2018年2月16日金曜日

あの娘はアトミック・ガール

ARB [ 岡部滋 ]

ARBの1985年のアルバム『砂丘1945年』収録曲。このアルバムでのARBのメインソングライターは斉藤光浩だが、この曲はベースの岡部滋の曲だ。

結構シンプルな曲だが、なぜか好きな曲だ。もともと気に入っていたが、特に好きになったキッカケは岡部滋がARBを脱退するラストツアーで演奏されたこと。1987年10月13日のライブを見たのだが、アンコールで岡部が登場し、自身の曲であるこの曲を演奏した。白浜のギターはフランジャーがずっと鳴っているような音でいまいちだったが、岡部の唸るベースはいつも以上にアグレッシヴで、アルバムにないフレーズがカッコ良く、大いにシビレたものだ。

曲はイントロが「G」「D」「Em」「C」の組み合わせで作られているリフ。
歌が入ってからは、「G」「DonF#」「Em」「D」「C」「Bm」「Am」「D」というベースが下降するパターン。この下降パターンは名曲には数多く出て来るパターンで、おいしいコード進行といえる。

次の部分が「C」「G」「B(7)」「Em」「C」「G」「B(7)」「Em」「C」「C」「D」「D」となる。この終わりの4小節を、ライブでの岡部はコードトーン+1音(「C」の場合は「ドミファソファミドミ/ファミドミファミドミ」と8分で弾いていた)でグイグイ弾いていた。最高にカッコ良かった。
サビの部分もベースが素晴らしく、恐らくベースで作ったなと思わせるもので、「Em」「C」「D」のコンビネーションで作られているパターン。
ギターソロのパートもバッキングの方がカッコ良い感じで岡部の味が出ている。

この曲のテーマはたんなるラブ・ソングかと思いきや、全然違う。「アトミック」がヒントになっているが、原爆の歌だ。爆弾を「あの娘」と女性に見立てている。原爆と思って聴くとラブ・ソングと思うよりも意味がよく通じる。さすが石橋凌だ。エンディングでギターがだんだん狂っていくあたりもソレっぽいし、その後ろで石橋は1回だけだが、ズバリ「アトミック・ボム!」と歌っている。

2018年2月13日火曜日

Mama I'm Coming Home

Ozzy Osbourne [ Ozzy Osbourne/Zakk Wylde/Lemmy Kilmister ]

Zakk の色が強く、あまり Ozzy らしくないが、メロディアスで少しだけ Beatles を感じさせるところは Ozzy っぽい。しかし、この Zakk のアメリカンの雰囲気が大好きだ。メタルの帝王とも呼ばれる Ozzy にカントリー・タッチのギター。まったく合わないと思いきや、カントリーと Black Sabbath が大好きという Zakk にかかれば見事に料理されるといったところ。

具体的に見ていくと、まずイントロの出だしのギターが Zakk 流カントリー・フレーズ。ボトルネックで演奏すればモロにカントリーになりそうだが、チョーキングを絡めた普通のフレーズだ。このフレーズ、Zakk のお気に入りのようで、ライブではギターソロの前のパートにも入れていたり、他の曲(例えば「I Don't Want To Change The World」等)でも使われている。
続いて「E」の中を3弦が下降していく印象的なフレーズ。1,2弦の開放をうまく使ったものだ。この次の「A」のコードで「add9」を使うのもカントリーっぽさがある。

ブリッジの部分は「C#m/A」「E」「C#m/A」「B」と来て、次は「A」と「E」を繰り返した後、「A/B」「Em/A」とつなぎ、サビのところ、「A/B」「C/D」「E」と、「C/D」のところでブ厚いハーモニーで一気に盛り上げる。

ギターソロもカントリー風だ。「C・D/E」のところも軽くカントリーっぽいが、エレキギターによる本編が素晴らしい。正に「大陸ノリ」のスケールの大きな演奏だ。チョーキングが大陸風。難しくないが、つい弾きたくなるフレーズだ。弾いていて実に気分が良い。ソロの一番最後の最後、カントリー風のシメは Eagles の「Hotel California」のソロに出て来る印象的なあのテクニックだ。1弦をチョーキングしたついでに2弦も一緒にチョーキングし(音は1弦だけ)、音程が上がったところで2弦の音を出すと、2弦は最初からチョーキングした状態で音が出るというもの。慣れないとちょっと難しい。

Zakk はソロでもこの曲をやっているので、結構気に入っているのだと思う。

2018年2月12日月曜日

Parisienne Walkways

Gary Moore [ Gary Moore/Phil Lynott ]

