2003年9月29日月曜日

Etudes #4 opus #10

Frederic.F.Chopin [ F.Chopin ]

ショパンの初期のピアノ曲「エチュード」。「練習曲 作品10-4」と言った方が通じるかもしれない。この曲を知ったのは、何と、黒人ヘヴィメタル・ギタリストのTony MacCapineが弾いていたことによる。ギタリストがどうしてという気もするが、おそらくピアノもそれなりの腕なのであろう。彼はギターの腕も凄まじく、まさにショパンがギターを弾いているかのようなハイ・テクニック&スピード王のギタリストだ。

で、この曲だが、テクニックには絶対的な自信を持っているショパンらしく、かなりテクニカルだ。ほとんど「俺のテクニックを見てくれー」「凄まじい指の動きだろー!」と言わんばかりである。ショパンの曲はロマンチックなものも含め、どこかで必ずハイ・テクニックなパートがある。現代に生きていたら、ヘヴィメタル・ギタリストのようになっていたのではないかと思う。同じ系統にはリストもいる。彼もショパンに負けず劣らずテクニシャンだ。

曲のテンポは結構早い。左手で軽やかなコードをを4分で打ちながら、右手は16分の凄まじい勢いで弾きまくる。休符など一切なしだ。
突然、右と左が入れ替わる。右手でコードを4分で打ち、何と、16分の凄まじさは左手に移る。クラシック・ピアノを本格的にやっている人は右手も左手も関係ないのだろうが、こうやってあらためて聴かされると驚異的だ。

コードを弾いている方はそれほど難解ではないが、何しろ反対の手が凄まじいスピードなので、テンポよく軽やかに弾くのはかなりの難易度だ。汗水たらして、真っ赤な顔をして血管が切れそうなくらいにブッ飛ばしている横で、鼻歌でも歌いながら軽くスキップをしているようなものだ。それを同時にやるのだから、プレイヤーは感情のコントロールを自由自在に出来なければならない。溜め息の出そうな曲だ。

音使いについても多少は触れておく。キーが「G#m」とヒネクレてはいるが、メロディは基本的に「G#ハーモニックマイナースケール」にすぎない。スピード重視なので音列的には比較的シンプルだ。最初の部分のコードは「G#m」「C#m」をジャンジャンと鳴らした後は、「D#dim」 「C#m」 「Cdim」 「C#m」と半音階を強調し、「F#m」 「C#m」 「F#m6」だろうと思う。耳で聴いてのものなので、正式な譜面と同じ保証はない。
全然違うことを言っていると恥ずかしいので、具体的な音についてはこのくらいにしておくが、ペダルノートの使い方や華麗なスケールの下降ラインなど、参考になる点も多い。

とにかくスピード王的な曲なので、ひたすらスピーディに弾けたらカッコいい。クラシックはテンポにも厳格だが、この曲を倍速で弾いて文句を言う人はいないだろう。(人間技を超えるだろうが)

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2003年9月27日土曜日

The Crave

Jelly Roll Morton [ J.Morton ]

20世紀初頭、「Jazzを作った男」と豪語したJelly Roll Mortonのこのピアノ曲は、まだジャズというよりラグタイムを感じさせる曲だ。ラグの2拍子よりもハバネラ風のシンコペーションにするところが特長で、簡単に言えばタンゴ風ということ。

コード進行的にはシンプルだが、半音でぶつかる和音の刺激やクロマチックなメロディがカッコいい。

最近のジャズ・ピアノはもっと右手重視だが、左手が聴きどころ。重低音のルート音でドーンと響かせておいて、すぐに中音域でコードを鳴らす。
ソロ・パートになってリズムを崩して弾いても左手は変わらない。最近は片手だけで複雑なソロを弾く場合が多いが、一人ですべてをプレイするスタイルもカッコいいと思った。

なお、この曲は映画『海の上のピアニスト』の中で、主人公とJellyが対決する際に演奏される。かなり印象的なシーンなのでお薦め。映画ではシャッフル風のリズムで聞きやすくなっていてカッコいい。
(この映画の中では Jelly は黒人だが、本物は白人だ。映画で対決する味方と敵を分かりやすくするための演出だろう)

映画の対決シーンでは、Jellyが2曲目に弾くのがこの曲だが、直後に主人公がそっくりに真似して弾いてみせる。この主人公が弾くバージョンは、そっくりなのだが、よく聴くと猛烈な左手が加わっているのが違う。半音階の早弾きだ。その迫力の低音の違いを聴き取ってほしい。まったくピアノが弾けない役者さんの演技だが、ちゃんとそれっぽく手が移動しているところが凄い。

