サンハウス [ 鮎川誠/柴山俊之 ]
実は大昔(1990年頃)に、シーナ&ロケッツ・ファンの女の子にこの『レモンティー』を聴かせてもらい、「まるっきり『Train Kept A Rollin'』のパクリじゃん」と馬鹿にした覚えがある。当時の私の理解はその程度だったのです。その女の子に謝罪したいです。ごめんなさい。
もうちょっとロックの歴史を知っていれば理解も変わってくる。
まずは『Train Kept A Rollin'』の複雑な背景については書いたが、簡単に言うと『Train Kept A Rollin'』自体がパクリだということ。パクリというと悪いイメージだが、普通のことだったということ。
なぜかというと、1960年代のロックはまだまだ市民権を得ていない時代、他のジャンルの曲をロック流に解釈・発展させて演奏するのは全く悪いことではなく、むしろ「カッコ良い」「いいセンス」というような事だった。
例えばアメリカの開拓時代のフォーク・ソングの『Red River Valley』をパクった Johnny & The Hurricanes の『Red River Rock』のような曲もあるし、クラシックの曲の一部を拝借することも日常茶飯事だ。Procol Harum の『A Whiter Shade of Pale』もバッハが元ネタだし、Cream の『Crossroad』だって Robert Johnson の『Cross Road Blues』だが、それをパクリという人いない。影響は明らかだが、元曲にはない魅力がプラスされている。
『Train Kept A Rollin'』の場合も、ブルース曲を組み合わせて作ったといったところで、そもそもオリジナルの Tiny Bradshaw Trio もジャズの Ella Mae Morse の『Cow Cow Boogie』をパクったという。
日本のロック黎明期においても同様で、『レモンティー』に限らず別の曲から拝借したものはいくらでもある。ロックの世界、文化、音楽を世に知らしめなければならなかった世代が分かりやすく日本語でロックを歌う。そこで原曲をそのまま訳し、カヴァーとして紹介した東京ビートルズのようなやり方ではなく、センスや雰囲気を見せる方がよほどダイレクトに伝わるというものだ。事実、これによりロックへの世界の扉が開いた人は数多い。レコード化する際の表記は「歌詞はオリジナル、曲は複雑な事情があります」とすれば良かったのだろうか。何しろ Yardbirds のオリジナルとも Tiny Bradshaw Trio のオリジナルともいえず、強いていうなら Johnny Burnette が元ネタかとなるが、それなら大々的に広めた Jeff Beck こそが?となる。だったら日本においては鮎川誠となるだろう。ロックが浸透している現代の B'z が洋楽をパクるのとは訳が違うのだ。
Jeff Beck がリフを強調して『Train Kept A Rollin'』を紹介したように、サンハウスの『レモンティー』もリフが強力だ。
Yardbirds よりももっと強力で直線的に前に出ている。彼の頭の中では「こうすればもっとカッコ良い」というのが聴こえてきたのだろう。
ところで、歌詞は柴山のオリジナルだが、これも元ネタがある。レモンといえばピンと来るのが Led Zeppelin の「Lemon Song」だ。実際、歌詞を見れば明らかにこの曲を意識しているのが分かる。
しかしこの曲は Howlin' Wolf の「Killing Floor」(1964年)が元といわれ、更に この曲はRobert Johnson の「Travelling Riverside Blues」(1937年)が、そしてArthur McKay & Roosevelt Sykesの「She Squeezed Me Lemon」(1937年)まで遡れるという(このあたりはネットで調べた)。
レモン一つでデルタ・ブルースまでつながる!
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