2018年6月29日金曜日

Please Please Me

The Beatles [ J.Lennon/P.McCartney ]

Beatles のデビュー2曲目で、イギリスを制覇した曲。ハーモニカとボーカルハーモニーが印象的で、元々はもっとスローな曲で Roy Orbison 風だったらしいが「テンポアップして元気いっぱいにしたら格好良い曲になった」ということらしい。
出だしのボーカル・ハーモニーは○度のハモりというのではなく、片方(John)は下降ライン、もう片方(Paul)はずっと同じ音(E音)を歌うというもの。これを知ると、面白いので同じ音の方は歌いたくなってしまう。

このタイトル「Please Please Me」だが、「どうかどうか私を」では意味不明。最初の「please」は普通に「どうぞ」という意味だが、2回目の「please」は他動詞の「喜ばせる」という意味で使っているので、「どうが僕を喜ばせて」という意味になる。もちろん同じ単語を続けたのは狙ってやっていて、オシャレだ。
大ヒット曲だが、よく考えると結構エロい内容で、例えば最初の方の「I know you never even try, girl」なんかは、何にトライするのかは伏せてあるが・・・?タイトルからして結構エロいのだ。

この曲は、ベースもブンブン唸りを上げる感じでカッコいい。ルート連発だが、アクセントに小さなスライドを入れて、サビのところは結構動く。私はベース・ラインが大好きだ。

コード進行を見ていこう。イントロは「E」一発。歌が入ってからもしばらく「E」とちょこっと「A」で、間の合わせるところは1回目が「E・G/A・B」で2回目はユニゾンで「(一番低い)ミミ(オクターヴ上の)ミミシシ」と入る。サビは「A」「F#m」「C#m」「A」「E」「A/B」「E」「A/B」、展開するところは「A」「B」「E」「E」を繰り返す。
エンディングがなかなか良くて、「E」「A/B」を繰り返した後、コード一発とスネア・ドラムの8分打ちの「タタタタ」が4回繰り返されるところが格好良い。コードは「E」「G」「C」「B」とつなぎ、「E」で終わる。

この曲のキーは言うまでもなく「E」だが、途中やエンディングに少しだけだが「G」だの「C」だのが出て来る、これはダイアトニック・コードにないもので変だ。しかし独特な雰囲気を醸しているように感じるのではないだろうか。これは、モーダルインターチェンジといって、簡単に言うとキーを「Em」と見なす、というか「Em」のダイアトニックから借りて来た音ということ。「Eメジャー」なのに「マイナーっぽい響き」つまり「ブルージーな感じ」になるわけだ。
Beatles は意外にこういう使い方が多くて、単純なポップス曲なのに、なぜかどこかブルージーという時はこれが多い。

2018年6月8日金曜日

More Than Words

Extreme [ Nuno Bettencourt/Gary Cherone ]

Extreme の必殺のバラード。もちろん大ヒット曲だ。Gary と Nuno の美しいハーモニーがとても印象的な名曲だ。
曲調に合わせて歌詞もうっとりしてしまうようなもので、タイトルからしか「言葉よりも」だから極上のラヴ・ソングになることは間違いないだろう。

ハーモニーは基本的に3度のハモりだが、ところどころに片方は上がって片方は下がるような工夫してあるところがある。決して難しくはないが、伴奏が超シンプルなので、ボーカルの聴かせどころとも言えるし、失敗すればかなり粗が目立ってしまうとも言える。

伴奏はアコースティック・ギター1本。超シンプルだ。フォーク・ソングのようにコードをジャカジャカやるのではなく、2拍目と4拍目に弦全体を叩くパーカッシヴな音が入っていてアクセントになっている。コードはシンプルだが、シンコペーションが多いので、最初はスローで練習して慣れないとちょっと難しい。

エンディングにライトハンドやハーモニクスを絡めた凄い早弾きのソロが出て来るが、それは省略しても大勢に影響はない。確かビデオクリップも省略してあった。

コード進行を抑えておこう。イントロは「G」「Cadd9」「Am7」「C」「D」を繰り返す。歌が入ってからは、イントロと同じもの2回繰り返した後に次の展開に入って「Em」「Bm」「Am7」「D」「G」「D」「Em」「Cadd9」「Am7」「D」「G7」「C」「Cm」「G」「Em」「Am7」「D」「G」という感じ。「G7」のところは「おっ」となるし、「Cm」のところは「さすがプロ」という感じだ。
次のサビ(?)の部分は「G」「D」「Em」「C」「C」「Am7」「D」「G」を繰り返す。