この他、Jellyの演奏シーンでは「Big Foot Ham」「Finger Breaker」が出て来るので興味のある方は是非どうぞ。

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2003年9月26日金曜日

レッツ・ゴー・UGM

TALIZMAN [ 木村昇/山上路夫 ]

すっかりウルトラマンづいているが、第3弾である。
「ザ・ウルトラマン」で書いた通り、自分のオリジナル曲だと思い込んでいたら実は違っていたという恥ずかしい思い出のある曲だ。さて、この曲は「ザ・ウルトラマン」の後に再び特撮に戻ってのシリーズで、「ウルトラマン80」で使われた曲で、おそらくエンディングで流れていたのではないかと思うものだ。このあたりは記憶が定かでないのだが、印象に残っているということは、BGM的に使われていただけではないと思う。

「ウルトラマン80」はその名の通り、1980年に放映されたもので、当時私は小学生の高学年。妹や弟と一緒に見ていた記憶がある。「UGM」というのは、「ウルトラマン」でいう「科特隊」、「ウルトラセブン」でいう「ウルトラ警備隊」、「帰ってきたウルトラマン」でいう「MAT」にあたる、地球防衛軍的な組織の名前だ。つまりその地球人の軍を応援する曲なのだ。毎回怪獣の回りを飛んで、ほとんど通用しないミサイル等を放ち、最後は撃墜されてしまう、とんでもなく金のかかるであろう組織だ。

この曲も子供に買い与えたCDに入っていたもので、聴いた瞬間に思い出し、そして自分のオリジナル曲で使ったパターンだということにも気がついた。
一応、完成した曲だったが、歌詞がつかずにまともに録音もしていないものなので、これを機にお蔵入りが決定だ。

さて、この「Let's Go UGM」だが、私が自分の曲で転用してしまった部分は2箇所ある。
1箇所目は「このほーしをー、まもーるーのが」という部分で、メジャーコードからそのままマイナーコードになる部分だ。キーがわからないので仮にキーがCとして「F→Fm」としておくが、私はこのコード進行が好きな割りに使うのが下手なのだ。それだけに、珍しく頭の中にスッと出て来たメロディだったため、飛びついてしまったというわけだ。 もう1箇所は「正体不明でやって来るー」というサビ直前の半音階のところだ。盛り上げるにはピッタリのメロディだ。

まあ、この2箇所の転用だけなら元ネタがバレることはないのではないかと思うが、自分として引っ掛かるので、もう少し自分流に消化できた上で、いつか再び使ってみたいと思う。

2003年9月25日木曜日

ザ・ウルトラマン

ささきいさお [ 宮内國郎/阿久悠 ]

「帰ってきたウルトラマン」に続いて、今度は「ザ・ウルトラマン」だ。「ザ・ウルトラマン」は、何とウルトラマン史上唯一のアニメ作品であり、見た目も結構違う。しかしウルトラマンには変わりなく、カラータイマーもあるし、バルタン星人も出て来る。TV放映当時も見ていたが、他のシリーズと比べると思い入れは随分低い。アニメになじめなかったからだ。

この曲は「宇宙戦艦ヤマト」等でお馴染みのささきいさおが歌っている。ウルトラマンシリーズでは唯一ではないだろうか。とても力強い低音が迫力がある。本当に、ささきいさおの歌は男の子の子供番組には欠かず、極めて重要な存在だ。
重要さを裏付ける個人的な話しがあるのだが、私がバンド活動をしていた10年以上前のこと、オリジナル曲を作曲した。作曲は、たいていは頭の中に何となく浮かんでくるメロディを元に作るのだが、その曲のメロディはどこかで聞いたこがある気がした。しかしどうしても思い出せない。ところが2~3日前、子供に買い与えたCDの中の「ザ・ウルトラマン」の主題歌を聞いて「これだ!」と思い出した次第だ。

思い出せないはずだ。作曲した時点ですでに10年以上経過している上に、ハードロックの曲をイメージしているのだから、まさか子供の頃に聞いたアニメの主題歌だとは思いもしなかった。
幸いにして、この曲が元ネタになっている曲は未完成のままで、他で使われることはなかったのだが、もし完成して他者に聞かせ、その人が気付いたりしたら、とても恥ずかしかっただろう。
この曲に出て来るお気に入りのパターンは、キーが「C」だった場合の「E」の扱い方だ。歌詞で言えば「光か、はやてか、音か」の部分だ。この音の使い方はドラマチックに盛り上げるのにピッタリだ。特に「E」の3度の音が「C」の5度から半音上がる音に当たるところがミソ(シャレではない)なのではないかと思う。つまり「ドミソ」→「シミソ#」だ。

