2004年1月29日木曜日

Tutti Frutti

Little Richard [ L.Richard ]

「ロックの王様」といえばChuck Berry。ロック・クラシックスをたくさん輩出したし、ロック・ギターの基礎を確立した。
しかしLittle Richardもこれに匹敵する存在だと思う。

何と言っても凄まじいばかりのボーカルだ。声は太いし、シャウトは最高だし、歌い回しも上手い。おまけに彼はサービス精神が旺盛なのか、たんに目立ちたがり屋なのか、衣装も派手派手なのが多く、見ているだけでも楽しい。そのスター性と迫力のボーカルだけで充分にロック界の王様クラスだ。直立不動で綺麗に歌い上げるスタイルのポップス界の常識からすると、とんでもなく野蛮で無茶苦茶なヤツという印象だったのではないだろうか。しかしそれが黒人・白人問わず熱狂させている。これぞ「ロックンロール!」と言いたくなる。

ちなみに、後に彼は牧師になったというが本当だろうか?

で、曲だが、実はこの曲は先にPat Boonがヒットさせている。もちろん、Boonの方がカバーだ。カバーと言ってもほとんど同じなのだが、Boonの方が軽やかで聴きやすい。Little Richardの方はパンチがある。何と言っても一番の違いはBoonは白人だということだ。白人音楽が白人にウケるという自然な流れとなる。
1956年、ロック黎明期のことである。

しかしBoonバージョンのヒットのおかげで、Little Richardも日の目を見ることが出来たとも言えるだろう。この曲を演奏すれば喜ばれるし、自分の曲なのだから誰も文句はない。
ピアノの鍵盤をぶっ叩きながら歌う姿は最高にカッコいい。まろやかなBoonの歌と聴きくらべると、ロックがどういうものかよく分かる。

決めは「A Wop bop a lu bop ba lop bam boom!」だね!

2004年1月22日木曜日

Colors

Saigon Kick [ J.Bieler ]

それほど有名でないフロリダのハードロック・バンド。東南アジアではそれなりに人気があったらしい。なぜこのバンドを知っているかというと、1991年のOzzy Osbourneのコンサートに前座として登場したからだ。 「あまり興味ないな」と思いつつも何となく聴いていたのだが、曲が進むにつれどんどん引き込まれ、この曲を演奏した時はすっかりお気に入りのバンドになっていた。
この時のOzzyの来日公演には2日連続で行ったのだが、2日目には前日が予習になっていたので、この曲を含め、ジックリと堪能することが出来た。
ライブから先に入るパターンはかなり珍しい。

このSaigon Kickというバンドだが、冒頭ではハードロック・バンドと書いたが、ジャンルを特定するのはなかなか難しい。クレイジーなメタル・ソングもあれば、この後流行するオルタナティヴのような曲もあり、かなりのポップ・チューンもある。Beatlesの影響も受けているであろう、印象的なコーラスワークも聴きどころだ。
トレードマークのボーカル・ハーモニーは、正にBeatlesのJohnとPaulばりで素晴らしい。ほとんどツイン・リードボーカルと言えるほどの迫力だ。ギタリストがハーモニーをつけているのだが、実際、後にリードボーカルが脱退した後は彼がボーカルも兼ねたようだ。

さて、この曲はバラードの部類に入る静かな曲だが、やはりハーモニーが印象的だ。同じコードで始まり、似たコード進行でのメロディだが、最初のハーモニーはルートに対し3度と5度、サビは1度と3度でハモる。

後半に2度転調があり、これがまた効果的で面白い。1回目の転調は全体が1音上がるもので、盛り上げるためによく使われる手法でどうということはない。しかしこの転調の後すぐにまた転調する。

最初に聴いた時は、この2回目が転調なのかどうかも分からなかった。似たメロディでマイナースケールになったのかとも感じたし、転調かどうかすら分からず、どういうコード進行になったのか即座には分からなかった。 答えは単純。たんに元に戻っただけ。つまり全体が1音下がっただけだ。慣れない進行を目の当たりにすると、実にいい加減な推測をするものだ。
元のコード進行は「Bmadd9」 「G」 「D」 「A」。すると2回目の転調直前のコードは「B」で終わり、1音下がり「Bmadd9」に戻る。このためメジャーからマイナーへ変わったように感じたのだ。音で言うと最後の音が「D#音」と「F#音」のハーモニーだったのが、1音下がった出だしは「D音」と「F#音」で、「マイナー化」が強調された感じになる仕組みだ。凄い。
この2回目の転調がとても印象的だった。

この曲を気に入ったもう一つは歌詞だ。「何だろう?」と思わせる歌詞の出だしはとても好きだ。いきなりその世界に引き込まれるからだ。この曲の出だしは「I can see the future」だ。「えっ?」と思い、イキナリ聞き入ろうとしてしまう。

