、この「ド」の音の使い方につきるからだ。

同様のカッコ良さはサビの最後にも出て来る。「Bm」を連発し「B音」を連発しておきながら、最後の最後で「Gm」で登場し「B♭音」が出て来る。そして「C」で締めるから次が最初に戻って「Dm」になっても繰り返しで「D」になっても大丈夫になる。調に対する辻褄合わせかもしれないが、それがカッコ良い聴きどころとするところが凄い。

サビの歌詞の出だしが「台風台風」と書いて「ウィリーウィリー」とルビがふってある。これは何語だろう?サザンクロスが見える場所だからオーストラリアや南太平洋の言葉なのだろうかと思っていたら、アボリジニの言葉らしい。

2003年10月24日金曜日

雪の招待状

島田奈美 [ いけたけし/芹沢類 ]

島田奈美は80年代後半のアイドルだが、大物にならずに芸能界から身を引いた。詳しくは知らない。

なぜ島田奈美を知っているのかというと、私が高校時代、同級生のある女の子からレコードをプレゼントされたからなのだ。しかし、その彼女とはつき合ったわけでもなく、プレゼントにどういう意味があったのかもよく分からないままになっている。
しかしもらった以上、聴かない訳にもいかず、あまりアイドルに興味がなかった私としては島田奈美は珍しい存在となっている。
で、その彼女と島田奈美は、容姿的にどこかオーバーラップする部分があって、清楚でかわいらしい雰囲気も良い印象になって、今思えばなぜ声をかけなかったのだろうと後悔する(笑)。私のタヌキ顔好きはひょっとするとここから来ているのかもしれない。

アップテンポの曲が多いことからも気に入って、一時期は積極的に聴いたものだ。当然、何曲かは気に入ったものもあり、今回、それを紹介することにした。
当時以来、15年ぶりくらいに引っぱり出して聴いたのだが、記憶が蘇りとても懐かしく、また予想以上に覚えていて驚いた。聴く前にピアノでこんな曲があったなと弾いてみたのだが、結構近い線で弾けた。その曲が今回の「雪の招待状」だ。2ndアルバムの1曲目だ。

まずオープニングだが、ディズニーっぽい壮大なパートと同じ繰り返しのピアノのフレーズが、寒い冬の中の暖かな心を連想させて、ムードがあって良い。
ドラムが入るとすぐに最初のヴァースだ。ほとんど4分打ちのピアノだけというシンプルなパート。Beatles好きの人間にはキーボードの4分打ちはどうしても心惹かれるものがある。コードは「Dm」 「C」 「B♭」 「A7」で、3度の音にあたる部分が上下に変化するパターン。Bon Joviの『Runnaway』を思い出した。

サビになると突然メジャーに変わる。マイナーの部分は神秘的な冬のイメージ。「静かすぎる夜、誰か窓の外で私の名前を呼んでいる気がしたの」という歌詞が良い。「気がした」ということで、実際にどうであったかではなく、心理状態を表現しているわけだ。断言する歌詞よりも、結局どうなのか分からない、どちらにでも解釈出来るというような幅のある歌詞が好きだ。
そしてサビは心を開放している部分。コードトーンを多く使った音程差のあるメロディが良い。

サビの一番最後の部分、「寂しさも溶けてゆくの」の部分のメロディがカッコいい。最高の決めのメロディだ。

2003年10月19日日曜日

Is't She Lovely

Stevie Wonder [ S.Wonder ]

実はこの曲には思い出がある。あまり詳しくは話さないが、10年以上も前の話しだが、都内のとあるスタジオ(新宿区内で寺の隣りにあった)で、私が初めてギターで弾かされた曲なのだ。インストとして録音して、イベントか何かで使うためのものだった。少しだけくずしてメロディを弾くだけの簡単な仕事だったが、とても緊張してガチガチだった。
その時点で、恥ずかしながらこの曲のオリジナルを知らず、Stevieの曲だとも知らなかった。リズムが良くて、ベースと合わせるところが印象的だなというくらいしか記憶に残らなかった。
しかし、その後に何度も頭の中に出て来てとても気になる曲になった。誰の曲かが判明するのはそれから数年後だった。邦題が『可愛いイーシャ(アイシャ)』となっているのも曲が発見出来なかった理由だ。

それにしてもStevieの曲はどれもリズムが最高だ。Beatles等の白人のバンドにはなかなかないものだ。表面的には8ビートでも、ノリは16になっていたりするものも多い。

それでいてとてもメロディアスで適度にポップだ。ボーカルはハイトーンなのに太い声で、歌い回しも上手い。さすが黒人の王という感じだ。

この曲もリズムが最高で、ドラムとベースだけあれば満足出来てしまう。

ハーモニカ(ブルースハープ)のソロも最高だ。伸びやかな部分、感情豊かなフレーズ、エンディングもずっと聴いていたい気分になる。

ハーモニカは私が挑戦したいくつかの楽器のうち、最も下手クソな楽器だ。小学校の音楽にも出て来た身近な楽器の割に「こう演奏したい」と思うものにまるで届かない。この曲のようなフレーズがさらっと出来たら最高だろうなと思う。思うように音をシャープさせるベンディングやヴィブラートが難しい。キレイにベンドが決まっているものがとてもカッコ良く聴こえる。

2003年10月15日水曜日

You

George Harrison [ G.Harrison ]

一昨年に亡くなったGeorge Harrisonのソロ作。ロックというよりもかなりポップな曲だが、実はこの曲は『Be My Baby』のRonettesの中心人物だったヴェロニカ(ロニー)のためにジョージが書いた曲なのだ。どうりでGeorgeっぽくないはずだ。
GeorgeとRonettes、いやロニーがどういう関係なのかと考えると、通の人ならすぐに分かる。Phil Spectorつながりというのが答えだ。ロニーはスペクターと結婚しており、スペクターとJohn LennonやGeorgeは70年代前半は仲が良かった。
この曲も「Wall of Sound」っぽい。

で、この曲だが、レコーディングも完了し、あとはロニーの歌入れだけというところまでいっていたのだが、なぜかここでボツに。仕方がないからジョージのソロ曲として使おうということになったのだが、ロニーのためのキーで録音されてしまっており、ジョージが歌うには高すぎる。そこでテープ回転を落として音を低くして録音し、それを通常のスピードに戻したものをリリースした。というわけで、ジョージの声が少々甲高い感じになっているのだ。

リリースは1975年のアルバム『Extra Texture(ジョージ・ハリスン帝国)』で、第1弾シングルとなっているが、演奏はすでに1971年に録音を終えている。 何と邦題は『二人はアイ・ラブ・ユー』だ。

