2005年9月10日土曜日

欲望のドア

Red Warriors [ T.Kogure/D.Yukai ]

ずっと昔好きだったバンドだが、久しぶりに聴いた。この曲は特別好きだったというほどでもないのだが、改めて聴くと最高にカッコいい。

普段、曲を聴く時は曲:歌詞が9:1くらいの割合で聴いているので、この曲も何を歌っているのかまったく知らなかったが、歌詞が素晴らしいことに気がついた。
「素晴らしい」と言っても、崇高な内容というのでも、雄弁な詩人のようなものでもない。これはロックだ。「ロックの歌詞とはこうあるべき」という雰囲気を持っている。下品で生意気でバカっぽくて、でもよく聞くと結構奥が深そうで知的にも感じて来る。しかもグラマラスだ。演奏も含め、こういう雰囲気を感じさせる曲こそロックのカッコ良さだと思っている。

「平和の奴隷たちよ」「俺に魂の賄賂をあけ渡せば何でも出来るようにしてやる」ということだが、要するに普段の生活のしがらみを忘れ、ストレスを発散させてロックしよう、ということだと思う。
ロックに浸れば無限のイマジネーションが得られて空も飛べるし、悪魔的だとか背教者だと言われても構わないという気分になる。そういえばRed Warriorsの曲はそういうノリの曲が多い。

曲はかなりポップだ。特に「Let's go to the Sky」の部分などはポップスそのものだ。だが、Yukaiが見事に下品に歌ってくれる。しかも間髪入れずディレイのようなコーラスワークで更に2回繰り替えし品のなさを強調する。このボーカルだけでロックになるのだ。素晴らしい!

音楽的な部分にも触れておこう。コード進行はかなりシンプルだ。まずは「A」 「A7」 「D」 「Dm」だ。「D」から「Dm」にいくところは少しポイントだが、珍しいというほどではない。

サビの部分は「A」 「AonG#」 「AonG」 「D」 「F」 「A」 「B7」 「E7」となる。最初の4つは「A」からベース音だけ半音ずつ下降するポップスで多様されるパターン。当然のように下がるベースに対しメロディは上がっていく。しかも歌詞まで「Let's go to the Sky」だ。
ポイントは「F」のところで、それまではAメジャー・スケール上のメロディだから「F#音」が含まれるが、ここではコードトーンの「F音」が使用される。少しだけ転調したような雰囲気になる。更にその後の「B7」の場所でもコードトーンの「E♭音」が使用される。「A」の時は「E音」だし、この後の「E7」でも当然「E音」で終わる。半音違いのマジックだ。

「さすがプロ!」と思うわせるのはこの後の「平和の奴隷たちよ」の部分だ。なぜか少しだけマイナー調になった雰囲気がある。 4拍全部がアクセントになっている部分だが、コード的には「F」 「G」 「A」と平凡な並びだ。このコードに乗っているメロディもシンプルで、1拍毎に「(ミ)ファミレド」「シラシシ」「ド#」だ。分析すれば、すべてコードに合わせ、Fメジャースケール、Gメジャースケール、Aメジャースケール上の音だ。しかし最初の2小節はCメジャースケールと同じでもある。2つのスケールから音を上手にチョイスしCメジャースケールにしている。
そしてCメジャースケールはAmスケールと同一だ。つまり、曲のキーが「A」なのに、ここだけはAmスケールが登場することになるのだ。だからメジャーコードしか出て来ないのにマイナー調になった気がするのだ。「F」と「G」を「C」に対するサブドミナント、ドミナントと考えるべきかもしれないが、いずれにしろミソはコード「F」でキーが「C」になったようなパートだ。
つまらなくなりそうなパートを最高のパートに変えてしまう。16でスネアを入れるドラムも含めて素晴らしいパートだ。

2005年8月29日月曜日

世界はそれを愛と呼ぶんだぜ

サンボマスター [ 山口隆 ]