実はこれと同じパターンがウルトラマンシリーズでもう1曲あることが判明している。(それは明日に)

しかし、記憶とは恐ろしいものだ。

2003年9月23日火曜日

Be My Baby

The Ronettes [ J.Barry/E.Greenwhich/P.Spector ]

1960年代初頭にアメリカで2位になったヒット曲。The Ronettesについてはほとんど知識がないため何とも言えないのだが、多分、姉妹+親戚の女性3人組のボーカルグループだと思う。曲もただ1曲、この曲を知っているだけだ。

どこが好きかと言えば、サビだ。他の部分と比べ、半分くらいのスピードでゆったりと「Be my, be my Baby」と出て来る。しかもこれはバック・コーラスの形でのハーモニーだ。メインのボーカル・ラインはその合間にオブリガード的に歌詞を入れている。私はこの手のアレンジにとても弱く、一発で参ってしまう。
(個人的にこういうサビのアレンジを「Be My Baby的アレンジ」と呼んでいて、多分今後もここで取り上げることになると思う)
ボーカルのわざとらしいビブラートが演歌チックで気になるが、この曲はほとんどこのサビだけで決まり!だろう。

この曲を作曲し、プロデュースもしているのがPhil Spector。Beatlesの『Let It Be』をプロデュースし、Paul McCartneyが激怒したというエピソードで知られ、1970年代とはJohn Lennonとの活動でも有名。また「To Know Him Is To Love Him」の作曲者でもある(この曲も大好き)。
Ronettesのリードシンガーの Veronica Bennett と結婚をしている(後に離婚)。

彼の音作りは、当時流行った、というか Phil が流行らせた「Wall of Sound」と呼ばれるもので、これはギターやピアノ等の特定の楽器をメインに据えるのではなく、多くの楽器を重ね、コーラスも駆使するといった手法のもので、音の壁のようだからつけられたものだ。 個人的には隙間のある音作りが好きなためこの手法は好まないのだが、それでも(今回取り上げたように)彼が初期にリリースした曲には好きなものが多い。

2003年9月22日月曜日

青 春

岩崎良美 [ 芹澤廣明/康珍化 ]

風が踊る グランドベンチの隅
誰かがほら 忘れていったわ ユニフォーム
汗にまみれ あちこち破れかけて
手にとると 涙が出た

ねえ 音もたてずすぎてく青春には
さよならがいっぱい
ねえ 楽しい日々 お願いこのまま
STAY STAY STAY
時よ動かないで
私はまだあなたに好きですって
打ち明けてさえ いないの

くぅ、泣けるねぇ~。
アニメ『タッチ』のエンディング・テーマの曲で、確か選抜甲子園の入場行進曲にもなったはず。
全然せつなくもないのに、高校時代を思い出してせつない気分になるのが不思議。勝手に「ドラマチックでせつない青春」をイメージしてるんでしょうね。

いきなりなぜこの曲かというと、ケーブルテレビの子供チャンネルで再放送しているのを偶然見つけ、しばし見入ってしまったからであった。

私は基本的に曲から入るのですが、この曲の良さは歌詞ですよね。
アニメと連動してか、高校野球のイメージの曲で、途中からは青春賛歌となる。「音もたてずすぎてく」あたりは、誰もが「うんうん」とうなづきながら涙をこらえるところ。私にもそんなクサいフィーリングが今も残ってるんですね~。

曲的には。歌の出だしの静かな部分のバックでリズムを刻んでいるギターがなかなか印象的。Policeあたりに出て来そうなアレンジと言えるでしょうか。
「ねえ」からは一気に音程が上がって盛り上がる。開放的なメロディだからこそ、青春を回顧するイメージと重なる。素晴らしい!サビなどにイキナリ英語を使う歌詞が横行していますが、この曲の場合は英語というまでもないレベルのせいか、かえって分かりやすすぎてジーンと来るなぁ。

最後の2行はなくても雰囲気は伝わると思うのだが、これに変わる素晴らしい詞が思いつかないので、良しとしよう。

2003年9月21日日曜日

Crying In The Rain

Whitesnake [ D.Coverdale ]