歌詞は恥ずかしくなるような単純明解なラブ・ソングで、このあたりも70年代ポップスといった雰囲気だ。

曲はブラスセクションが入っていたりして、ロックバンドタイプの編成ではないのだが、これがジョンやポールではなくジョージだと思うと妙にハマる気もする。
その上、アルバムは落ち着いた雰囲気というか、派手な曲が少ないため、このアップテンポがとても際立つようになっている。

リズムは2ビート。ノリを良くする効果は絶大で、一気に軽快で楽しい曲となる。

2003年10月14日火曜日

Papa's Got A Brand New Bag

James Brown [ J.Brown ]

ソウル系の音楽は全然詳しくないのでよく分からない。この曲はソウルにも位置づけられているし、ファンクとされる場合も多い。ソウルとファンクというと随分違うジャンルのようにも思うが、本当はそうでもなかった。ソウルとは「宗教くさくないゴスペル」という感じだ。ゴスペルはリズム好きのアフリカ系の人たちが自由に賛美歌を歌ったのが始まり。教会で賛美歌を歌うというと、ヨーロッパ系の荘厳な感じをイメージするが、ゴスペルは、ほとんど教会でロック・コンサートをやっているかのようにエネルギッシュだ。ボーカルも最高だ。
そのゴスペルをロック・バンド形式で演奏したのファンクの始まりだろう。初期のものは歌詞などほとんど賛美歌だった。当然、黒人の色が強いためリズムがカッコいい。
この曲がソウルとファンクの両方に位置づけられるのも分かるというものだ。

さて、James Brownだが、60年代の生んだ天才の一人に数えられている。BeatlesやJimi HendrixやMiles Davisだけではないのだ。

何がそんなに凄いのか。それはその存在そのものだ。「天才」などと呼ばれる人は皆そんな感じだ。
パワフルなボーカルとともに個性的なダンスがユニークだ。「ズボンの中にアリが入ってしまった」等とジョークを言うようなものだが、Michael Jacksonのダンスを見ていると彼の影響力が分かる。

ダンスに目がいくのは、完璧なバックバンドがあってのものだ。演奏ミスをしたメンバーからは罰金を給料から引いたというし、賃上げを要求するメンバーはクビにするという厳しさ。

何度も警察に逮捕されている問題児だが、ファンクのリズムを提示したのは彼だといっても良いほど功績は大きい。

2003年10月12日日曜日

Lust For Life

Gamma Ray [ K.Hansen ]

Helloweenを脱退したKai Hansenが1990年に新たに結成したバンド・Gamma Rayの1stの1曲目。厳密には短いオープニングナンバーの「Welcome」があるが、実質的にはこの曲が1曲目だ。
Helloweenからのメロディックなスピード・メタルだが、よりドラマチックになっていて、オペラ的ですらある。

エネルギッシュでスピーディなギターに続いて登場するボーカルはRalf Scheepers。肺活量が凄そうな彼の抜群の歌唱力がこの曲をよりドラマチックにしている。パワーとスピードで押せ押せの曲だが、それを楽々とこなしているところが凄い。サビの部分をはじめ、ハイトーンが随所に出て来るが、まだまだ余力がありそうだ。

ギターはスピード・メタル系に多くある、ルート音をミュート気味にして16分を刻むものや全音符で伸ばすバッキングの使い分け、それに同じミュート奏法のバッキングにしても高い音と重低音の使い分け等、シンプルなバッキングでも楽しめる。

ギター・ソロ。これがカッコいい。一度クールダウンさせ、最初からはカッ飛ばさない。ツインギターによるシンプルなハーモニーで徐々に盛り上げていく。
そしてドラムの合図とともに本編に入る。前半はツインハーモニーを主体にしており、メロディックでクラシックの組曲のようなパートが楽しい。
後半は1人ずつ交代でソロをとっているが、それまでの雰囲気を引き継いでいる。そして最後はやはりツインでオーケストラのような雰囲気の決めのフレーズで結ぶ。
長いソロ・パートだが、ギターが好きな人には飽きずに楽しいパートだ。
そしてこの直後、再びハイトーンで声量のあるボーカルが登場。まったく素晴らしい。
ボーカルはエンディングではかなりのロングトーンを出しているので、これも忘れずに聴こう。

メロディックなスピード・メタルの曲としては最高峰の曲だと思う。ポップスでも通用する分かりやすいメロディに最高のスピード感。クラシックのような各パート。元気が出ることこの上なし。

2003年10月11日土曜日

Cotton Time

レベッカ [ 土橋安騎夫/NOKKO ]

レベッカ第3弾だ。夏の夕暮れのような雰囲気のムードのある曲。たんたんとしているところに美しさがある。「Cotton Time」とは、歌詞にもあるように「優しい時間」ということだろう。大好きな曲なので久しぶりにCDに合わせてギターを弾いてみたが、私のようなヘヴィ・サウンドではまるで雰囲気が出ない。軽やかで哀愁を漂わせながら弾かなければいけない。私には無理だ。

そのギターだが、かなりアレンジされていて、自由度は低いものの完成度は最高だ。とても面白い。
イントロは低い開放弦の「E音」を基に5弦を下っていくシンプルなものだが、その後の「Esus4」のジャーンとやるところが気持ち良い。

ボーカルが出て来てからはレゲエのように裏拍を強調したコード弾きだが、これは恐らくキーボードだろう。自己主張をせずにたんたんと弾いている。コードは「E」と「Bm7」だが、次の展開のところがなかなか。「A」 「A7」 「F#m」 「B」という感じ。

最高なのはこの次のサビのところだ。5弦で開放+メロデイになっていて、これはイントロと似たアプローチだ。しかしイントロは4音を下降するだけの繰り返しだったのに対し、こちらはメロディになっている。半音チョーキングが出て来たり、4弦で小さなプリングが出て来たり、とにかくムードがある。正確なリズムでたんたんと弾きつつ、チョーキングやプリングのところは粘っこく弾くと雰囲気が出る。ヘヴィ派の人ならピッキングハーモニクスを絡ませたくなるところ。

ソロはかなりシンプルだがその直前のギター、ベース、キーボードの合わせるプレイがプログレチック。バチッと決めないとカッコ悪くなってしまう。キーボードはピアノの音だ。

曲全体がかなり計算されて厳密なアレンジが施こされているが、それを感じさせないようにサラッと聴かせるところがさすがだ。

2003年10月10日金曜日

Hot Spice

レベッカ [ 土橋安騎夫/宮原芽映 ]

前回の「光と影の誘惑」以来、すっかりレベッカづいてしまった。あれから「光と影の誘惑」を中心に『REBECCA IV』を久しぶりに聴き直してみたのだが、いい曲は多いしとても新鮮に感じる。

で、今回取り上げるのはオープニングナンバーの『Hot Spice』という曲。実はこのアルバムを買った高校生の頃はこの曲だけは唯一好きになれない曲だった。
ところが今回、10年以上ぶりに聴いてみたところ・・・、これがハマる!カッコいい曲だ!