この曲はビデオクリップも作られていて、白黒で2人での演奏シーン。残りのメンバー2人はソファでくつろいでいる。Nuno の唇が印象的なので、Youtube 等で探してみて。

2018年6月7日木曜日

Kickstart My Heart

Motley Crue [ Nikki Sixx ]

Motley Crue の1989年のヒット曲は、疾走感あふれる元気いっぱいの爽快ナンバー。バイクの疾走感を表わしている。

メインのドラムがハイハットではなく、スネアで8ビートを刻んでいるのが特徴的でちょっと面白い。

まず最初にギターのアーミングで低音の効果音から始まり、すぐにギターのリフになる。このザクザクした感じから最高だ。
ただ、このリフ、リズムをとっていると次のリフに移る時に変拍子のように聴こえる。1拍ない部分があるのだ。
これは変拍子なのではなく、出だしの頭を錯覚させて「あれっ」と思わせるちょっとしたイタズラのようなものなのだ。
どういうことかと言うと、まず「ダーダダー」と入って「ダッツツ、ダッツツ、ダッツダーダダー」の繰り返しに聴こえるだろうが、そうではないということだ。2拍目の裏から入ると丁度良いように感じるが、そうではなく、3拍目の裏だということだ。
つまり「(ツ)ダーダ」「ダーダー、ツツダー、ツツダー、ツダーダ」を繰り返す、という訳なのだ。一度頭に流れるリフを忘れて、新しく考え直すようにしないとピンと来ないかもしれない。

この曲は比較的シンプルなので、音を取るのにそれほど苦労はしないだろう。一度静かになる部分があって、クールダウンするが、そこもそれほど難しいものではない。「sus4」が出て来るくらい。

あとこの曲で面白いのはエンディングのギター・ソロだ。Jeff Beck や Peter Frampton、Bon Jovi 等で有名になったトーキング・モジュレータ、マウス・ワウだ(「Living On A Prayer」の時に取り上げたので、もしよろしければそちらも参照のこと)。普通のワウワウよりも更に人間ぽくて(実際に口でやっているのだから当たり前だが)、非常に印象的だ。伸ばす音の時に「ワウワウ」とやると効果的だ。
一番最後のギターの音が「やだよーっ」と聞こえる。(笑)

2018年6月5日火曜日

Battery

Metallica [ James Hetfield/Lars Ulrich ]

アコースティック・ギターで始まる。
Metallca の曲でアコーステッィクが出て来るのは、大抵、ヘヴィな部分との対比になっていて、この曲も当然、このあと来るド迫力の部分を期待して待つこととなる。そのワクワク感が堪らない。

イントロのアコースティックの部分だが、美しいというよりは、静けさの中にもやや不気味さを感じさせるような、何かが起こるような雰囲気だ。「Em」「FM7」「F#m7」「G」とだんだん上昇していくコード進行。コードで見ると「3・5・3・5拍」になっていて変拍子のようだが、「8拍・8拍」ということなのだろう。このコードを低音だけ鳴らし(一番高い音で3弦2フレットの「A音」)、低めのフレーズが乗る。更にそれがハーモニーになり、トリプルになり、そしてイキナリ歪んだヘヴィなエレキ・ギターとベースの音に変わる。フレーズやコードは同じで、なかなかドラマチックなオープニングだ。アルバムのオープニングにも相応しく「待ってました」という気持ちになる。

本編はかなり早く攻撃的なリフ。「Em」に「B♭」を続けるのも Metallica らしい。途中で裏拍を強調したリズムがいくつか入るのもこの時期の Hevey Metal らしいと思う。 ボーカルの合間の小さなソロもカッコいい。「Em」の際の1弦17フレットと12フレットを使うパターンは Kark の十八番。よく出て来る。

新しい8分のリフが出て来たブレイクし、再び戻ったところからソロになる。ダブル・チョーキングで始まるソロだが、中盤から終盤にかけてがカッコいい。ミュートでスケールを降り、そして上り、バッキングが全音符に変わると8分のメロディとなるあたり、実に考えられている。

