2018年8月26日日曜日

Slip Of The Tongue

Whitesnake [ D.Coverdale/A.Vandenberg ]

まずキーボードのイントロ。低い「B音」が鳴る中、ファンファーレ的に「B/D」「A/E」が入って来る。
ギターとベースが入ってからは一番下が「F#m」になり、「ConG」「Dsus4」「DonA」を経て本編へ。
まずメイン・リフだが、コードで表すなら「Em/A」「G」であろうか。「Em」のところは「Em」と「D」、「A」のところは「Asus4」と「A」、「G」も同様で、後2拍はスウィープ・ピッキングで5フレットと7フレットのハーモニクス音を4音ずつ上がって下がる素早いプレイ。こういうのはSteve Vaiの専売特許かと思っていたが、Adrianも普通に弾いているので、ひょっとするとAdrianのデモからあったものかもしれない。この程度のスウィープはAdrianも得意にしている。
歌が入ってからは「Bm」と「F#m」で出来ているような部分が続いた後、「Anytime, anyplace?」の部分は「Em」「G」「A」「C/D」のように少し動く。

少し雰囲気が変わるのはソロの部分。ここだけいきなりVai ワールドのよう。
「F#m」「BonF#」「DonF#」「EonC#」を繰り返し、「F#」「EonF#」「F#」「EonF#」「DonF#」「EonF#」「F#」「G#onF#」「G#onF#」、そして「E」で戻る。最後の「E」は前作の「Still Of The Night」にも通じるような休符とシンプルな音使いのコンビネーションだ。

Vaiは技巧派らしい音使いやリズムの取り方で、やたらと音を詰め込むYngwie・タイプではなく、理路整然とした譜割りになっている。例えば終盤には、この早いテンポの曲の中、3連符をキッチリとした16分音符で弾いている部分がある。リズムがズレていくようで面白いが弾くのは大変だ。
Adrianの曲でありながら、全編に渡ってVai ワールドになっているのは、ブチ壊しとも言えるし、さすがとも言える。

2018年8月25日土曜日

I Am The Walrus

The Beatles [ J.Lennon/P.McCartney ]

サイケデリック時代の代表のような曲だ。そして Beatles でもトップクラスのカッコ良さを誇ると思う曲だ。どこか不気味さ、不安定さを感じさせるようなところがある。
曲名からして『不思議の国のアリス』の世界だし、「Walrus(セイウチ)」なんて滅多に題材に挙がる物ではないし、タイトルからして「私はセイウチ」とは強烈だ。曲中に出て来る「egg man」は「ハンプティ・ダンプティ」のことだろうか。

この曲はギターが入っていない。その代わりのメインはキーボード。少し歪んだ音のエレピ。
「B」で始まって、チェロ等と一緒になる2小節目から「B/A」「G/F」「E」「E7」「D」「D7」となる。よく聴くと「G」や「F」の時の2拍目に変な音が混じっていて、5度の音が半音や1音上げているようだ。意図はよく分からないが、不気味さ、不安定さを出す狙いかもしれない。
ヴォーカルが入ってからは「A/AonG」「C/D」「A/AonG」「C」「D」「A」のような進行になる。次のパートは「A/AonG」「D9onF#/F・G」「A/AonG」「F」「B」「B」「C」「D」「E」だ。シンプルなのに奇想天外な響きが不思議だ。

この曲はチェロを中心にしたストリングスが重要で、曲の印象を決定づけるような存在感がある。オブリガード的に色々なオカズが入っていて、これがまたカッコいいし、サイケっぽい感じを出していると思う。

エンディングは「A」「G」「F」「E」「D」「C」「B」と順番にどんどん下がっていく。これの繰り返し。その中でストリングスは高い「ラ」「シ」「ド」のようにどんどん上がっていく。これもサイケな感じ。

歌詞がまた面白くて、出だしから「I am he」as「you are he」as「you are me」and「we are all together」だ。奇想天外だ。全編こんな感じで続いていく。 「ググーグジュー」というセイウチの鳴きまね(?)も印象的で面白い。

2018年8月24日金曜日

It's All Right

Red Warriours [ Red Warriours ]

名盤『King's』の最後を飾る、まさかのウクレレ・ナンバー。しかしこのバンドによく似合う。
グラマラスでゴージャスなロック・ナンバーがある反面、こういうチープで軽薄そうな曲がまた最高なのだ。
ライブでもステージにユカイがウクレレを抱え、ドラムはスネア1個にシンバルだけでブラシで演奏する姿はカッコいい。

「あれはまだ3年前の話しさ」で始まる歌詞も良い。本当に3年前の「真冬のボロアパートに俺たち初めて集まったのさ」ということだ。
たった3年のサクセス・ストーリー。まさにロックンロール・ドリームの体現だ。
「レンガ通りの坂の上にある柱が邪魔なあのクラブ」というのは渋谷のライブハウス・ Lamama のことだ。ステージのちょっと前に本当に邪魔な柱があるので有名だった。

最後は「まだまだ先は長そうだぜ」で「to be continued」的に終わるのだが、解散ライブの時だけは「これで本当にお終いだぜ」に変わっていて涙を誘ったものだ。

曲構成はシンプルで、ウクレレだけになったり、他の楽器と合わせたり、ギター・ソロになったりと色々だが、コード進行は次の通り。
「D/B7」「E7/A7」「D7/G7」「E7/A7」「D/F#7」「G/Gm」「D/B7」「E7/A7」を繰り返す。7thの連発はいかにもウクレレっぽくて良い。