イントロ。まさにHot Spiceという感じの切れ味鋭いギターが最高。思わずJames Brownを思い出す。入れ替わりに登場するビッグなサウンド&グルーヴのドラムも最高。
レベッカの曲はどれもそうだが、ドラムがビッグなサウンドだ。比較的シンプルなパターンが多いが、それを単調にならずに最高のグルーヴを叩き出すのだから最高だ。

イントロのギターのコードは「Am11」だろうか。ちょっと違うかもしれない。表記的には「11th」の音があるのだから当然基本は「Am7」なのだろうが、「7th」の音は聴こえない(もちろんキーボード等、他の楽器には出て来る)。ストラト系のギターの乾いた音が最高だ。

ドラムと同時に出て来るキーボードはMIDIだろうか?かなり機械的な感じだが、それが生々しいギターやドラムと対照的でカッコいい。

ボーカルが登場するところからのコードもざっととってみた。「F」 「Dm」 「Em」 「Am」と来て、繰り返しの最後は「Am」でなく「A」。3回目の最後は「E7#9」、いわゆる「ジミヘン・コード」だ。こういうリズミックな曲にはつい使いたくなる。

さて、ソロだが、ギターソロだとばかり思っていたが、よく聴くとキーボードのようだ。 5度音程を下につけ(つまり4度のハモり)たハーモナイザーによるもので、YESの『Owner Of A Lonely Heart』を思い出した。ギターリフとドラムが主体になっていることや、曲の途中にオケヒットが出て来るあたりもこの曲がヒントになっているなと思うところだが、キーボードソロとは・・・。ところどころハモりの音程差が変化したりしているので、ハーモナイザーではないようだ。おそらくサンプリングだろう。

2003年10月8日水曜日

You Shook Me All Night Long

AC/DC [ A.Young/M.Young/B.Johnson ]

2001年のAC/DCの来日公演での1曲目。この曲が好きなので「演ってくれるといいな~」と思っていたら、イキナリ。イントロを聴いただけで全身鳥肌。そして短いイントロから続いて、一つの塊のような演奏が始まる。会場が波打っている。早くもぶっとばされそうな勢いだ。あれから何年もたった今でも、この曲のイントロを聴くだけで血が騒ぐ。

この曲のようなイントロは「何が始まるんだろう」「来るぞ来るぞ」と思わせワクワクする。曲がイントロとは全然違うもので、だからといって無意味なものではない。

イントロに続いて、バンド全員が入っての本編。休符の多いシンプルな曲だが、ここで最高なのはドラムだ。これまたシンプルこの上ない単純な8ビートを刻んでいるにすぎないのだが、とにかく最高。ハイハットが良いのだろうか。

サビに入る。ギターはアクセントの部分以外は何とアルペジオになる。これがポップ感を高め、キャッチーなサビとなる。パワーコードだけのパートの後に分かりやすいアルペジオが来るだけで随分コントラストがハッキリするものだ。このギャップがこの曲の醍醐味の一つだと思う。私はこのアルペジオもその前のパワーコードの部分も最高に好きで、聴けば必ず弾きたくなってしまう。

ギターソロは、そのバックのリズムギターが素晴らしい。基本的にはここまでのパターンなのだが、リズムが全然違う。リズムの裏をとっており、また別のパートになった感じで変化があり楽しい。ソロを弾くより、ベースやドラムと顔を見合わせて弾いている方が楽しいかもしれない。やはりこの曲はパワフルに楽しくやらなければ台無しだ。
8ビートのリズムに合わせ、Chuck Berryバリのダック・ウォークするAngusが目に浮かぶようだ。

2003年10月6日月曜日

光と影の誘惑

レベッカ [ 高橋教之 ]

出世作『REBECCA IV』というアルバムのA面最後に入っているインストの曲。レベッカと言えばNOKKOのボーカルだろうが、珍しくインストなのである。これが素晴らしい佳曲なのだ。バンドとしてのレベッカが見えるようで嬉しい。

まずピアノから入る。なかなかおいしいフレーズで、これだけでもコピーしたくなる。高音からキラキラと一気に下っていく。別に難しくもないので、少しでもピアノに興味のある人はコピーしてみると良いかも。ヒントとしてコードは「G」と「Cm」、1音目だけ和音で高い「D音」とその上の「A音」。

ピアノの後からが本編。ベースのハーモニクスでつないだ後、バンドの演奏に入る。リバーヴのたっぷりかかったリムショットを使ったドラムとヒューマンヴォイス系のシンセの音でムードを高めておいて、メロディを弾くのは何とベース。フレットレスベースのようだ。次にどういう展開になるのだろうとワクワクして待つことになる。

続いて登場はギター。ゆったりとしたメロディ。ビブラート等で自分の色を出しやすいパート。比較的あっさりと弾いているが、音が消える寸前までジックリと聴きたい。
コード的には「Bm」 「B♭6」 「Am7」という感じだろうか。

更に今度はキーボードの出番だ。このパートだけは8ビートとなる。コードは「C」 「Em7」 「G」 「D」という感じか。
こうやって順番に各楽器が登場するが、どれもソロではなく、曲に必要なパートばかりで曲を生かしたジックリとした演奏が求められる。しかもどの楽器のパートも、その楽器ならではの使用方法で、とても効果的だ。

タイトルに「光」「影」「誘惑」という言葉があるが、どれが「光」でどれが「影」なのか、そしてどれが「誘惑」なのか想像に浸りながら聴きたい。ピアノの音は「光」に違いない。ベースは「影」だろう・・・。別にパズルの問題ではないので、明確な答えを出す必要はない。「光」「影」「誘惑」という3つのキーワードを堪能しながら聴くだけだ。そうすると、このタイトルがピッタリであることが分かってくるはず。

終盤に入り、時折聴こえるベースのハーモニクスが効果的で、イントロと似たピアノのフレーズをはじめ、これまでに登場した各楽器がそれぞれの味を出しながら共演している。本当に素晴らしい。このようなムードのある曲は大好きだ。

2003年10月4日土曜日

Lady Jane

Rolling Stones [ M.Jagger/K.Richards ]

車の中のラジオでかかり久しぶりに聴いて感動した。アコースティックギターの弾き語り的な曲でギターは2本か・・・。効率の良い素晴らしいアレンジだ。
家に帰って、最初はピアノで弾き、やっぱりギターということで、結局ギターも持ち出してみた。あらためて美しい曲だぁ。こんなにシンプルなのに。

何が美しいかって、サビ(なのかな?2パートしかない曲だから・・・)の部分の最初のギターの音!コードは「E7」なのだが、ギターは低い「G#音」を鳴らしている。「Am」を挟んだ後の「D7」の時も「F#音」を出している。これも良いが、とにかく最初の「G#音」でもうメロメロだ。
また、「Am」の時の12弦ギターも効果的で良い。