来日中のWhitesnake。地味ながらブルージーで渋いハードロックバンドだったのが、突如、派手派手ギンギンのヘヴィメタルバンドに変貌した1987年。そのアルバムの1曲目を飾るのがこの曲だ。この曲はブルージーな時代のリメイクで、昔のバージョンを比べるのも面白い。
ここで取り上げるのは派手派手な方のものだ。
個人的にはブルージーな時代の曲にも好きなものが沢山あるが、ほとんど別のバンドに近いので「どちらが良いか」と問うのはナンセンスに思う。たんに好みの問題になるからだ。

ヘヴィメタル・ソングに聴こえるが、よく聴けばブルージーな要素は沢山ある。ドラムの手数が多くなったもののリズムは同じだし、ボーカルもブルージーな音使いだ。

さて、曲の聴きどころは沢山あるが、基本的にはギターとボーカルだろう。Whitesnakeのボーカルはいつでも最高だ。パワフルでワイルドでセクシーで、シャウトも低い声も最高だ。

ギターは圧巻だ。まず何と言ってもあのズ太い音。レスポールの音だが、一体、いくつのギターが重ねてあるのか想像もつかないが、ブ厚い音になっている。リバーブが深めにかかっているので、余計にブ厚さを感じさせる。

リフはブルージーな時代のものそのままだが、粘りのある弾き方のせいか、淡々とせずにカッコ良い。刺激的なピッキングハーモニクスの音も最高に決まっている。

そして更に凄いのはギターソロだ。溜め息が出るほど凄まじいソロで、早弾きにつぐ早弾き。無意味な早弾きと揶揄する人もいるようだが、私はそうは思わない。
ビブラートは心を震わすし、早弾きの中に出てくるチョーキングのロングトーンは最高に表情豊か。他の曲でも結構出て来るのだが、John Sykes はこの早弾きとロングトーンの対比が抜群なのだ。
後半に入るとドラムと共にリズムを倍にしているところは驚くばかり。締めのライトハンドのフレーズも、たんにコードトーンを早く弾くようなタイプではなく、ペンタトニックを駆け上がり、最後はまるでビブラートをかけているかのような劇的なフレーズになっている。
David Coverdaleが「マグマが爆発しているようだ」と評していたが、まさにそんな表現がピッタリの、激しく緊張感溢れる最高のソロだ。
フレーズを真似して弾くだけではとても雰囲気は出せそうもなく、ピロピロと、か細い音での早弾きとはひと味もふた味も違う、表情豊かなソロに平伏すしかない。

ソロが終わった後のボーカルもそれを受けるかのように激烈で、ハイトーンが出て来たり、本当にカッコいい。

2003年9月20日土曜日

帰ってきたウルトラマン

団 次郎 [ すぎやまこういち/東京一 ]

子供のヒーロー「帰ってきたウルトラマン」の主題歌だ。なぜイキナリこの曲なのかというと、それは今、2歳半の長男がハマっているからだ。この年齢だと最近のウルトラマン・シリーズよりも昔のシンプルな話しの方が分かりやすくて良いようなので、レンタル・ビデオ屋で借りて来ては見せているのだ。そして、ついに昔から現在までの全主題歌が収録されているCDを買ってしまったというわけだ。

「帰ってきたウルトラマン」は、初期ウルトラ3部作と言われる(?)「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」から3年のブランクを経て復活したもので、だからこそのこのタイトルなのだ。他のウルトラマンは皆、「セブン」とか「エース」とか「レオ」とか名前があるのに、一人だけ「帰ってきたウルトラマン」というのでは名前らしくないということで、後に「ジャック」の命名されたそうだ。(昔は「新マン」と呼ばれていたのだが)

さて曲だが、まず何と言ってもイントロだ。いや、正確にイントロではない。
ウルトラマンシリーズには主題歌の前にアヤシイSEやちょっとした音楽が挿入されている。30秒ほどの短いものだが、その時、画面には不思議な模様とか光が映され、やがてタイトルがバーンと登場する。音楽もそれに合わせ、摩訶不思議な雰囲気で始まり、やがてカッコ良くファンファーレがなるのだ。
私は「ウルトラセブン」や「ウルトラマンエース」のイントロSEも好きだが、前後のギャップという意味でこの「帰ってきたウルトラマン」にハマっている。キラキラした音と半音階が最高だ。

[ 音は悪いですがイントロSEから40秒だけ音が聴けます ]