軽いウクレレの音に対すると、アコースティック・ギターは音色が太くて伸びやかで重厚に聴こえる。また後半にカズーのソロ(?)があって楽しい。
あくまでアンプラグド(ベースを除く)にこだわった編成だ。

ちなみにイントロ前のカウントはドイツ語での「1,2,3,4(eins, zwei, drei, vier)」だ。

2018年8月23日木曜日

You Can't Always Get What You Want

Rolling Stones [ M.Jagger/K.Richards ]

Rolling Stones の曲の中でもトップクラスの好きな曲だ。荘厳なコーラスが入っていたりして、ルーズな感じの Stones との対比が面白い。
曲構成は超シンプルで、イントロからずっと「C」と「F」を繰り返すだけ。忘れた頃に「D」が一瞬出て来る。これで名曲を作ってしまうのだから、複雑な曲を作るよりもずっと難しいことのように思うが、彼らには簡単なことなのかもしれない。
ゆったりとした牧歌的な雰囲気から始まるが、途中はノリがよくなり、劇的な感じさえするパートもあって、私からすればまるで魔法のような曲だ。

もう少し詳細に見ていくと、まずはアコースティック・ギターのイントロ。「C」と「F」だけだが、「C」の時は「add9」的な音がハッキリ聴こえる。私が弾くならバレー・コードの「C」の、5弦から1弦に向かって3F、5F、5F、3F、3Fのコードと、普通の「C」、つまり3F、5F、5F、5F、3Fを交互に弾く感じでプレイする。Stones はオープン・コードでやっているのではないかと思うが、詳しくは知らない。3F、2F、0F、1F、0Fで弾くと「add9」っぽく弾けない。

あとはリズムの問題だ。リズム・プレイだけで様々な展開を感じさせるのが凄い。16ビートもカッコいい。

ヴォーカルも出だしは語りかけるような感じで説得するみたいな感じだが、ノリノリになったり、叫んで激しく訴えたり、ライブでは挑発したり、エロい感じになったりと様々な表情を見せる。

最高にカッコいいのはピアノで、少しだけ出て来る「D」の部分。高い「D音」から8分音符で降りて来るだけだが、とてもカッコいいし、最初はどう弾いているか分からなかった。というか最初の「D音」以外はデタラメに弾いているのかと思ったほどだ。
実際は「レ(D音)」「ドレ(順番に弾くのではなく同時に弾く)」「シレ」「ラレ」「ソレ」「ファ#レ」「ソレ」「ラレ」の8音と、次の「Fコード」の時に「ファ」「ミファ」「レファ」「ドファ」「シ♭ファ」「ラファ」「ソ♭ファ」「ドファ」の8音。特に「Fコード」の時の2音目の刺激が良い。どうというプレイでもないだが、とにかく好きだ。

2018年8月21日火曜日

1/2

川本真琴 [ 川本真琴 ]

この曲をレズの歌だという説もあるらしいが、どういう解釈をしているのだろう?「神様は何も禁止なんかしていない」で禁断の愛を連想し、「男の子になりたかった」という部分で両方女なのか?ということになるのかもしれないが、もうちょっと歌詞を読めば、ストレートな愛の歌だということは明らかだ。

この曲を聴いて最初の印象は「早口で詰め込み型の歌詞だな」というもので、その反動で「愛してる」連発の部分がとても印象的だ。そのうちに数回聴いているとだんだん歌詞が理解出来てきて、全編情熱的なラブソングだということが分かる。
歌詞の表現も独特で、「境界線みたいな体がじゃまだね」「半径3m以内の世界で」のようなものは、一瞬「ん?」となるが、すぐに「ああ」と納得する面白さがある。

音楽は、まずイントロでギターのカッティングから始まる。カッコいいロック・ソングかと思わせるもので、「E9(5弦→2弦に順に7,6,7,7F)」と「E7(2弦のみ9Fにする)」とちょっとしたオカズで出来ている。

続いて登場する彼女のヴォーカルだが、アイドル系かと思わせる雰囲気があるのに、聴けば聴くほど上手い。まずリズムが素晴らしいから歌だけでノレる。それに楽しい。例えば「唇と唇 瞳と瞳と手と手」の部分の最初のアクセントになっている「くぅ」の部分など、思わず一緒に歌いたくなるし、歌えると嬉しくなる。

これだけリズムよく歌うのはとても難しいし、最近は機械のように歌うのが流行り(?)みたいだが、このように歌えると歌っている方も聴いている方も楽しいものだ。
それから歌の表情が豊かだ。一番分かるのは2回目の「愛してる」のところで、それぞれに表情が違う(特に3回目)。恐らくレコーディング中に歌いながら感情移入してのものだろう。

曲を見ていくと、コード進行も結構ヒネってある。歌の最初から下降するパターンだが、人気曲によくあるパターンと同じにならないように工夫してある。「E」「EonD#」「EonD」「A」「AM7」「D7」「C#m7」「F#7」となる。ヴォーカルラインも半音上がっていくような感じになっていて面白い。これをもう一度繰り返した後の早口で畳み掛けるような部分は「C7」「D7」「E」「E」「C7」「D7」「AM7」「A7」「F#7」「G#7」。この曲に限らずだが、キーが「E」の曲での「C」の使い方が好きだ。「AM7」「A7」のところも面白い。
で、サビ。出だしと似ているが少し違う。「E」「EonD#」「EonD」「EonD」「A」「A」「F#7」「G#7」となり、「E」「EonD#」「EonD」「AM7」「A7」「G#7」「F#7」「C7」となってイントロの「E7」に戻る。また「AM7」「A7」が出て来て、この部分のベースがカッコいい。

全体的にすごく音楽的レベルが高い人が作ったんなという印象。素晴らしい。