その他、イントロもなかなか。まず最初のギターの出だしは1弦と4弦が開放弦なのだろうと思う。ギターは同じ音程でも開放弦と押さえた場合の音とではだいぶ響きが違う。開放弦が最も弦を大きく振動させることが出来るので美しい音なのかもしれない。
で、このイントロの出だしは「Dadd9」的な響きで、この「add9」に当たる「E音」が開放弦になるわけだ。4弦の方は低いルート音になる。
このフレーズに絡んで、12弦ギターのメロディが入るのだが、恐らく1弦をDにチューニングして1弦開放&2弦のメロディで弾いているのだと思う。つまり2本の弦でハーモニーになっているのだが、一つの音はずっと下の「D音」なわけだ。一部上下が逆転するところが面白い。

Mick Jaggerは決して上手いボーカリストではないけれど、最高に雰囲気のある歌を歌う。

2003年10月3日金曜日

Reality

Richard Thuderson [ J.Jordan/V.Cosma ]

邦題『愛のファンタジー』。1980年に大ヒットしたフランス映画『ラ・ブーム』のタイトル・トラック。ソフィ・マルソーのデビュー作だったように思うが、ソフィーの可愛さが印象に残るラブ・コメディだった。
映画だけでなくこの曲も世界的にヒットしたので知っている人も多いと思う。とにかく甘い甘い歌詞とメロディの必殺のラブ・ソングだ。
ボーカルも甘い声でムードを高めながら歌っている。私には逆立ちしても出来ない雰囲気だ。男っぽさはなく、軟弱なイメージすらあるが、女性はこんな雰囲気に弱いのかもしれない。

最初にギター・ソロについてだが、Steve Lukatherを平淡にしたような雰囲気で、基本的にはメロディをなぞるだけだが、終盤の盛り上がりなどはさすがだ。きれいにまとまっていて、この曲をプレイする場合、ほとんど同じラインを弾くかまったく別のソロにするかになるだろう。ほどほどに崩すというのはやりにくい。

では曲を細かく見ていく。例によってキーは分からないから仮に「A」として考えてみる。
まず、シンプルなイントロだが、「A」「E」までは良いとして、次の「G」「F#」というところが早くもせつなさを表現している。特に「F#」時の1音目の「B♭音」が最高だ。次の「E」の直前のコードは何だろう。「A#dim」のような音だ。

最初のヴァース。「A」「AM7」「Em」「F#」「Bm」「Dm」「A/F#m」「E」といった進行。「Bm」から「Dm」へ進む部分の転調がまた美しい。いや、1小節だけなので転調とは言わないが、「Dm」時の「F音」が美しいのだ。「Saw you standing there, I didn't know I cared」の部分の「didn't」の音だ。

そしてサビだ。コード進行は「A」 「C#」 「F#m」 「B」「Bm/E」「C#m/F#m」「D」「E」。2回目は最後が「D/E」「A」と変わる。
この中では「C#」のところが甘い感じ。「C#m」ではないところがラブ・ソング。美しいのはその後だ。歌詞的には「Illusion are~」の部分で、ここからは半小節ごとにコードが変わる。最初の小節が「Bm/E」だが、この「E」が美しい。「E9」にした方が「DonE」っぽくてもっと美しいかも。つまり「DM7/E9」のような響き。続く2小節目の「C#m」 「F#m7」は更に盛り上がる。この2小節だけで曲の良さは充分に堪能できるというものだ。

更には、サビのところで、和音を補強するようにアルペジオ(というにはかなり音数が少ないが)のような音使いで盛り上げる。これがかなり効果的。例えば最初の「A」のところは、コードトーンである「E音」「A音」「C#音」と来て、次のコードトーンである「F音」を伸ばす。「C#」が「C#m」でない音がこの「F音」だ。これを強調することで甘いムードが高まるというアレンジだ。

2003年10月2日木曜日

青い珊瑚礁

松田聖子 [ 小田裕一郎/三浦徳子 ]

この曲が流行っていた頃、私は小学生だった。大人気だった松田聖子だったが、私はそれほど興味はなかったが、テレビ等での露出が多いため嫌でも耳にしている上、小学校の運動会のダンスの曲に使われたので良く覚えている。ちなみに前年は『花笠音頭』だったため、この曲がとてもよく感じられた。(何度も練習させられたということは、何度も聴いたということ)

まさに青い空に白い雲、広々ときらめく海が似合う、夏にピッタリで開放的な気分になれそうな曲だ。伸びやかで晴れやかなボーカルも良い。

しかしそれ以上に曲が好きだ。特に好きなのはサビではなくヴァースの方だ。「あなたと逢うたびに~」という部分だ。

コード進行で言うと、キーが「A」として、「A」 「C#m7」 「Bm7」 「G」 「Bm」 「E7」という出だし。そしてほとんど繰り返しの「A」 「C#m7」 「Bm7」と進み、「E」で締める。
この直後が素晴らしいのだ。ジャーンと一瞬の「E♭」を挟んで、「D」「EonD」 「C#m7」 「F#m7」 「Bm7」 「Dm7」 「E7」といく。しかもリズムが半分になり、嫌でも注目するようになっている。

このうちの「EonD」と「Dm7」が最高だ。前者はベース音がそのままなのが最高だし、後者はこの小節だけ転調したかのように「F#音」ではなく「F音」に落ちる。このように私はメジャー→マイナーを思わせる(BmをDとすれば)進行に弱いのだ。

2003年10月1日水曜日

Layla

Derek & The Dominos [ E.Clapton/J.Gordon ]

昨年がラスト・ツアーだったはずのEric Clapton。なぜか来月来日する。これが最後のチャンスかと出かけることにしたので、最近よく聴いている。
この曲はClaptonの代表曲中の代表曲で、1970年リリース。邦題『いとしのレイラ』で、あまりにも有名。

有名な曲はたいていは分かりやすいパターンが多いのだが、この曲はちょっと変な進行だ。
印象的なイントロのギターのフレーズに続いて出て来る最初の歌い出しの瞬間の音。「あれっ?」と思う人も多いと思う。キーが「Dm」から突如「C#m」に半音下がるのだ。転調するにしても変な転調だ。しかもこの直後にコードが「F#」「C#m」と進んだ後、「C→D→E」と進む。ここで再び「あれっ?」となる。多分、コードだけを鳴らしていると何の曲か分からない上に間違っていると感じるかもしれない。基点を「A音」に置いて考えるとされほど不思議ではないのだが、コード進行的には変わっている。

変わっていると言えば、曲の前半と後半とで全く別の曲になっているのも面白い。後半は延々と続くピアノがメインでボーカルはナシ。結構印象的な部分で、特にコード「F」の部分でメロディが「G音」になる瞬間が好きだ。
背後ではDuane Allmanの繊細なスライドギターが抜群の雰囲気を醸し出す。このせつなさこそが曲のテーマなのだろう。