このイントロSEに続いて、2秒弱の空白、そして実際の曲のイントロに入る。いきなりブラス入り、ピアノのリフが目立ったロックかと思うような曲調で驚く。
そしてややソフトなボーカルが「君ーにも、見えーる、ウールトラのー、ほーしーっ」となるわけだ。このギャップが面白い。CDを見ると、このボーカルはウルトラマンに変身する郷秀樹が歌っているらしい。
ほとんどの部分は子供の合唱団と一緒に歌っているのだが、一番最後の「帰ーってきたぞっ、帰ーってきたぞっ、ウールトーラーマーン」の「トーラー」だけハモっているところが微笑ましい。郷秀樹が主旋律で、子供が下降していくラインを歌い、「マーン」はオクターブとなる。

この直後の(本来は間奏にあたるはずの)部分が好きだ。音をとっていないので正確でないかもしれないが、キーが「C」だとしたら、「F」から「G」再び「F」へのコード進行の部分が美しい。こんなにシンプルな進行で、しかも出て来る音もコード・トーンにすぎないのに、なぜか切ない気持ちになる時があるのは、子供時代の古い記憶が蘇るからだろうか?

2003年9月16日火曜日

Cowboys From Hell

PANTERA [ PANTERA ]

個人的許容範囲の中でももっとも過激で激烈なバンドがこのPANTERAだ。それまでのメタル・ミュージックのMetallicaとかJudas Priestといったバンドも充分過激だが、このPANTERAは更に上を行く。最高にヘヴィで最高にエネルギッシュなバンドだ。
どんなにヘヴィで凄まじい音楽であっても、音楽の基本であるリズム、メロディ、ハーモニーがなければ嫌なのだが、これ以上ヘヴィなバンドになると最も重要なボーカル・メロディが消えてしまうので受け付けない。
PANTERAも時折同様になるが、基本的にはシャウトしていてもメロディはある。

この曲のカッコ良さは、まずはイントロだ。この手のエネルギーの塊のような曲は、イントロからぶっ飛ばさないことには始まらない。機械的なリズムの中に入り込んで来るギター。来るぞ来るぞと身構えていると、突然フルでベースやドラムが乱入する。最高にカッコいい。何も考えずに「ウォー」と叫びたくなる。
とにかく大音量で聴くべきだ。「元気が出る」なんてものではない。体の内側からエネルギーがほとばしり、アドレナリンが体中を駆け巡る。

ザクザクと刻まれるギター。最高のリフに最高のサウンド。歪みが大きいが、たんにエフェクトで歪ませているだけではこの音は出ない。もちろん、中音域を削り、ハイとローを持ち上げたいわゆる「ドンシャリ・サウンド」で、V字になるイコライジングで作るのだが、それ以上に強くて正確なピッキングが必要なのだ。「ヘヴィで激烈で過激なバンド」と言うと「粗っぽくて雑で下手クソ」とイメージする人もいるかもしれないが、それは大きな間違い。かなりのハイレベルな演奏技術、サウンド技術が必要なのだ。

ギター・ソロではリズムが落ちて聞かせる構成になっているところがにくい。意外にもギターの歪み度は低く、ザクザク感のあるリフとはまったく違うサウンドだ。背後のバッキングと比べるとよく分かる。
Dimebag Darrellのギターは本当にカッコいい。どんなにワイルドに弾いてもリズムは正確で音も乱れない。それはソロでも同様だ。

弾くこと以上に重要で、かつ難しいのは休符だ。休符部では存在を消すかのごとくピタッと音を止めなければならない。多少でもヘヴィ系バンドをやったことがある人なら、大音量での休符がいかに難しいことかご存知だろう。

2003年9月15日月曜日

六甲おろし

阪神タイガース [ 古関裕而/佐藤惣之助 ]

もう今日はこの曲しかないでしょう。あのダメ虎と呼ばれた阪神タイガースが18年ぶりの優勝を飾ったのだ。マジックが減り、優勝目前でありながら前週はヤクルト、中日にことごとく負け続け、今日も劣勢ながら8回に片岡のホームランで同点とし、9回、一死から藤本と片岡の連打と敬遠で満塁とし、赤星が前進守備の右翼頭上を越す安打でサヨナラ勝ち!この2時間後にヤクルトが横浜に大敗して優勝が決まった。予想通り、道頓堀に飛び込む人が多数(5000人超!)、日本中がタイガース一色となった。