それからボーカルの低音も魅力的だ。何箇所かとても低い部分が出て来るのだが、ハイトーンを上手に出すボーカルは多いが、ディープな低い声は高い音に負けず魅力がある。意識してのことか分からないが、ハーモニーの部分でも低音が目立つようになっている気がする。

基本的にヴァースとサビの2パターンしかない曲で、しかもコード進行が似ており、転調を無視すれば4種類のコードしか出て来ないのだが、こんなにも美しい曲になるとはと驚く。

2004年1月20日火曜日

Rock Box

Run-D.M.C. [ J.Simmons/L.Smith/W.Waring/D.McDaniels ]

ラップである。私はラップ・ミュージックのファンではない。曲には核となるメロディがほしい。リズムとMCだけでは、音楽として聴くには少し寂しい。おまけにリズムは機械的で単調なものが多いのも難点だ。グルーヴがなさすぎる。ラップが好きな人の中には「このグルーヴが最高」と言っている人もいるが、少なくともリズムで最も重要なドラムにはグルーヴはないのを分かってほしい。

さて、批判をするためのコーナーではない。Run-D.M.C.は、ラップを世に送り出した多大な功績がある。もともとはラジオのDJが、かけている曲のリズムに合わせて曲紹介をしたりしていたものが始まりというが、言葉をリズムに乗せてメッセージを伝えるという手法はとても面白いし、当時としてはとても斬新なアプローチだったと思う。
しかし、それもラジオのDJだからカッコいいわけで、ライブ・ステージでそれだけを聴くとなると、ノリとメッセージを聴きに行くということになり、音楽というよりは演説を聞くのに近い気がしてしまう。まして、日本人にとって英語の遊びを聞き取るのは難しい。聞き取れない演説は最悪だ。

で、この曲「Rock Box」である。一言で、カッコいい!!
散々批判をしておいてこういうのも何だが、一発で気に入るカッコ良さだ。充分ロックしているし、ドラムも明らかに人間のノリだ。グルーヴがある。

気に入る理由は明確だ。歌詞ではない。対訳でも見ない限り、聞いて理解するのはとても無理だ。
それは、まず第一にバリバリのロック・ギターが入っていること。サウンドも良い。最初のソロはほとんどメタル系のソロだ。それで「おっ」と思わせておいて、シンプルながらとても印象的なリフに入る。それも太いサウンドのギターによる。ここにリズミックなラップが入るわけだが、メロディ不足はこの印象的なギター・リフがカバーしているので全く気にならない。それどころか、リズムのアクセントを強調するような2人のコンビネーションがカッコ良さを引き立たせている。


ラップが好きでないこの私を一発でKOするとは恐るべき曲だ。(笑)

2004年1月19日月曜日

Road To Nowhere

Ozzy Osbourne [ O.Osbourne/Z.Wylde/R.Castillo ]

何と、これがOzzyの初登場だ。もう何度も登場していてもおかしくないはずだが、とにかく初登場だ。Ozzyの初登場なら、本来はRandy Rhoadsの曲にしたいところだが、気分で決まるコーナーだけにこういう選曲になってしまった。

さて前置きはこのくらいにして「Road To Nowhere」である。1992年の大ヒットアルバム『No More Tears』に入っているゆったりとしたナンバーで、バラードというのは少し違うがノリノリの曲でもない。
ギタリスト探しの名人・Ozzyの曲は、そのギタリストの影響を受けているのがはっきり分かる曲が多い。初代・Randy Rhoadsの曲はクラシカル、2代目・Jake E. Leeの曲はL.A.メタル、そして3代目・Zakk Wyldeの曲であるこの曲はカントリーっぽさが出ている。これらにダークで破壊的な雰囲気とポップさのOzzy印を押すと出来上がりというわけだ。 この曲最大の魅力はZakk色であるカントリーっぽさだと思う。Zakkも他のギタリストに負けず、充分にテクニカルなギタリストだが、この曲は細かなテクニックを超越している。

私はよく一言で表わして「大陸ノリ」と表現している。コマゴマ・チョコマカしたものではなく、ドーンとゆったり、大きく構えた、正に大陸的なスケールのノリという意味だ。言葉で説明しても分からないだろうから、聴いてもらうしかないのだが。

静かなアルペジオのイントロに続いて登場するギターのメロディ。気持ちの良い伸びやかなフレーズで、特にスピードのある部分もないし、特殊なサウンドでもない。高度なテクニックも何も必要のないシンプルなものだが、これを弾くのは難しい。ビッグなドラムのリズムも重要だが、普通に弾くと退屈極まりない、とてもつまらないフレーズになってしまう。微妙なビブラートや音程、リズム感が重要で、そういう意味ではテクニカルと言えるが、とても単純そうに見えて、ここまで気持ちよく弾くのは至難の技だ。
広い大地とスカッと爽やかに抜けた青空を思い出させる。そしてこのフレーズの終わりと同時にピッキングの強弱でOzzyの歌の世界へと入り現実に戻る感覚。素晴らしい!