1992年発表のアコースティック・バージョンも有名だが、個人的にはオリジナル・バージョンの方がずっと思い入れがあり好きだ。やはりエンディングの長いピアノ・パートは欲しいところ。アコースティックの方はリズムも歌い方も全然違うので、興味のある方は一聴を。

この曲のエピソードとして、BeatlesのGeorge Harrison夫人・Patyを口説いた曲としても有名。Georgeが口説いた(?)『Something』と内容を比べてみるのも面白い。GeorgeとClaptonは親友で、1991年には一緒に来日公演も行っているが、さすがにClaptonのソロ・タイムでもこの曲は演奏されなかった。

2003年9月29日月曜日

Etudes #4 opus #10

Frederic.F.Chopin [ F.Chopin ]

ショパンの初期のピアノ曲「エチュード」。「練習曲 作品10-4」と言った方が通じるかもしれない。この曲を知ったのは、何と、黒人ヘヴィメタル・ギタリストのTony MacCapineが弾いていたことによる。ギタリストがどうしてという気もするが、おそらくピアノもそれなりの腕なのであろう。彼はギターの腕も凄まじく、まさにショパンがギターを弾いているかのようなハイ・テクニック&スピード王のギタリストだ。

で、この曲だが、テクニックには絶対的な自信を持っているショパンらしく、かなりテクニカルだ。ほとんど「俺のテクニックを見てくれー」「凄まじい指の動きだろー!」と言わんばかりである。ショパンの曲はロマンチックなものも含め、どこかで必ずハイ・テクニックなパートがある。現代に生きていたら、ヘヴィメタル・ギタリストのようになっていたのではないかと思う。同じ系統にはリストもいる。彼もショパンに負けず劣らずテクニシャンだ。

曲のテンポは結構早い。左手で軽やかなコードをを4分で打ちながら、右手は16分の凄まじい勢いで弾きまくる。休符など一切なしだ。
突然、右と左が入れ替わる。右手でコードを4分で打ち、何と、16分の凄まじさは左手に移る。クラシック・ピアノを本格的にやっている人は右手も左手も関係ないのだろうが、こうやってあらためて聴かされると驚異的だ。

コードを弾いている方はそれほど難解ではないが、何しろ反対の手が凄まじいスピードなので、テンポよく軽やかに弾くのはかなりの難易度だ。汗水たらして、真っ赤な顔をして血管が切れそうなくらいにブッ飛ばしている横で、鼻歌でも歌いながら軽くスキップをしているようなものだ。それを同時にやるのだから、プレイヤーは感情のコントロールを自由自在に出来なければならない。溜め息の出そうな曲だ。

音使いについても多少は触れておく。キーが「G#m」とヒネクレてはいるが、メロディは基本的に「G#ハーモニックマイナースケール」にすぎない。スピード重視なので音列的には比較的シンプルだ。最初の部分のコードは「G#m」「C#m」をジャンジャンと鳴らした後は、「D#dim」 「C#m」 「Cdim」 「C#m」と半音階を強調し、「F#m」 「C#m」 「F#m6」だろうと思う。耳で聴いてのものなので、正式な譜面と同じ保証はない。
全然違うことを言っていると恥ずかしいので、具体的な音についてはこのくらいにしておくが、ペダルノートの使い方や華麗なスケールの下降ラインなど、参考になる点も多い。

とにかくスピード王的な曲なので、ひたすらスピーディに弾けたらカッコいい。クラシックはテンポにも厳格だが、この曲を倍速で弾いて文句を言う人はいないだろう。(人間技を超えるだろうが)

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2003年9月27日土曜日

The Crave

Jelly Roll Morton [ J.Morton ]

20世紀初頭、「Jazzを作った男」と豪語したJelly Roll Mortonのこのピアノ曲は、まだジャズというよりラグタイムを感じさせる曲だ。ラグの2拍子よりもハバネラ風のシンコペーションにするところが特長で、簡単に言えばタンゴ風ということ。

コード進行的にはシンプルだが、半音でぶつかる和音の刺激やクロマチックなメロディがカッコいい。

最近のジャズ・ピアノはもっと右手重視だが、左手が聴きどころ。重低音のルート音でドーンと響かせておいて、すぐに中音域でコードを鳴らす。
ソロ・パートになってリズムを崩して弾いても左手は変わらない。最近は片手だけで複雑なソロを弾く場合が多いが、一人ですべてをプレイするスタイルもカッコいいと思った。

なお、この曲は映画『海の上のピアニスト』の中で、主人公とJellyが対決する際に演奏される。かなり印象的なシーンなのでお薦め。映画ではシャッフル風のリズムで聞きやすくなっていてカッコいい。
(この映画の中では Jelly は黒人だが、本物は白人だ。映画で対決する味方と敵を分かりやすくするための演出だろう)

映画の対決シーンでは、Jellyが2曲目に弾くのがこの曲だが、直後に主人公がそっくりに真似して弾いてみせる。この主人公が弾くバージョンは、そっくりなのだが、よく聴くと猛烈な左手が加わっているのが違う。半音階の早弾きだ。その迫力の低音の違いを聴き取ってほしい。まったくピアノが弾けない役者さんの演技だが、ちゃんとそれっぽく手が移動しているところが凄い。

この他、Jellyの演奏シーンでは「Big Foot Ham」「Finger Breaker」が出て来るので興味のある方は是非どうぞ。

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2003年9月26日金曜日

レッツ・ゴー・UGM

TALIZMAN [ 木村昇/山上路夫 ]

すっかりウルトラマンづいているが、第3弾である。
「ザ・ウルトラマン」で書いた通り、自分のオリジナル曲だと思い込んでいたら実は違っていたという恥ずかしい思い出のある曲だ。さて、この曲は「ザ・ウルトラマン」の後に再び特撮に戻ってのシリーズで、「ウルトラマン80」で使われた曲で、おそらくエンディングで流れていたのではないかと思うものだ。このあたりは記憶が定かでないのだが、印象に残っているということは、BGM的に使われていただけではないと思う。

「ウルトラマン80」はその名の通り、1980年に放映されたもので、当時私は小学生の高学年。妹や弟と一緒に見ていた記憶がある。「UGM」というのは、「ウルトラマン」でいう「科特隊」、「ウルトラセブン」でいう「ウルトラ警備隊」、「帰ってきたウルトラマン」でいう「MAT」にあたる、地球防衛軍的な組織の名前だ。つまりその地球人の軍を応援する曲なのだ。毎回怪獣の回りを飛んで、ほとんど通用しないミサイル等を放ち、最後は撃墜されてしまう、とんでもなく金のかかるであろう組織だ。