この後の合わせ、4分で「F・B♭/B・B♭」も単純だが、カッコいい。この曲はカッコいいリフが満載なのだ。歯切れの良い攻撃的なリフは気分をスカッとさせてくれる。

あとは、これまでに出て来た様々なリフが再度出て来つつ、潔く終わる。この簡潔さも男らしくて素晴らしい。旨味が濃縮されたような曲だ。

2018年6月4日月曜日

The Rain Song

Led Zeppelin [ Jimmy Page/Robert Plant ]

大好きな曲で、アコースティック・ギターがメインの曲なので、ギター1本でもかなりソレっぽくなるところが良い。これにロマンチックなメロトロン、後半はヘヴィなドラムも入って来るという「これぞ Zep!」というような曲。「天国への階段」と似た展開を持ち、繊細で静かで壮大な曲だが、こちらの方がずっと難解で難しい。

ギターのチューニングは1音下がっているので、押さえるポジションは「A」でも、出ている音は「G」。少々分かりにくいが、以下はギター目線で書くので、実音はコードネームの1音下の音になるのでご注意下さい。

開放弦を多用するコードが美しく、ギタリストが作る曲ならではといったところ。
「A」「AM7」「A7」「F#onA」という感じにトップの音がだんだん降りて来るイントロから始まる。シンコペーションが多い上に裏のアクセントが多く、ドラムのカウントもないので、どこが頭なのか、変拍子なのか、分からなくなってしまいがちだが、変拍子はない。特に印象的な4発の和音「ミラド#」「ミラシ」「ミラレ」「ミラド」(これらに開放弦が絡む)に「ラファ#」「レファシ」のところはすべて裏拍(Back beat)になるので慣れないと弾きにくい。

この後もリズムが取りにくいフレーズが続くので、曲をよく聴いて覚えてしまう方が早道かもしれない。いずれにしてもシンコペーションから裏拍連発のリズムは苦もなく普通に弾けないと苦しい。

途中からさすが John Bonham といったドラムが登場する。Led Zeppelin の曲はどれもそうだが、ドラムの存在感が凄い。だからこそ、Bonham なしで再結成は出来ないということなのだろう。仮に別のドラマーを入れても、Bonham の真似をすべきか、自分流を出すのか、何だかどちらもダメということになってしまいそう。
この曲のようなロマンチックで繊細な曲も、彼のドラムが入ることで筋の通ったロック曲になるから凄い。

Led Zeppelin のライブの映画『The Song Remains the Same』の中でもこの曲は演奏されていて、中に幻想的なシーンが挿入されている。これがイメージにピッタリで、Robert Plant が馬で旅をし、やがて城で敵と戦ったりするものだが、ケルト神話をモチーフにしているのか、古めかしい感じがメロトロンの音とよくマッチしていて、今や伝説のバンドとなった Zeppelin のイメージを想起するのにも良い素材となっている。

2018年6月3日日曜日

Since You Been Gone

Rainbow [ Russ Ballard ]

Rainbow の有名な曲の一つだが、オリジナルではなく、カヴァーだ。レコーディングの際には Cozy Powell が「ポップすぎてロック・バンドがやるべき曲ではない」と反対し、どうしてもやりたい Ritchie Blackmore との間で殴り合いのケンカになったという。(腕っぷしの強いCozyと華奢なRitchieとでは勝負にならない気もするが、Ritchieには陰湿なイタズラのアイディアが沢山あるので、事前にCozyは萎えていてRitchieが優勢だった可能性が強い)
Graham Bonnet の迫力あるボーカルもあって、最終的にはバンドの代表的なヒット曲となり、その後も長く演奏される曲となる。Rainbow だけでなく、Graham のソロや、Graham が在籍した Alcatrazz や Impellitteri でも演奏されている。

曲はコンパクトなポップ曲といった感じで、イントロのコードも明快。「G/D」「Em/C」「G/D」「Em・C/D」で出来ているリフで、リズムに乗せてコードをそのまんま弾けば良いのでコピーしやすい。
ボーカルが入って来てからは下降するベースラインが印象的で「G/DonF#」「Em/D」「C/GonB」「Am/D」の繰り返し。ギターはアルペジオを弾くが、シンプルなだけに少し開放弦を絡めたり工夫したい。