この曲は勝利した試合後に高らかに歌われる凱歌で、ナイターの夜空に向かって歌うことほど気持ちの良いものはない。
「六甲おろし」というのは甲子園の背後にある六甲山から吹き下ろす風のこと。甲子園で風と言えば、右から左へ吹く「浜風」の方がずっと有名で試合にも影響を与える。「六甲おろし」は地元でも使わない言葉のようだが、この風、プロ野球のシーズン以外に吹くようだ。作詞した佐藤さんは神奈川の人で、大阪に行った際に「赤城おろし」等のイメージでつけた名前なのかもしれない。

個人的に演歌は苦手なのだが、この曲はよく耳にする演歌よりも更に古い曲のせいか、マイナー調でないせいか、イントロからとても気に入っている。間奏もしっかりしているし、曲としても他球団のものよりもずっと素晴らしいと思うがどうだろう。

この曲は1936年の作で12球団最古。後半の「おぅ、おぅ、おぅ、おーっ、はーん しーん タイガース」と部分の「おぅ」がなぜ「おぅ」なのかと言うと、この曲が「大阪タイガース」時代に作られたからだ。「大阪」の「お」だったのだ。
曲名も本当は「大阪タイガースの歌」で、現在は「阪神タイガースの歌」に改められている。

私は、この曲のCD等の音源としてはThomas O'Malley(元阪神<1991~94>・ヤクルト<1995~96>の選手。1993年首位打者、翌年、長打力不足で解雇)の歌っているものしか持っていない。相当な音痴だが、何と日本語で歌っていて笑える。そんな陽気なオマリーは、今年の阪神の臨時コーチで、ビールかけにも参加してはしゃいでいた。

作曲者の古関裕而といえば高校野球の『栄冠は君に輝く』や東京オリンピックの『オリンピック・マーチ』が有名。この曲名だけでも凄い人だということが実感できるだろう。

それにしても、優勝インタビューでの星野監督の「夢に日付けを入れることが出来ました」は名言だなぁ。

2003年9月14日日曜日

That'll Be The Day

Buddy Holly [ B.Holly/N.Petty/J.Allison ]

1957年というとても古い曲だが、聞き出すと結構ハマる。シャッフルのリズムを刻むギターが気持ち良い。Buddyトレードマークの「しゃっくり唱法」は少ししか出てこないものの、歌を真似てみると曲の楽しさがよく分かる。

それからギターのイントロ!
とても短いイントロだが結構印象に残った。何度も聴いてギターでコピーしようと思ったが意外に苦戦してしまった。
一聴するとカントリー系のフレーズに聴こえたが、よく聴けば単なるアルペジオにすぎない。少し変則なところがあるのと半音ずつ下がる音使いが少しだけカントリーっぽく聴こえる。
Buddyはカポを5フレットにつけて弾いている。カポがないとカントリー系のフレーズだが、カポ付きだと途端にアルペジオになってしまう。同じフレーズなのにニュアンスが変わるのが不思議。

Beatlesも彼のファンで、この曲は『アンソロジー』にJohn Lennonのボーカルで収録されている。Beatlesが他人の曲をやってもオリジナルよりずっとカッコ良くなるのだが、この曲に限ってはオリジナルのBuddyのバージョンの方が良いと思う。Linda Ronstadtのも有名。

Buddy Hollyは初期ロック黎明期の人で、ほとんどがワイルド系ばかりの中、一人メガネをかけ、田舎の好青年という、一風変わったルックスを持つ。「きっといい人だろう」と勝手に想像してしまう。それでいながらテキサス出身のロックンローラーというのだから面白い。
当時は「ロック界のアイドル」的な存在だったようだが、独特の唱法で人気を博した。「しゃっくり唱法」とはPresleyなども得意とするもので、メロディの中のある1音を瞬間的にオクターブ上げたり5度上げたりする歌いまわしのこと。

個人的には、ルックスや唱法ではなく、曲作りがポイント。確か、Paul McCartneyも「自分で作曲するところが素晴らしくて影響を受けた」というようなことを言っていたと思う。この曲の他にも結構有名な曲は多い。 ギター2人にベース、ドラムの編成で、ギタリストが自作の曲を歌うというパターンもBuddyが始まりだったかもしれない。

1954年から活動していたが、人気が出たのはCricketsを結成した1957年から。惜しいことに、実働わずか2年間で、1959年2月3日、飛行機事故で亡くなってしまった。22歳だった。合掌。