この曲も子供に買い与えたCDに入っていたもので、聴いた瞬間に思い出し、そして自分のオリジナル曲で使ったパターンだということにも気がついた。
一応、完成した曲だったが、歌詞がつかずにまともに録音もしていないものなので、これを機にお蔵入りが決定だ。

さて、この「Let's Go UGM」だが、私が自分の曲で転用してしまった部分は2箇所ある。
1箇所目は「このほーしをー、まもーるーのが」という部分で、メジャーコードからそのままマイナーコードになる部分だ。キーがわからないので仮にキーがCとして「F→Fm」としておくが、私はこのコード進行が好きな割りに使うのが下手なのだ。それだけに、珍しく頭の中にスッと出て来たメロディだったため、飛びついてしまったというわけだ。 もう1箇所は「正体不明でやって来るー」というサビ直前の半音階のところだ。盛り上げるにはピッタリのメロディだ。

まあ、この2箇所の転用だけなら元ネタがバレることはないのではないかと思うが、自分として引っ掛かるので、もう少し自分流に消化できた上で、いつか再び使ってみたいと思う。

2003年9月25日木曜日

ザ・ウルトラマン

ささきいさお [ 宮内國郎/阿久悠 ]

「帰ってきたウルトラマン」に続いて、今度は「ザ・ウルトラマン」だ。「ザ・ウルトラマン」は、何とウルトラマン史上唯一のアニメ作品であり、見た目も結構違う。しかしウルトラマンには変わりなく、カラータイマーもあるし、バルタン星人も出て来る。TV放映当時も見ていたが、他のシリーズと比べると思い入れは随分低い。アニメになじめなかったからだ。

この曲は「宇宙戦艦ヤマト」等でお馴染みのささきいさおが歌っている。ウルトラマンシリーズでは唯一ではないだろうか。とても力強い低音が迫力がある。本当に、ささきいさおの歌は男の子の子供番組には欠かず、極めて重要な存在だ。
重要さを裏付ける個人的な話しがあるのだが、私がバンド活動をしていた10年以上前のこと、オリジナル曲を作曲した。作曲は、たいていは頭の中に何となく浮かんでくるメロディを元に作るのだが、その曲のメロディはどこかで聞いたこがある気がした。しかしどうしても思い出せない。ところが2~3日前、子供に買い与えたCDの中の「ザ・ウルトラマン」の主題歌を聞いて「これだ!」と思い出した次第だ。

思い出せないはずだ。作曲した時点ですでに10年以上経過している上に、ハードロックの曲をイメージしているのだから、まさか子供の頃に聞いたアニメの主題歌だとは思いもしなかった。
幸いにして、この曲が元ネタになっている曲は未完成のままで、他で使われることはなかったのだが、もし完成して他者に聞かせ、その人が気付いたりしたら、とても恥ずかしかっただろう。
この曲に出て来るお気に入りのパターンは、キーが「C」だった場合の「E」の扱い方だ。歌詞で言えば「光か、はやてか、音か」の部分だ。この音の使い方はドラマチックに盛り上げるのにピッタリだ。特に「E」の3度の音が「C」の5度から半音上がる音に当たるところがミソ(シャレではない)なのではないかと思う。つまり「ドミソ」→「シミソ#」だ。

実はこれと同じパターンがウルトラマンシリーズでもう1曲あることが判明している。(それは明日に)

しかし、記憶とは恐ろしいものだ。

2003年9月23日火曜日

Be My Baby

The Ronettes [ J.Barry/E.Greenwhich/P.Spector ]

1960年代初頭にアメリカで2位になったヒット曲。The Ronettesについてはほとんど知識がないため何とも言えないのだが、多分、姉妹+親戚の女性3人組のボーカルグループだと思う。曲もただ1曲、この曲を知っているだけだ。

どこが好きかと言えば、サビだ。他の部分と比べ、半分くらいのスピードでゆったりと「Be my, be my Baby」と出て来る。しかもこれはバック・コーラスの形でのハーモニーだ。メインのボーカル・ラインはその合間にオブリガード的に歌詞を入れている。私はこの手のアレンジにとても弱く、一発で参ってしまう。
(個人的にこういうサビのアレンジを「Be My Baby的アレンジ」と呼んでいて、多分今後もここで取り上げることになると思う)
ボーカルのわざとらしいビブラートが演歌チックで気になるが、この曲はほとんどこのサビだけで決まり!だろう。

この曲を作曲し、プロデュースもしているのがPhil Spector。Beatlesの『Let It Be』をプロデュースし、Paul McCartneyが激怒したというエピソードで知られ、1970年代とはJohn Lennonとの活動でも有名。また「To Know Him Is To Love Him」の作曲者でもある(この曲も大好き)。
Ronettesのリードシンガーの Veronica Bennett と結婚をしている(後に離婚)。

彼の音作りは、当時流行った、というか Phil が流行らせた「Wall of Sound」と呼ばれるもので、これはギターやピアノ等の特定の楽器をメインに据えるのではなく、多くの楽器を重ね、コーラスも駆使するといった手法のもので、音の壁のようだからつけられたものだ。 個人的には隙間のある音作りが好きなためこの手法は好まないのだが、それでも(今回取り上げたように)彼が初期にリリースした曲には好きなものが多い。

2003年9月22日月曜日

青 春

岩崎良美 [ 芹澤廣明/康珍化 ]

風が踊る グランドベンチの隅
誰かがほら 忘れていったわ ユニフォーム
汗にまみれ あちこち破れかけて
手にとると 涙が出た

ねえ 音もたてずすぎてく青春には
さよならがいっぱい
ねえ 楽しい日々 お願いこのまま
STAY STAY STAY
時よ動かないで
私はまだあなたに好きですって
打ち明けてさえ いないの

くぅ、泣けるねぇ~。
アニメ『タッチ』のエンディング・テーマの曲で、確か選抜甲子園の入場行進曲にもなったはず。
全然せつなくもないのに、高校時代を思い出してせつない気分になるのが不思議。勝手に「ドラマチックでせつない青春」をイメージしてるんでしょうね。

いきなりなぜこの曲かというと、ケーブルテレビの子供チャンネルで再放送しているのを偶然見つけ、しばし見入ってしまったからであった。

私は基本的に曲から入るのですが、この曲の良さは歌詞ですよね。
アニメと連動してか、高校野球のイメージの曲で、途中からは青春賛歌となる。「音もたてずすぎてく」あたりは、誰もが「うんうん」とうなづきながら涙をこらえるところ。私にもそんなクサいフィーリングが今も残ってるんですね~。

曲的には。歌の出だしの静かな部分のバックでリズムを刻んでいるギターがなかなか印象的。Policeあたりに出て来そうなアレンジと言えるでしょうか。
「ねえ」からは一気に音程が上がって盛り上がる。開放的なメロディだからこそ、青春を回顧するイメージと重なる。素晴らしい!サビなどにイキナリ英語を使う歌詞が横行していますが、この曲の場合は英語というまでもないレベルのせいか、かえって分かりやすすぎてジーンと来るなぁ。