次のパートが転調した感じになって、「E♭」「F」「E♭」「Am/D」で元の戻る。コードよりもバンドで合わせるところがカッコ良い。

サビはイントロと同じ。

ソロがあるパートは、「G/Am」「GonB/C」「GonD/B7」「Em/GonD」「C」の箇所は、後ろでピアノが素早いアルペジオで上がり下がりしている。ギターはソロというよりメロディックな間奏で、あまり崩したくないフレーズだ。Alcatrazz などは Yngwie が合間に凄い早弾きを入れていたが、基本線は崩さなかった。

このパートが終わるとすぐ転調。全体が1音上がる。従って、「A/E」「F#m/D」「A/E」「F#m・D/E」となるのだが、最後のところのみ「A/E」「F#m/F」「A/E」「F#m/F」「A・E/A」となる。この「F」が変化球でとても面白い。
そして、終わったかと思わせておいて、サビのコード進行に合わせて今度こそのソロだ。今度は自由に弾ける。Ritchie はスライドを弾いていた。スライドもまた変化球の様で面白い。
ソロの終わりは、先ほどの「F」のあるコード進行にすれば良いだろう。

それから、この曲のタイトルだが、文法的には「Since You've Been Gone」で、そのように印刷されている場合もある。

2018年6月1日金曜日

Here I Go Again

Whitesnake [ David Coverdale, Bernie Marsden ]

Whitesnake をブレイクさせた超大ヒット曲だが、ライブ・バージョンを抜かしてもスタジオ・バージョンだけで3種類ある。オリジナルはヒットする5年も前の1982年のアルバム『Saints & Sinners』に収録されていて、ギターは Bernie Marsden と Micky Moody、ベースは Neil Murray、ドラムは Ian Paice、キーボードは Jon Lord という、これはこれでスーパーバンドのラインナップ。

そして大ヒットしたバージョンは1987年のバージョンで、ギターは John Sykes にソロだけ Adrian Vandenberg、ベースは Neil Murray で同じ、ドラムは Aynsley Dunbar、キーボードは Don Airey と Bill Cuomo。よく聴くとBパートのギターもAdrianではないかと思わせる音だ。それ以外は明らかにSykesの音。

更にもう一つのバージョンは、この時にラジオ・ヒットを狙ってキーボード満載のポップなバージョンが作られた。ラインナップは、ギターが Dann Huff、ベースが Mark Andes、ドラムが Denny Carmassi、キーボードはアルバム・バージョンと同じ。このシングル・バージョンは David 以外バンドに誰もいなかった時に作られた。

ビデオクリップが作られたのはアルバム・バージョンで、MTVで散々かかっていたので、ヒット・バージョンといえばアルバム・バージョンになる。
当時のDavidの彼女・Towny Kitaen が大々的にフューチュアされ、車の上での開脚やDavidとのラブラブぶりを見せつけるようなビデオクリップになっている。(この2人は89年に結婚し、2年後に離婚している)
まるっきりTownyが主役のようなビデオだが、この「here I Go Again」のクリップが一番当時のメンバー(ツアーメンバー)がちゃんと見えるので貴重だ。Adrianのソロも半分くらいは見えるし、イントロのキーボードは右からVivian、Adrian、Rudyと3人並んで弾いている(ような演出)。

ちなみに、ライブではアルバム・バージョンとシングル・バージョンのミックス・アレンジで演奏されている。

歌詞も少しだけ変更されていて、オリジナル・バージョンは「Like a hobo I was born to walk alone」と歌われていたが、「hobo」が「drifter」に変更されている。意味は同じような「流れ者」のような感じだが、変更理由は「hobo」が「homo」に聴こえるから。

さて曲だが、結構シンプルで、コピーも楽な曲だ。3バージョンを比較してみるのも面白い。
キーボードのイントロ。オリジナルは Jon 得意のハモンド・オルガンで静かで教会にような雰囲気なのに対し、ヒット版は同じフレーズながらキラキラした音がメインになっている。シングル版は出だしからバンド演奏だ。
ソロの前のパートもほぼ同じだが、オリジナルがツイン・ギターのハーモニーになっているところが、ヒット版は強力なピッキング・ハーモニクスになっている。90年代のライブからは上昇するコード進行に変更されている。

ソロも3様で面白い。オリジナルはツイン・ギターのバンドらしいソロ。ヒット版は Adrian らしいコード・トーンを意識したメロディックなもので、音程差の大きい部分や最後の早弾きも当時の雰囲気を表わしている。シングル版は更に80年代っぽい盛り上がるソロだ。