素晴らしい!一発でお気に入り!聴いた瞬間に「最高!」というのは本当に久しぶりだ。カッコ良すぎる!1回聴いて好きになり、10回聴いても100回聴いても飽きない。

きっかけはモチロン『電車男』。2ちゃんねるも利用しないし、本や映画も興味がなかったが、たまたまあいた時間にTVのチャンネルを回していたら綺麗な女性(伊東美咲)が出ていたので偶然みたのが初体験。「エルメスたん」と言っていたし、モロオタッキー系の情けない男(伊藤淳史)が出ていたからこれが「電車男か~」とすぐに分かった。
オタクを略称「ヲタ」と言うんだとか、4歳の息子が気に入って見ている『ケロロ軍曹』が出て来て、ヲタに評価されているのが分かったりでストーリー以外が面白い。ケロロ自体がヲタッキーだなと思っていたが、その他、阪神ファンがいたり、マチルダさんが出て来たり、「ああ、ヲタとはこういう世界か」と半分くらいは分かったつもり。最近は秋葉原(学生時代からアキバと呼んでいたのでアキバ系というと電気屋系かと思ってしまうが)が聖地になっているんだとか・・・。 くだらないと思いつつも見ているとエンデイングのテーマ曲がこの曲だった!(ちなみにオープニングは ELO の「Twilight」これも良い!)

演奏はサンボマスター。かなり個性的な太ったボーカル&ギター。見た目がカッコいいバンドは多いがどれも似ていて覚えられない。しかしこれならバッチリだ! ブレインもこのボーカル&ギターらしいが、彼も音楽ヲタっぽいな。でも天才肌だ。素晴らしい!
サンボというと、エンリヤエンコ・ヒョードルを思い出す。ヒョードルはPride王者で、確かサンボ出身だったと思う。ロシアの柔術の名前だ。バンドと何の関係があるのかは分からないし関係ないかもしれない。

何が気に入ったかって、全て気に入った。まず最初に耳に入るのはリズム。16ノリのカッティングが最高にカッコいい。ドラム最高! ポップス系の曲はあまりにも単純すぎるリズムが延々と続き、それだけで飽きてしまうのだが、こういうリズムを使うだけで「本物のミュージシャンだな」と思ってしまう。ポップスではなくロックなバンドであることがすぐに分かる。ギターやドラムのリズムだけでもう最高!

続いてコード進行。最初は「A」だが、次のコードで「ん?」と気になる。すぐにどんなコードか想像が出来なかったのは久しぶり。こういう知的好奇心をくすぐる部分は重要だ。すべて分かってしまってはつまらない。楽器を持って来て調べてみる。テレビの音だけで判断しているせいか、いま一つ分からないが「D#dim」か「D#9」だろうと思う。 カッコいいリズムに乗ってバカ騒ぎ、それでいて知的なコード進行。最高のコンビネーションだ!
コード進行は、「A」「D#dim」「DM7」「Bm7」「Bm7onE」と来て、「A」「D#dim」 「DM7」「Bm7」「C#m7」「Bm7」「D」 「A」となる。 「DM7」のところはベース音が「C#」で、他の音がいまいち聞き取れない。 ブリッジが、「Bm7」「C#m7」「D」「A」で2回目の最後が「E7」に。 サビは、「A」「D#dim」「DM7/D#m7(-5)」「C#m7」「Bm7」「Bm7onE」と来て、「A」「D#dim」「DM7/D#m7(-5)」「C#m7」「Bm7」「C#m7」「DM7」「E7」「A」となる。「D」「D#」「C#」あたりの半音のところが天才的。
ベースが印象的で、そのベース・ラインを聴き取った上で適当なコードを考えただけだから間違っているかもしれない。近いうちにCDを買ってみようかなと考えている。

エンディングの「世界はそれを愛と呼ぶんだぜぇぇ」という叫びで『ケロロ軍曹』の曲との共通点を感じた。「頭からっぽでも・・・」というアレ。

2005年3月31日木曜日

Boku No Atama

Paul Gilbert [ P.Gilbert ]

