2018年10月8日月曜日

Shot In The Dark [Live]

Ozzy Osbourne [ P.Soussan/O.Osbourne ]

個人的に大好きなこの曲のライブ・バージョンを取り上げる。時期は1991年、ギタリストはZakk Wylde、ベーシストはGeezer Butlerの時で、ミニ・ライブ・アルバム『Just Say Ozzy』のバージョンだ。この曲は他にもライブ・バージョンは存在するが、オリジナル・スタジオ・バージョンを含めても、『Just Say Ozzy』のバージョンが一番好きだ。ギターがカッコいい。
というわけで、ここでは主にギターを中心に見ていきたい。ザックとオリジナルのジェイクの比較で両者の個性やギタリストとしてのアプローチの違いがハッキリして面白い。

まず、イントロがオリジナルより伸びている。ギター抜きで静かに始まるアレンジだ。この後、ハーモニクスの部分、メイン・リフの部分とあってからヴォーカルになるので、イントロが3段階に盛り上がるという、なかなかドラマチックなアレンジといえる。
ベースの存在感が素晴らしい。ギーザーだからか、ライブだからか、結構音がデカいし、時折入る16分のハンマリングなんかが最高にカッコいい。
そして特筆すべきはキーボード。ジェイク時代のライブはキーボードの比重が大きすぎて(アルバムでは目立たなくて良かったのに)、それがカッコ良くない原因になってしまっていたのが大きく改善されている。ヒューマンボイスの音もなかなかだ。

続いてイントロその2。ギターの登場だ。しかし、ボリュームをかなり絞って、クリーン目な、か細い音での登場。
オリジナルの時に触れたが、とても難しいハーモニクスの音程操作のテクニックだ。ジェイク以外ではザックが一番だったと指摘したが、ザックはネックの上から抑える作戦で弾いている。レスポールなので、もちろんアームはない。(詳しくはスタジオ・バージョンの方を参照のこと)

イントロその3はメイン・リフだ。ギターのボリュームがフルテンになる。そしてノイズ・グリスを入れた直後に馬のイナナキのような幅の大きなビブラートで本格登場。実にカッコいい。これだけの揺れ幅と速度、そして正確性は結構難しい。たった1音でザック・ワールドに引き込まれる存在感。

そしてザックとジェイクの違いが大きく出るリフの解釈。ザックは変則チューニングを使わない。だから5弦開放は使用できず、ちゃんと2フットを押さえる。ブリッジ・ミュートをしたズ太い音だ。そして、ジェイクは3度と7度でメロディを作っていたが、ザックはなんと3度を使わない。4弦、3弦の順に「4F、4F」「2F、2F」で弾く。1度5度と「A」の1度5度だ。ジェイクの「Bm7」の時のリフの音と比較すれば一つも同じ音がないことになるが、ちゃんとソレっぽく聴こえる。つまり7度の音はもちろん、3度の音さえ省略してしまっても、「B」と「A」のコンビネーションだけでこの曲に聴こえるのだ。
オシャレなジェイクは色々なテンション・コードを使用するが、反対にザックは直球一本。私は、ヘヴィなメタル・ミュージックにおいて、オシャレな雰囲気をカッコ良くまぶすジェイクに憧れ追いかけていたのだが、この時にその真逆、単純明快豪球ド真ん中のザックのアプローチに心奪われてしまったのだ。ザックは単純明快化して分かりやすく簡単にしているが、それは単に下手という意味ではない。それどころか、ジェイクにも劣らないテクニシャンなのだ。その辺りもこれから見ていく。
それと、ジェイクの時にも少し触れた「ジャズズ、ジャーダガダガダ」の「ダガダガダ」の部分だが、ザックの方が動いている。音で言うと「シラファ#ラシ」となる。普通に押さえているのだから、動いても特に関係なしということか。
リフの後半。ジェイクはずっと3弦4弦を使っていたが、ザックはこれを2弦3弦で弾く。3弦は開放の「G音」で間の5弦「B音」をやめてこの音に置き換えている。またもやジェイクとは違う音だが、こっち方がコード感が出て、分かりやすく、ドラマチックに聴こえる気がする。メイン・リフの最後のピッキング・ハーモニクはジェイクより強力だ。

