2004年8月26日木曜日

栄光の架橋

ゆず [ 北川悠仁 ]

アテネオリンピックで盛り上がっている中、そろそろこの曲を取り上げないわけにはいかないだろう。NHKでテーマソングに使われている曲だ。
ギリシアとは6時間の時差があるため、リアルタイムでは夕方くらいから深夜になる。中継を見るたび要所要所で聴かされる。毎日毎日何度も聴いているので好き嫌いなしに覚えてしまう。そして覚えれば覚えるほど感動的な競技のシーンに合わせて感動を誘う。

この曲の最大の良さは歌詞だろう。「ガンバレ!ニッポン」のノリではなくメッセージソング風になっている。出だしの「誰にも見せない泪があった。人知れず流した泪があった」という部分だけで、それぞれの選手のこの場に立つまでに様々な多くの苦労があったであろうことに想いを馳せる。基本的にはこの部分とサビの2つしかない。「ああ、大変だったんだね。凄いね。頑張ったんだね」と思わせておいて、サビで一気に盛り上げる。「いくつもの日々を越えて、辿り着いた今がある。だからもう迷わずに進めばいい。栄光の架橋へと…」
言っていることは「これまで頑張ったんだから、迷わず進め」というだけのことだ。これを言葉を変え、メロディに乗せ、静かな部分や盛り上がる部分のアレンジを加えると何と感動的になることか。

曲の方に注目すると、やはりサビでドーンと来る部分が最高だ。ここで盛り上がる様、最初の1回はサビも含めて静かなアレンジで通している。そして2回目以降に盛り上げる。

サビで盛り上がるだろうと思って期待して待っているのに、1回目はアッサリ終わってしまう。充分ジラした2回目にバーンといく。Glayの曲(まともには知らないのだが)などにもよくこの手法があるので、最近の流行りなのかもしれない。個人的には1回目からいってほしいのだが。

この曲は小さなイントロがあって、ほとんど歌と同時に始まるといえるが、このアレンジはBeatles風で好きだ。

コード進行は、最初の出だしが「E」 「G#m7」 「A・B」 「E」という進行だ。それに対して、サビの部分は「G#7」でバーンとやっておいて、 「A・B」 「E」 「A・B」 「E」という感じ。続いて「G#7」 「A・B」 「E」 「A・B」 「E・C#m/B」 「A・B」 「C#m」 この「G#7」が良いのだ。出だしの2つ目のコードに「G#m7」が出ているからこそ、感動的に聴こえる。

ちなみに、1回目の静かめのアレンジの時だけサビの最後の「栄光の架橋へと」の部分が「A・B」 「A」となる。「A」に戻ってしまいちょっと「アレ?」となってしまい、盛り上がらせないアレンジだ。これ以降は最後が「A」ではなくちゃんと「C#m」となってその後にちょこっと「付属」がついて最終的には「E」へいってスッキリと盛り上がる。ニクいアレンジとも言えるが、やはり個人的には1回目から来てほしい。「付属」の部分も良いのだが、今回は省略。

2004年8月12日木曜日

Burning Heart

Vandenberg [ A.Vandenberg ]

オランダのハードロック・バンド・Vandenbergの初登場だ。1980年代のバンドで、ヨーロピアンなメロディと、なぜかアメリカ南部の匂いを合わせたようなバンドでその昔はフェイバリット・バンドだった。メロディックでありながらシンプルな作り&骨太な音というのは一つの理想形だ。シンプルというのは「単純で幼稚」というのとは全然別で、余計な装飾をそぎ落としている分だけ本物かどうかの見極めが容易になり、曲作りでも演奏でも難易度はかえって高くなるのだ。

で、この曲だが、彼らの曲の中で個人的に最も影響を受けた曲だ。曲というよりギター・ソロだ。
曲も良い。シンプルな『Am』キー(実際はチューニングが半音下がっているが)のバラードだが、イントロのギターもひとひねりしてあるし、ハーモニクスの音も印象的だ。
まず、ローコードの「Am7」の形(1弦〜5弦で順に0F、1F、0F、2F、0F)で抑えておき、5弦開放の「A音」を出し、4弦を弾いた後スライドさせる。この時にコードを押さえている全体(といっても2箇所だけだが)を2フレットずらし、4弦は4Fへ、そして2弦をピッキング(3Fになっているはず)し、4弦を先程とは逆の動き、つまり4Fから2Fへスライドさせ、更に5弦開放で落ち着く。そして1弦から4弦までのアルペジオ。これをもう1回(途中までだが)繰り返した後、2音の和音で締める。すべて2弦と4弦で、「5F、5F」「3F、4F」「1F、2F」「(前の音からスライド気味に)3F、4F」「1F、2F」「0F、0F」と弾き、5弦開放の後、ノーマル・ハーモニクス。一つ目は1〜3弦の7F、2つ目は同じく5Fだ。
2音の和音のところは、ピック(親指と人差し指で持つ)と中指で弾くが、ピックだけでも3弦をミュート(4弦を押さえる中指の腹で)すれば弾けると思う。