Paul Gilbert といえば、泣く子も黙る早弾きギタリスト。難解な超高速フレーズをやすやすと弾いてしまう凄腕で、90年代には人気バンド Mr.Big で活躍、現在はソロで精力的に活動している。

その彼のニューアルバムの中の1曲がこれである。最初は Beatles のカバー「It's All Too Much」に興味がいっていたが、しかし「Boku No Atama」である。もちろん日本語の「僕の頭」の意で、歌詞も全部日本語。

以前、一時的に駒込や烏山に住んでいたくらいの日本好きで、寿司と焼そばと Puffy が好きで、Mr.Big の初来日時にはガクラン風の衣装を着たりする彼とはいえ、日本語とは! 日本語を勉強しているという噂はあったが、日本語スクールにまで通っていたとは・・・!

そのスクールで、「このギターは木で出来ています」「あなたの靴は何で出来ていますか?」というフレーズを習ったらしい。それを早速曲にしようというのが凄い。
そこで考えたのが「僕の家族は変な人で出来ています」というもので、しかし日本語として少し変だと指摘を受けたらしい。英語ならありそうなフレーズだが、確かに日本語では「出来ています」がおかしい。家族だから「構成されています」とか、「変な人たちです」と変えてしまわなければならない。
それで次に考えたのがこの「僕の頭はトマトで出来ています」だったという。

さすがに頭がトマトで出来ている人は考えることが違う。
トマトで出来ているという発想が凄いのではない。彼にとって未知の言葉の響きをすぐにメロディにしてしまうところが凄い。
彼のメロディに乗ったこの言葉は「僕の頭は~、トマト~で、出来ている」と、伸ばすところが実に自然だ。明治・大正の頃の作詞・作曲家は言葉の切れ目でフレーズが区切られるように気をつけていたというが、まさにソレだ。実に言葉がよく乗っていて聞き取りやすい。英語っぽいリズムに憧れる今風の日本語ポップスとはまったく逆の手法だ。日本語に慣れていない者ならではなのだ。

「でもトマトの方が、ナスより好きだよ」の接続詞「でも」が間違いではないかなどという些細な指摘は野暮だ。
それより、サビのハーモニー部「あなたの頭は何で出来てるか?」の Beatles チックな部分を聞いてほしい。重厚なハーモニーのせいでゴージャスになり日本語の曲っぽくない。考えてみれば日本のポップスはたいてい2声で3度のハモりだ。欧米はキリスト教の音楽の本場だから重厚なハーモニーが得意で、そのあたりも日本の曲と違う印象になる要因なのだろう。

このハーモニー部などは Paul がスクールで習ったフレーズそのまんまだ。最初の「僕の頭は~」の部分も習ったフレーズそのまんまなので、結局 Paul のオリジナルは「でもトマトの方が~」の部分だけということになる。

2005年2月26日土曜日

Jupiter

平原綾香 [ G.Holst/吉元由美 ]

「ジュピター」とは「木星」のこと。宇宙をテーマにしているだけあって何て美しい曲だろう。とても壮大なイメージの曲だ。
歌詞も相まって「Everday I listen to may heart ひとりじゃない この宇宙(そら)の御胸(みむね)に抱かれて」なんて歌っている。宇宙のような壮大なテーマを持つと宗教的な雰囲気が漂う。神も宇宙も圧倒的な存在だからだろう。

ところでこの曲、作曲が「G.Holst」となっているところからも分かるが、あの有名な組曲『惑星』の中の『Jupiter, the Bringer of Jollity』のメロディを拝借して作られている。聴いた瞬間に気が付く人も多いのではないだろうか。壮大なイメージはこのホルストの作によるところが大きい。と同時に、編曲者の坂本昌之も作曲者に近い活躍をしたといえるだろう。
この組曲『惑星』には冥王星が出て来ない。冥王星が発見されたのが、確か1930年代前半で、それから数年後にホルストは死去していたと記憶している。それから50年経ったため、著作権が消滅し、こうやって使用することが出来るようになったわけだ。こんな話しをすると、せっかくの壮大で神秘的な雰囲気がブチ壊しになってしまうが。