最後の2行はなくても雰囲気は伝わると思うのだが、これに変わる素晴らしい詞が思いつかないので、良しとしよう。

2003年9月21日日曜日

Crying In The Rain

Whitesnake [ D.Coverdale ]

来日中のWhitesnake。地味ながらブルージーで渋いハードロックバンドだったのが、突如、派手派手ギンギンのヘヴィメタルバンドに変貌した1987年。そのアルバムの1曲目を飾るのがこの曲だ。この曲はブルージーな時代のリメイクで、昔のバージョンを比べるのも面白い。
ここで取り上げるのは派手派手な方のものだ。
個人的にはブルージーな時代の曲にも好きなものが沢山あるが、ほとんど別のバンドに近いので「どちらが良いか」と問うのはナンセンスに思う。たんに好みの問題になるからだ。

ヘヴィメタル・ソングに聴こえるが、よく聴けばブルージーな要素は沢山ある。ドラムの手数が多くなったもののリズムは同じだし、ボーカルもブルージーな音使いだ。

さて、曲の聴きどころは沢山あるが、基本的にはギターとボーカルだろう。Whitesnakeのボーカルはいつでも最高だ。パワフルでワイルドでセクシーで、シャウトも低い声も最高だ。

ギターは圧巻だ。まず何と言ってもあのズ太い音。レスポールの音だが、一体、いくつのギターが重ねてあるのか想像もつかないが、ブ厚い音になっている。リバーブが深めにかかっているので、余計にブ厚さを感じさせる。

リフはブルージーな時代のものそのままだが、粘りのある弾き方のせいか、淡々とせずにカッコ良い。刺激的なピッキングハーモニクスの音も最高に決まっている。

そして更に凄いのはギターソロだ。溜め息が出るほど凄まじいソロで、早弾きにつぐ早弾き。無意味な早弾きと揶揄する人もいるようだが、私はそうは思わない。
ビブラートは心を震わすし、早弾きの中に出てくるチョーキングのロングトーンは最高に表情豊か。他の曲でも結構出て来るのだが、John Sykes はこの早弾きとロングトーンの対比が抜群なのだ。
後半に入るとドラムと共にリズムを倍にしているところは驚くばかり。締めのライトハンドのフレーズも、たんにコードトーンを早く弾くようなタイプではなく、ペンタトニックを駆け上がり、最後はまるでビブラートをかけているかのような劇的なフレーズになっている。
David Coverdaleが「マグマが爆発しているようだ」と評していたが、まさにそんな表現がピッタリの、激しく緊張感溢れる最高のソロだ。
フレーズを真似して弾くだけではとても雰囲気は出せそうもなく、ピロピロと、か細い音での早弾きとはひと味もふた味も違う、表情豊かなソロに平伏すしかない。

ソロが終わった後のボーカルもそれを受けるかのように激烈で、ハイトーンが出て来たり、本当にカッコいい。

2003年9月20日土曜日

帰ってきたウルトラマン

団 次郎 [ すぎやまこういち/東京一 ]

子供のヒーロー「帰ってきたウルトラマン」の主題歌だ。なぜイキナリこの曲なのかというと、それは今、2歳半の長男がハマっているからだ。この年齢だと最近のウルトラマン・シリーズよりも昔のシンプルな話しの方が分かりやすくて良いようなので、レンタル・ビデオ屋で借りて来ては見せているのだ。そして、ついに昔から現在までの全主題歌が収録されているCDを買ってしまったというわけだ。

「帰ってきたウルトラマン」は、初期ウルトラ3部作と言われる(?)「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」から3年のブランクを経て復活したもので、だからこそのこのタイトルなのだ。他のウルトラマンは皆、「セブン」とか「エース」とか「レオ」とか名前があるのに、一人だけ「帰ってきたウルトラマン」というのでは名前らしくないということで、後に「ジャック」の命名されたそうだ。(昔は「新マン」と呼ばれていたのだが)

さて曲だが、まず何と言ってもイントロだ。いや、正確にイントロではない。
ウルトラマンシリーズには主題歌の前にアヤシイSEやちょっとした音楽が挿入されている。30秒ほどの短いものだが、その時、画面には不思議な模様とか光が映され、やがてタイトルがバーンと登場する。音楽もそれに合わせ、摩訶不思議な雰囲気で始まり、やがてカッコ良くファンファーレがなるのだ。
私は「ウルトラセブン」や「ウルトラマンエース」のイントロSEも好きだが、前後のギャップという意味でこの「帰ってきたウルトラマン」にハマっている。キラキラした音と半音階が最高だ。

[ 音は悪いですがイントロSEから40秒だけ音が聴けます ]

このイントロSEに続いて、2秒弱の空白、そして実際の曲のイントロに入る。いきなりブラス入り、ピアノのリフが目立ったロックかと思うような曲調で驚く。
そしてややソフトなボーカルが「君ーにも、見えーる、ウールトラのー、ほーしーっ」となるわけだ。このギャップが面白い。CDを見ると、このボーカルはウルトラマンに変身する郷秀樹が歌っているらしい。
ほとんどの部分は子供の合唱団と一緒に歌っているのだが、一番最後の「帰ーってきたぞっ、帰ーってきたぞっ、ウールトーラーマーン」の「トーラー」だけハモっているところが微笑ましい。郷秀樹が主旋律で、子供が下降していくラインを歌い、「マーン」はオクターブとなる。

この直後の(本来は間奏にあたるはずの)部分が好きだ。音をとっていないので正確でないかもしれないが、キーが「C」だとしたら、「F」から「G」再び「F」へのコード進行の部分が美しい。こんなにシンプルな進行で、しかも出て来る音もコード・トーンにすぎないのに、なぜか切ない気持ちになる時があるのは、子供時代の古い記憶が蘇るからだろうか?