Gary Moore の1978年の『Back On The Streets』に入っている曲。エモーショナルで官能的なレスポールの音色が素晴らしい。

作詞は Thin Lizzy の盟友・Phil Lynott。 出だしの部分は

I remember Paris in '49.
The champs d'Elysees
Saint michel and old beaujolais wine

で、「'49年のパリを想い出す。シャンゼリゼ通り、サンミッシェル、そして年代物のボージョレワイン」という感じ。
明らかにフランス・パリの思い出という感じだが、実はまったく別のもう一つの意味がある。シャンゼリゼやボージョレーは目くらましだ。
Philの父はブラジル系黒人で、名前が Paris。歌詞に出て来るバリは、父親・パリスのことだ。この歌詞の後、 「そして想い出す君が僕のものだったあのパリの日々を。数枚の写真を見ると懐かしく想い出す。外のオープンカフェで過ごしたあの夏の日々を」
Phil は8月の生まれだ。父は Phil を見ることなく帰国し、Phil は父を知らないで育ち、実際に会ったのは20代後半だという。

曲を見ていこう。イントロは「Am」「Dm7」「FonG」「CM7」「FM7」「Bm7-5」「E7」「Am」という感じで、これが基本的な流れ。歌に入ると、「E7」のところから、「E」「A」「BmonA」「A」と変わる。
ギターのメロディが少し変わるところは、「Dm7」「FonG」「CM7」「FM7」「Bm7-5」「E」「Am」「F」「Am6」「A7」。
次のボーカルが入る部分も少し変わって、「Dm7」「FonG」「CM7」「FM7」「Bm7-5」までは一緒だが、「B7」「E」「F」「E7」と続く。全編泣きの展開だ。

出だしのギターのメロディが『Fly Me To The Moon』と似ている気がするが、太いレスポールの音が最高。ゆったりと伸びやかな中、たまに豪快な早弾きが入るところが格好良い。

2014年のソチ五輪でフィギュアスケート金メダルの羽生結弦がこの曲を使用した。注目すべきは、正規版ではなく1983年の『Live at the Marquee』のバージョン。これを選んだ理由はインストだからというのが理由だろうが、このライブ・バージョンは私も好きで、違うフレーズも出て来たりする素晴らしい演奏だ。

2018年2月9日金曜日

未完成交響曲

Franz Schubert [ Franz Schubert ]

『山河燃ゆ』つながり第3弾だが、これはあくまで個人的連想で、実際には何のつながりもないので悪しからず。
個人的に、この曲調がどうしても戦前・戦中の美しさと狂気が混在する雰囲気を感じてしまう。そして NHK 大河ドラマ『山河燃ゆ』の世界とリンクしてしまう。歪んだ時代背景と、精一杯生きぬく美しさとが狂おしいまでの破滅的美学となって胸に迫るのだ。

シューベルトの『交響曲第7番』は一般に『未完成交響曲 ロ短調』の方が通りが良い。1822年の作だが、細かいことは知らないし、曲の背景も知らない。
好きなのは第1楽章。劇的で狂気を感じさせる曲調、ダイナミクス、コード、そして繰り返される主題に涙が出てほどの感動を覚える。

出だしは重低音に静かに響く不気味なメロディ。これから始まるヘヴィな物語を暗示しているようだ。
そういえば基本リズムが3/4拍子なのも『山河燃ゆ』と共通している。

最初のダブルピッキング(ギターのテクニックの一つ)のようなリフは、早くも美しさと重々しさが同居する。その理由は「Bm」の中での「F音」の使い方にある。「C#音」の時のハモリに「F音」の時と「E音」の時がある。この半音階の使い方が不安定さを増幅させる。このリフだけで格好良が、これに主題が乗ってくる。時折入る和音が波乱含みの時代背景を思わせる。

「Bm」が何小節か続いた後、「D」「EmonG」「Aaug」「D」「F#7」と続く。「Aaug」のところは自信がないが、そう聴こえる。
更に2回目は「Bm」を4小節繰り返した後、「D」「Gm」「Em7」「F#7」と続いて行くのだが、「Gm」の時にも「A音」「C音」「E♭音」のディミニッシュのような和音から入って不安定さを増幅させる。

盛り上がりが絶頂に達した瞬間、突然ホルンだけのロングトーンが残る。闇の中からの一筋の光のように。「D音」だ。
そして2つ目の主題が流れる。キーは「G」に変わる。少し安心感のあるメロディだが、1回目を聴かせると2回目にすぐ狂おしいような展開に変わる。このあたりが狂気の時代を感じさせる部分だ。安心したと思うとすぐに狂気、静と動の対比ももの凄い。
「G」「D」「D」「G」「E」「E」「Am」「D」となる。3コードは「G」に対し「D」と「C」になるので、「E」はとても不安にさせる。この「E」が最高に格好良い。