ちなみに組曲『惑星』の中では、個人的にはこの『木星』と並んで『火星』が好きだ。こちらもとても有名な曲なので機会があったら聴いてみてほしい。

少し曲を見てみる。テレビで聴いただけなので、キーが分からない。「D♭」だろうか? 変なキーなので「C」か「D」かもしれない。とりあえず「C」で考える。
「F」 「G」 「ConE」 「F」 「G」 「Am」 「AmonG」 「F」 「G」 「ConE」 「C」 「F」 「G」 「C」といった感じ。この次が好きだ。「ConE」 「G」 「Am」 「GonB」 「ConE」 「G」 「C」 「F」 「FM7」 「Dm7」 「Am」 「G」 「F」 「ConE」 「Dm7」 「C」 「Dm7onF」 「Dm」 「C」 「GonB」 「GonA」 と続く。
目立つのはオン・コードだ。コード進行に対してベース音が美しいということだ。特にコード・トーンの3度の音を使う場合が多いようだ。1・3・5度の中では3度が一番落ち着かない。しかしコードの長短を決める音でもあるから特長が強調されて美しさと神秘さが増すのかもしれない。
この他にもなかなかのコード進行があるのだが、コードネームだらけになってしまう恐れがあるのでこのくらいにしておく。

この曲を歌った平原綾香というアーティストを見たのもテレビで、紅白歌合戦にも出た。出だしの低音から最高音までかなり音程差がある曲で、何となく声楽っぽい雰囲気を感じていたら、やはり音楽系の大学出身なのだそうだ。声楽の勉強をしていたのかどうかは知らないが、どこか素人っぽさもあるのがかえって親しみを覚える。

2005年1月28日金曜日

Romantic Rights

Death From Above 1979 [ J.F.Keeler/S.Grainger ]

今日、初めて聴いたバンドだ。2002年にミニアルバムを出しているようだが、実質のデビューは昨年という新しいバンドだ。気に入ったのも新しくて面白いと思えたからだ。だんだん新しいものは耳に入らなくなりつつあるが、面白いものは面白い。

このバンド、何とギター・レスだ。キーボードもいない。何とベースとドラムだけというから、変なバンドだ。しかしそう紹介されただけで「えーっ、一体、どんな曲をやるの?どんな演奏になるの?」と考えるが、それだけで第一印象を与えていることになる。

最初はギターかキーボードのサンプリングかと思うような野太いベース音だ。(イントロはギターのサンプリングだろう)
歪ませてかなり高い倍音を含んだ音作りだ。
ギターがいないのだから、ある程度ギターの音域もカバーしなくてはということなのだろうが、とにかく抜群の存在感だ。メロディ楽器が他にないのだから存在感があるのは当然だが、それに拍車をかけるサウンド。

ドラムはひたすら16ビート。ほとんどバカの一つ覚えのようにハイハットを刻む。そしてベースがリフを繰り返す。これは病みつきになる!
曲には2つのリフしか出て来ない。これも極端な戦法だが、実に効果的だ。

惹き付ける理由は他にもある。新しいと書いたが、古い匂いも漂っている。
古いパンクのようでもあり、ニュー・ウェイヴのようでもあり、2つめのリフからはLed Zeppelinの味もするし、AC/DCやBlack Sabbathに通じるものもある。ハード・コアというべきかもしれないし、ダンス・ミュージックにも思える。

曲が斬新というわけではないのだが、そのスタイルというかアプローチが斬新なのだ。誰も見たことのない楽器を使用したり、動きをするのではなく、組み合わせやアイディアの勝利ということだろう。

機械的に刻まれるリフを聴いているだけで勝手に体が動き出す音楽。これこそロックだ!