ギターソロもアドリブで気分重視で弾きつつも、基本は「大陸ノリ」。時にドラムのリズムと絡んだり、本当に楽しそうなのが聴くだけで分かる。最高級のソロだろう。

2004年1月12日月曜日

Money Honey

Elvis Presley [ J.Stone ]

ケーブルテレビのヒストリー・チャンネルで『ロック・ヒストリー』という番組が放送されている。毎週30分程度の番組なのだが、貴重な映像が見れたり、様々なアーティストが登場したりするので良い勉強になる。

その番組の本編の後に、10分程度のダイジェスト映像が流れるのだが、その一番手がこの曲なのだ。毎週聴いているせいか耳に残って仕方がない。2004年早々には番組は終了してしまい、現在は1980年代のMTVの話題なので、Presleyの時代とは全然違うのだが、80年代のポップ・ロックやラップを聴いた後にPresleyを聴くととてもカッコ良く聴こえる。私は80年代よりも、50年代や60年代の方が好みなのだろう。
ちなみに、そのダイジェスト映像はその後、Buddy Holly, Little Richard, Chuck Berry, Beatles, Stones, Bob Dylanと続く。なかなかオイシイ。

1950年代後期は、今から50年近くも前になるが、その映像での「Money Honey」はとてもクリアだ。音も映像も素晴らしく、Elvisの弾くアコースティックギターがとてもカッコいい。たんにコード弾きをしているだけなのだが、とてもシャープなのと、ボーカルのリズムとマッチしている。歌詞も無理矢理つめ込んだようなものではなく、音符に合っていて聴きやすくノリやすい。出だしは「You know, the landlord rang my front door bell. I let it ring for a long, long spell.」だが、「ユノザ、ラーン、ロー、ラン、マイ、(フ)ローン、ドー、ベー」のように、伸ばす音が目立っていて、とてもリズミックに聴こえるのだ。

単純な3コードの曲とバカにしてはいけない。やはり一時代を築いただけのことはある。サビの直前で演奏がブレイクした時のボーカル、つまり「And asked him to tell me whatユs on his mind.」の部分が最高にカッコいい。2箇所のシャックリ唱法が効果的で、続く「He said」が更にカッコ良く聴こえる。

2004年1月2日金曜日

Mother Nature's Son

Beatles [ J.Lennon/P.McCartney ]

昔から大好きな曲。大自然を感じさせる雄大な雰囲気が最高だ。
曲はPaulがアコースティックギター1本でたんたんと歌っている、とてもシンプルな曲だ。ギターも特に難しい箇所はないので、少し練習すれば誰でも弾けると思う。
とは言え、そこはBeatles、何の工夫もないような曲ではない。例えば、コードの「A」と「D」が入れ替わりに出て来る部分も、そのままのコードを弾いてもいまいちバラバラした感じで雰囲気が出ない。押さえ方を少しだけ工夫する必要があるかもしれない。
最も面白いのは、「テュテュテュ」の部分だろう。パッと聴くと気づかないが、よく聴くとギターとボーカルとでハーモニーになっている。最初のコードはたんなる「D」だが、ボーカルのメロディに合わせるように、1拍毎に「A音」「F#音」「G音」「A音」がトップの音として使われている。コード「D」からは外れる音も押さえ方を変えて使われている。

このボーカルとギターのハーモニー部に続いて、下降していくような部分も特に美しい。「D音」が半音ずつ下がって行って、「G」「Gm」「D」と続く。素晴らしい!思わず「Yeah」と言いたくなるが、Paulもここで言っている。

この後、アルペジオっぽい間奏になる。ここはギターが2本ないと出来ないが、やはり美しい。私はこの曲は一人でしか弾いたことがないため、アルペジオの方はコピーしたことがないが、2人ギターがいればこちらを弾いてみたくなるパートだ。
ちなみに、一昨年のPaulのライブではこの曲をPaulがギター1本で弾いた。間奏部はどのようになるのか注目していたら、全然別のコード進行で「Mother Nature's Son」を連呼するパートに変えていた。やはり間奏はギター2本で味が出るパートなので、一人ではやっても意味がないと判断したのだろう。

右上から聴ける私の演奏もその時のPaulのを参考にしている。