そしてイキナリ「Adim onC」が響く。先ほどのホルンのロングトーンとは一転し、暗くヘヴィなブレイクがある。そして狂気の劇的な展開の連続。
その中で2つ目の主題が聴こえてくる中、今度は美しい展開をみせる。狂気から美へ。 すると再び最初に戻り、何も変わっていないことを思い知らされる。まったく凄い展開だ。

2018年2月8日木曜日

これぞマドロスの恋

奥田良三 [ Werner Richard Heymann / 葉巻逸雄 ]

NHK 大河ドラマ『山河燃ゆ』つながりで思い出した曲。ドラマの中で使用されていて、なかなか良い感じを出している。酒場(喫茶店だが)で仲間同士肩を組み、自分たちのテーマソングだと言って歌うシーンがある。 元々はドイツの映画『狂乱のマンテ・カルロ』の主題歌で、1931年に流行ったらしい。「マドロス」とは船乗りのこと。当然歌詞もドイツ語だが、日本詞のものしか知らない。日本語版も1934年にヒットしている。

これぞマドロスの恋
錨はくわせぬ俺の胸
めぐる港々に
花は咲く薔薇は咲く

甘い夢の一夜
明けりゃ『おさらば』よ
これぞマドロスの恋
俺の誠は流れる風と波

日本版は勇ましい行進曲調。長いイントロ(歌なしのメロディつき伴奏?のみで1回フルで通すところが凄い)の後、歌になる。当時の歌唱スタイルそのまま、歌い上げ型だが、案外自信満々でロマンチストな水兵さんのイメージにあっているし、そもそも男なんてそんなものという感じなのだろう。

シンプルな3コードの曲で、「G」「G」「C」「G」「G」「G」「C/D」「G」で、サビのところからは、「C」「G]「C」「G」「G」「C」「C/D」「G」という感じ。「C」から「D」へ行くところが少しらしさを感じさせる。サビの「C」のところから、一気にコードトーンを上るところが良い。

2018年2月7日水曜日

山河燃ゆ

NHK交響楽団 [ 林光 ]

1984年の NHK 大河ドラマ『山河燃ゆ』の主題曲。戦前・戦中・戦後の難しい時代を日系二世という更に難しい立場の主人公が生き抜き、恋や苦悩とともに歪んだ時代背景をも描いた文字通り大作のドラマ。見応え充分で劇的な展開は今でも楽しめる。
主役は松本幸四郎(当時)で、他に西田敏行、沢田研二といった豪華な出演者だが、特に大原麗子と三船敏郎が魅力的で印象に残った。

さて、音楽だが、このOPテーマ曲、バックの映像は1983年、インドネシアでの皆既日食のシーンで挟まれた、荒野に延々とつながる道を走りながら、走馬灯のように本物の写真が流れるといったもの。ドラマのイメージピッタリ。この広いだけの荒野の大地にも様々な生活の泣き笑いがあっただろうし、しかし時代は荒れているし、でも最後には日食も終わり、光が見えて来る・・・。

ドラマチックなファンファーレで幕を開ける曲は、すぐに主題が提示される。重々しさはそのまま時代の雰囲気を表わしている。
「Em」で続く中、更に緊張感を高める「F」が入り、展開するところは「Em」から「B♭」「Em」「C」「Am」「D」「G」と移り、次のパートへと入る。
このおだやかなパートは日々の楽しく懐かしい生活を表わしているのか。こんな時代でも、当然日々の生活があり、愛すべき家族や友人たちがいる。「G」「G」「C」「C」「G」「G」「D」「D」の部分だ。
しかしこの優しい感じの安定感が次第に歪んでいく。「G」から「D」「E♭dim」そして「Em」へ戻る。現実に引き戻されたかのようだ。

この曲を聴くと、どういうわけかシューベルトの『未完成』を連想してしまう。このあたり、近いうちに取り上げたいと思う。

2018年2月4日日曜日

Roudabaut

YES [ Steve Howe/Jon Anderson ]

70年代のプログレシヴロックバンド・YES の代表曲だ。8分以上ある大作で、演奏も歌詞も大変聴き所の多い曲。

「Roudabaut」とはロータリーになっている交差点のことだが、それに人間関係や大自然と重ね合わせる、難解ながら奥が深く味わいのある歌詞なのだが、今回は曲の方にスポットを当てるので、歌詞の話しはこれでオシマイ。