ヴォーカルが入ってからのアルペジオ。ジェイクは「Bmadd9」と「G6」を弾いていたが、ザックはヴォーカル・メロディと絡めたような「Bm」(9thの音もあるが)と「Gのパワーコード」とやはりヴォーカルに絡めたフレーズを弾いている。弱めのピッキングで弾いているが、ギターのエフェクトは変えていない。
このパートの一番最後のオブリガードでザックの得意技のタッピング技が出る。ある音をチョーキングした後にオクターヴ上(12F上)をタッピングするもの。これはよく使われるザックの得意技。
このようなオブリが随所に見られる。ジェイクも計算されたような結構カッコいいオブリを沢山入れていてカッコ良かったが、ザックの思いつき一発で弾いているオブリも違う意味でカッコいい。入れる場所もアプローチも全然違うので、これを比較するのも結構興味深いし勉強になる。

Bパートはジェイクはメイン・リフと似たアプローチで弾いていたが、ザックもザック流のメイン・リフと同じアプローチで弾く。ここでも随分シンプルに直している。
ここで凄いのはこのパートの最後のオブリだ。ペンタトニックの音だが、1拍6連×4の早弾きだ。それが乱れることなくキッチリ弾かれている。この曲で初めて見せるザックの凄技だ。そして豪快なビブラート。このビブラートもザックの大きな特徴だ。

サビは比較的大人しいし、ジェイクが入れていたオブリの場所はほとんど無視してピッキング・ハーモニクスなどを入れているのみ。
ギターソロ。ジェイクは他人の曲のソロを弾く場合も自分の色を全面に出した別フレーズを弾く場合が多いが、ザックは他人の曲でも大筋で同じように弾く。ビブラートやピッキング・ハーモニクスで自分っぽさを出しているくらいだ。この曲の場合もそうで、だいたいジェイクのフレーズをなぞって(ちょっと違うが)いるが、一番最後のピックを打ち付けるタッピング技は無視し、単にノーマルなトリルで締めている。ただし、一番最後の音が、ジェイクは薄味だったのに対し、強力なビブラートでザック印になっている。

圧巻はエンディング・ソロだ。ライブではジェイクもエンディングにソロを入れていたが、結構あっさりしたものだったが、ザックのソロは凄い。だいたいペンタトニックの手グセ・フレーズのようだが、ここまで連発されるとタメ息が出るほど凄い。
まずは1拍6連の早弾き。1弦の14F、10F、2弦の12F、10Fのポジションと、1弦が12Fと10Fに変わる2ポジションだが、8音1パターンでの繰り返しだ。これを6連譜に乗せるから、少しずつズレていくような感じになる。これで結構難しいプレイになるのだ。しかもこれだけの長さを弾き切らなければならない。
ソロが始まってから9小節目のプレイも見るものがある。2弦17Fのハーフ・チョーキング後のプレイだ。16分の早弾きで、1弦14Fの後は3音で1パターンになっていてその繰り返しだが、ストレッチ気味で結構キツい。2弦18F、1弦14F、17Fの3音と、2弦18F、1弦14F、19Fの2パターン。ザックの手グセ・フレーズだ。
こういう早弾きと、揺れ幅の大きなビブラートのコンビネーションがザック・ソロの肝で、ほぼペンタトニックだ。

Yngwie出現以来、古くさいブルースのフレーズではなく、クラシカルな響きを持つ音やディミニッシュ、ハーモニックマイナー・スケール等様々な音使いが広まっていたが、その時代のド真ん中で最も古典的で単純なペンタトニックを、ハイテク・ギタリストのザックが連発することの新鮮さに驚いたものだ。「ペンタトニックはバカの一つ覚え」のように感じていたものが「ペンタトニックはカッコいい」と思えるようになったものだ。そしてビブラート一発で黙らせるカッコ良さ。ザック最高!

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