2004年1月22日木曜日

Colors

Saigon Kick [ J.Bieler ]

それほど有名でないフロリダのハードロック・バンド。東南アジアではそれなりに人気があったらしい。なぜこのバンドを知っているかというと、1991年のOzzy Osbourneのコンサートに前座として登場したからだ。 「あまり興味ないな」と思いつつも何となく聴いていたのだが、曲が進むにつれどんどん引き込まれ、この曲を演奏した時はすっかりお気に入りのバンドになっていた。
この時のOzzyの来日公演には2日連続で行ったのだが、2日目には前日が予習になっていたので、この曲を含め、ジックリと堪能することが出来た。
ライブから先に入るパターンはかなり珍しい。

このSaigon Kickというバンドだが、冒頭ではハードロック・バンドと書いたが、ジャンルを特定するのはなかなか難しい。クレイジーなメタル・ソングもあれば、この後流行するオルタナティヴのような曲もあり、かなりのポップ・チューンもある。Beatlesの影響も受けているであろう、印象的なコーラスワークも聴きどころだ。
トレードマークのボーカル・ハーモニーは、正にBeatlesのJohnとPaulばりで素晴らしい。ほとんどツイン・リードボーカルと言えるほどの迫力だ。ギタリストがハーモニーをつけているのだが、実際、後にリードボーカルが脱退した後は彼がボーカルも兼ねたようだ。

さて、この曲はバラードの部類に入る静かな曲だが、やはりハーモニーが印象的だ。同じコードで始まり、似たコード進行でのメロディだが、最初のハーモニーはルートに対し3度と5度、サビは1度と3度でハモる。

後半に2度転調があり、これがまた効果的で面白い。1回目の転調は全体が1音上がるもので、盛り上げるためによく使われる手法でどうということはない。しかしこの転調の後すぐにまた転調する。

最初に聴いた時は、この2回目が転調なのかどうかも分からなかった。似たメロディでマイナースケールになったのかとも感じたし、転調かどうかすら分からず、どういうコード進行になったのか即座には分からなかった。 答えは単純。たんに元に戻っただけ。つまり全体が1音下がっただけだ。慣れない進行を目の当たりにすると、実にいい加減な推測をするものだ。
元のコード進行は「Bmadd9」 「G」 「D」 「A」。すると2回目の転調直前のコードは「B」で終わり、1音下がり「Bmadd9」に戻る。このためメジャーからマイナーへ変わったように感じたのだ。音で言うと最後の音が「D#音」と「F#音」のハーモニーだったのが、1音下がった出だしは「D音」と「F#音」で、「マイナー化」が強調された感じになる仕組みだ。凄い。
この2回目の転調がとても印象的だった。

この曲を気に入ったもう一つは歌詞だ。「何だろう?」と思わせる歌詞の出だしはとても好きだ。いきなりその世界に引き込まれるからだ。この曲の出だしは「I can see the future」だ。「えっ?」と思い、イキナリ聞き入ろうとしてしまう。

それからボーカルの低音も魅力的だ。何箇所かとても低い部分が出て来るのだが、ハイトーンを上手に出すボーカルは多いが、ディープな低い声は高い音に負けず魅力がある。意識してのことか分からないが、ハーモニーの部分でも低音が目立つようになっている気がする。

基本的にヴァースとサビの2パターンしかない曲で、しかもコード進行が似ており、転調を無視すれば4種類のコードしか出て来ないのだが、こんなにも美しい曲になるとはと驚く。

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