バンドの編成がギター、ベース、ドラムにキーボードで、全パート共テクニカルで手数の多いプレーヤーなので聴き所満載。もちろんボーカル&ハーモニーもなかなか。

まずイントロだが、アコースティック・ギターの静かな雰囲気から邪悪なキーボードが絡むワクワクするような出だし。「何が起こるのだろう」と感じさせる。リズム・インすると、手数の多いベースが入って来て、キーボードのリフとアコースティック・ギターのハーモニクス連発。難しいプレイではないが実に考えてある。
その後のパートで出て来るエレキ・ギターとの兼ね合いもそれぞれの良さを出していてなかなか。

高い声質のボーカル・Jon Anderson は複雑なバックに乗せてシンプルで分かりやすいメロディを歌う曲が多い。このあたりがYESの人気の秘密だろうと思う。この曲も同様で、目まぐるしく変化する曲調とは裏腹に、ボーカルラインは分かりやすい。

静かな中間部。イントロ同様のアコースティック・ギターが中心だが、その後ろでキーボードのコードトーン超早弾きがある。シーケンサーのような雰囲気だが、この時代は指弾きだ。
そしてこの部分が終わると一転して激しいキーボードのソロ。そしてギターへ受け継がれ、盛り上がった後に最初に戻る。
エンディングで聴けるのはボーカルのハーモニー。このハーモニーも YES の武器で、特にベースの Chris Squire が特徴ある要で、2015年に亡くなってしまったのが実に惜しい。

この曲、私はキーボード・レスのバンドで是非やってみたかった曲だ。演奏していて楽しい曲だが、最大の楽しみはキーボード・ソロのところ。かっ飛んだソロを弾いてみたかった。

2018年2月2日金曜日

夕焼けとんび

三橋美智也 [ 吉田矢健治/矢野亮 ]

1958年の曲だそうだ。演歌を好まない私だが、生まれる前の時代の演歌や民謡は古き日本の良さを表わしている気がするので例外だ。(最も演歌全般そんな感じだが)この曲を知ったのは中学時代に好きだったヤツがいてその影響だが、まさに古き日本の良さが分かるような曲。そもそも夕焼けやとんびを題材にした素朴な風景を歌っているなんて、アメリカで言えばカントリーやブルーズだ。
大空を舞うとんびに家族(兄)を想う心を託すような内容。果てなき想いと優しさがミックスしているような歌詞に、思わずホロッとする。最後は帰ると約束した兄が祭りの時期にも帰って来ずに「バカっちょ」と呼ぶあたりもかわいらしい。

曲も少し触れておくと、コード進行は、「A」「D」「A」「E7」「D」「A」と来て、「そこから東京が~」の部分が、「A」「E7」「A」「A」「E/D」「D」「A/D」「A」「A」「E7/A」という感じ。

基本的にはまんま3コードの曲になるが、サビ(?)の部分などは、ブルーズなんかと比べるとちょっと独特な進み方をする。これが演歌ということか。(演歌の知識は皆無なのでよく分からない)

「D」の持つ意味合いが独特だなと感じるが、そのあたりを解説してくれる人がいたら勉強になるのだが・・・。

2018年2月1日木曜日

CARNAVAL

大貫妙子 [ 大貫妙子 ]

大貫妙子という人をよくは知らないのだが、曲を聴けば才能ある音楽の人だなというのはすぐに分かる。このタイプの音楽人間には憧れる。自分以上の才能を持った人には敬意を表するが、その反面悔しくもある。もちろんよく訓練と努力が成す結果なので、嫉妬するのは筋違いなのだが。

この曲は YMO のメンバーが参加して制作されたもので、モロに当時の雰囲気を感じさせる曲だ。

曲は不思議な雰囲気を持つコード進行で、途中の転調のようなところから浮遊感を感じさせる展開になる。(調がよく分からないと浮遊する感じになる)

Aメロの頭からのコードは、「Cm/B♭」「A♭/B♭」「A♭M7」「B♭」「Cm/B♭」「A♭/B♭」「A♭M7」「B♭」「Dm」「DmonC」「B♭M7」「G」「Gm」「C」「Dm」と続く。
それにしても、「Dm」のところや「G」のところ、決して予測できないし、特に「G」が凄い。そしてその次ですぐに「Gm」に戻す。このあたりのセンスに脱帽という感じ。素晴らしい。
「Dm」のところから転調していることになるが、またイントロの進行を挟んで「Cm」に戻る。

同じJポップでも音楽的な刺激が強いこの手の、捻りに捻りました的な曲は音楽のパズルのようで聴いていて楽しい。