最初のヴァースは「Am」 「G」 「C」という進行で、「G」の時にベースが「B音」を出すことで滑らかな上昇ラインになる。ヴォーカルのメロディが上から下で、ベース・ラインが対比になっているわけだ。逆をやると『天国への階段』になる。

サビのところでエレクトリック・ギターがバーンと入って来る瞬間が格好いい。よくあるパターンだが、静かなところへ入って来る存在感のある音は最高だ。
音的には全音符でジャーンとコードを鳴らしているだけだが、終盤になるとソロの延長のような形で高い2音も入って来る。単純だが印象的であり感動も誘う。

さて、素晴らしいギター・ソロを紹介しよう。まず導入部は2つのパートがあって、それぞれがツイン・ハーモニーになっている。だから計4本のギターがないと出来ない。独特のムードを醸し出すパートだが、ライブではアルペジオっぽい弾き方でハーモニーの片方と2種類の目立つところだけをつないだようなメロディをギター1本で弾いている。凄いのは次の単音ソロからだ。

基本的に低い音を多く使っている。また、伸ばす音と短く切る音の対比を明確にしている。最初の1小節目でそれがはっきり分かる。
重要なのはビブラートだ。かなり揺れ幅が大きく早めのビブラートだ。当然、伸ばす音の時にビブラートをかけるのだが、音が切れる瞬間ギリギリまで表情があり、次の音を出す直前に瞬間的に装飾的にスライドで音を下げたり上げたりしている。この微妙な音の表情が凄いのだ。
タメもきいている。タメというのは、音を遅らせることだと思う。遅れすぎてモタっていると最高にカッコ悪い。モタる寸前まで遅らすことだと思う。これは難しい。「バカと天才は紙一重」というが、「モタりとタメは紙一重」だ。

ソロの締めは3連符だ。全編ゆったりとしたフレーズだった上に突然の3連符のせいで、とてもスリリングに聴こえる。そして最後の最後で高く伸びやかな音。かなり強烈なビブラートがかかっている。この最後のビブラートだけでもこのソロは最高のものになる。何と劇的なソロか!

2004年8月9日月曜日

Dancing Queen

ABBA [ B.Andersson/B.Ulvaeus ]

70年代の大ヒット曲だ。ロック少年(私)にとって、ディスコだのポップだのは許し難い音楽だったので敬遠していたが、完全に「昔のこと」になっている今聴けば結構良いものだ。変な偏見を持ったり片意地張ったりせずに音楽は音楽として接したいものだ。

『Dancing Queen』はタイトル通りで、「さあ、踊ろうよ」というノリの曲。彼女は17歳だが、別に27歳でも良いだろう。いずれにしても輝いて見える魅力的な彼女のイメージで、それはまるで女王様のようだ。ダンスもイメージの一つだから、必ずしもダンスでなくてもいい。居酒屋での時間でもいいし、公園を散歩している時間でもいいだろう。今、思い出しても輝けるキラキラした時間に思えればそれで良い。そういう時代の歌だ。

曲はイントロの後、いきなりサビから入る。このコード進行がなかなか感動的だ。実際のキーが何か忘れてしまったのでとりあえずキーを『E』として考えるが、「B」 「A♭onC」 「C#m」 「F#7」 「A」 「F#m」 「E」という進行だ。

最初の3つのコードのベース音が半音ずつ上がって行くのが感動的だ。この部分だけでこの曲を好きになってしまう。

サビ直前のパート「You are the Dancing Queen, young and sweet, only seventeen」の部分もサビの一部のような盛り上がりだ。出だしにサビを聴かされているから、この部分も感動的なコードのような気がしてしまうが、何とたんに「E」 「A」 「E」 「C#m」という単純なものだ。つまりイントロと同じなのだ。

さて、この曲のもう一つの重要ポイントは歌のハーモニーだ。美しく聴かせるハーモニーの基本中の基本は3度だが、あまりにもありふれているためによほど音程差のあるメロディ等、他と違うものがなければ新鮮味がない。特に日本でのポップスやロックでのハーモニーはことごとく3度で食傷気味だ。
この曲は色々出て来て面白い。片方のメロディが上昇する時に下降するものもあるし、ほとんど音程が変わらないパートもある。一度ハーモニーの方にも注目してみてほしい。