2003年9月16日火曜日

Cowboys From Hell

PANTERA [ PANTERA ]

個人的許容範囲の中でももっとも過激で激烈なバンドがこのPANTERAだ。それまでのメタル・ミュージックのMetallicaとかJudas Priestといったバンドも充分過激だが、このPANTERAは更に上を行く。最高にヘヴィで最高にエネルギッシュなバンドだ。
どんなにヘヴィで凄まじい音楽であっても、音楽の基本であるリズム、メロディ、ハーモニーがなければ嫌なのだが、これ以上ヘヴィなバンドになると最も重要なボーカル・メロディが消えてしまうので受け付けない。
PANTERAも時折同様になるが、基本的にはシャウトしていてもメロディはある。

この曲のカッコ良さは、まずはイントロだ。この手のエネルギーの塊のような曲は、イントロからぶっ飛ばさないことには始まらない。機械的なリズムの中に入り込んで来るギター。来るぞ来るぞと身構えていると、突然フルでベースやドラムが乱入する。最高にカッコいい。何も考えずに「ウォー」と叫びたくなる。
とにかく大音量で聴くべきだ。「元気が出る」なんてものではない。体の内側からエネルギーがほとばしり、アドレナリンが体中を駆け巡る。

ザクザクと刻まれるギター。最高のリフに最高のサウンド。歪みが大きいが、たんにエフェクトで歪ませているだけではこの音は出ない。もちろん、中音域を削り、ハイとローを持ち上げたいわゆる「ドンシャリ・サウンド」で、V字になるイコライジングで作るのだが、それ以上に強くて正確なピッキングが必要なのだ。「ヘヴィで激烈で過激なバンド」と言うと「粗っぽくて雑で下手クソ」とイメージする人もいるかもしれないが、それは大きな間違い。かなりのハイレベルな演奏技術、サウンド技術が必要なのだ。

ギター・ソロではリズムが落ちて聞かせる構成になっているところがにくい。意外にもギターの歪み度は低く、ザクザク感のあるリフとはまったく違うサウンドだ。背後のバッキングと比べるとよく分かる。
Dimebag Darrellのギターは本当にカッコいい。どんなにワイルドに弾いてもリズムは正確で音も乱れない。それはソロでも同様だ。

弾くこと以上に重要で、かつ難しいのは休符だ。休符部では存在を消すかのごとくピタッと音を止めなければならない。多少でもヘヴィ系バンドをやったことがある人なら、大音量での休符がいかに難しいことかご存知だろう。

2003年9月15日月曜日

六甲おろし

阪神タイガース [ 古関裕而/佐藤惣之助 ]

もう今日はこの曲しかないでしょう。あのダメ虎と呼ばれた阪神タイガースが18年ぶりの優勝を飾ったのだ。マジックが減り、優勝目前でありながら前週はヤクルト、中日にことごとく負け続け、今日も劣勢ながら8回に片岡のホームランで同点とし、9回、一死から藤本と片岡の連打と敬遠で満塁とし、赤星が前進守備の右翼頭上を越す安打でサヨナラ勝ち!この2時間後にヤクルトが横浜に大敗して優勝が決まった。予想通り、道頓堀に飛び込む人が多数(5000人超!)、日本中がタイガース一色となった。

この曲は勝利した試合後に高らかに歌われる凱歌で、ナイターの夜空に向かって歌うことほど気持ちの良いものはない。
「六甲おろし」というのは甲子園の背後にある六甲山から吹き下ろす風のこと。甲子園で風と言えば、右から左へ吹く「浜風」の方がずっと有名で試合にも影響を与える。「六甲おろし」は地元でも使わない言葉のようだが、この風、プロ野球のシーズン以外に吹くようだ。作詞した佐藤さんは神奈川の人で、大阪に行った際に「赤城おろし」等のイメージでつけた名前なのかもしれない。

個人的に演歌は苦手なのだが、この曲はよく耳にする演歌よりも更に古い曲のせいか、マイナー調でないせいか、イントロからとても気に入っている。間奏もしっかりしているし、曲としても他球団のものよりもずっと素晴らしいと思うがどうだろう。

この曲は1936年の作で12球団最古。後半の「おぅ、おぅ、おぅ、おーっ、はーん しーん タイガース」と部分の「おぅ」がなぜ「おぅ」なのかと言うと、この曲が「大阪タイガース」時代に作られたからだ。「大阪」の「お」だったのだ。
曲名も本当は「大阪タイガースの歌」で、現在は「阪神タイガースの歌」に改められている。

私は、この曲のCD等の音源としてはThomas O'Malley(元阪神<1991~94>・ヤクルト<1995~96>の選手。1993年首位打者、翌年、長打力不足で解雇)の歌っているものしか持っていない。相当な音痴だが、何と日本語で歌っていて笑える。そんな陽気なオマリーは、今年の阪神の臨時コーチで、ビールかけにも参加してはしゃいでいた。

作曲者の古関裕而といえば高校野球の『栄冠は君に輝く』や東京オリンピックの『オリンピック・マーチ』が有名。この曲名だけでも凄い人だということが実感できるだろう。

それにしても、優勝インタビューでの星野監督の「夢に日付けを入れることが出来ました」は名言だなぁ。

2003年9月14日日曜日

That'll Be The Day

Buddy Holly [ B.Holly/N.Petty/J.Allison ]

1957年というとても古い曲だが、聞き出すと結構ハマる。シャッフルのリズムを刻むギターが気持ち良い。Buddyトレードマークの「しゃっくり唱法」は少ししか出てこないものの、歌を真似てみると曲の楽しさがよく分かる。

それからギターのイントロ!
とても短いイントロだが結構印象に残った。何度も聴いてギターでコピーしようと思ったが意外に苦戦してしまった。
一聴するとカントリー系のフレーズに聴こえたが、よく聴けば単なるアルペジオにすぎない。少し変則なところがあるのと半音ずつ下がる音使いが少しだけカントリーっぽく聴こえる。
Buddyはカポを5フレットにつけて弾いている。カポがないとカントリー系のフレーズだが、カポ付きだと途端にアルペジオになってしまう。同じフレーズなのにニュアンスが変わるのが不思議。

Beatlesも彼のファンで、この曲は『アンソロジー』にJohn Lennonのボーカルで収録されている。Beatlesが他人の曲をやってもオリジナルよりずっとカッコ良くなるのだが、この曲に限ってはオリジナルのBuddyのバージョンの方が良いと思う。Linda Ronstadtのも有名。

Buddy Hollyは初期ロック黎明期の人で、ほとんどがワイルド系ばかりの中、一人メガネをかけ、田舎の好青年という、一風変わったルックスを持つ。「きっといい人だろう」と勝手に想像してしまう。それでいながらテキサス出身のロックンローラーというのだから面白い。
当時は「ロック界のアイドル」的な存在だったようだが、独特の唱法で人気を博した。「しゃっくり唱法」とはPresleyなども得意とするもので、メロディの中のある1音を瞬間的にオクターブ上げたり5度上げたりする歌いまわしのこと。

個人的には、ルックスや唱法ではなく、曲作りがポイント。確か、Paul McCartneyも「自分で作曲するところが素晴らしくて影響を受けた」というようなことを言っていたと思う。この曲の他にも結構有名な曲は多い。 ギター2人にベース、ドラムの編成で、ギタリストが自作の曲を歌うというパターンもBuddyが始まりだったかもしれない。

1954年から活動していたが、人気が出たのはCricketsを結成した1957年から。惜しいことに、実働わずか2年間で、1959年2月3日、飛行機事故で亡くなってしまった。22歳だった。合掌。