2018年11月26日月曜日

Steal Away

Whitesnake [ D.Coverdale/M.Moody/B.Marsden/N.Murray/P.Solley/D.Dowle ]

1978年、WhitesnakeのデビューEPSnakebite(4曲入)』の収録曲で、最初期Whitesnakeのライブでの重要なレパートリーだった曲。Whitesnakeがブルースやカントリーの影響を受けていることがよく分かる曲だ。
ミッキー・ムーディ得意のスライド・ギターが使われているが、個人的には後の「Love Hunter」や「Slow An' Easy」よりも大好きな曲だ。そういえばライブ・アルバムの『Live…In The Heart Of City』の中でミッキーのソロ・タイムの中でこの曲のリフを少し弾いて、結構歓声が上がっていたなぁ。

そのスライド・ギターを見ていこう。出だしからズ太いレスポールの音で、スライドならではのラフな雰囲気を出していて、とても印象的なフレーズだ。曲の半分はこのスライドのリフだけで決まりだろう。
このスライド・ギターだが、オープンG・チューニングで弾かれている。6弦から順に「GBDGBD」でチューニングする。2~4弦はレギュラー・チューニングと同じだ。ノーマル・チューニングでも感じは出せるが、オープンGの方が何かと便利なのだ。

まず最初のリフ。オープンGなのでお間違えなきよう。同弦移動はすべてスライドで。6弦7F、9F、5弦8F、12F、10F、8F、6弦0F、これを2回。6弦7F、9F、5弦8F、12F、4弦12F、5弦12F、10F、8F、6弦7F、指で9Fを半音チョーキング、9F、4弦7Fのハーモニクス、3弦7Fのハーモニクス、2弦7Fのハーモニクス。3回目は6弦7F、9F、5弦8F、12F、10F、8Fまで弾いて、「C」と「B♭」のコードを弾く。3Fと1Fで、もちろんスライドっぽく下からせり上がるように。4回目は6弦7F、9F、5弦8F、12F、4弦12F、5弦12F、10F、8F、8F、4弦0F、「F(10F)」「G(12F)」となる。

途中でこのリフがオクターヴ高くなる。ヴォーカルが1オクターヴ上がったのに合わせる形だ。この時も非常に便利なのが、オープンG・チューニング。最初のリフは6弦5弦4弦で弾いていたが、それをそのまま3減2弦1弦で弾くだけだ。フィンガリングはまったく同じ。そもそもチューニングが低音弦3本と高音弦3本でオクターヴになっているのだから当たり前だ。

ノーマル・チューニングだと、2弦と3弦のチューニングが他と音程差が違うためにフィンガリングが変わってしまう。それでもあえてノーマル・チューニング用にざっと書いておくと、6弦10F、12F、5弦10F、14F、12F、10Fというような感じになるが、その後の低い「G音」は諦める。あった方が断然カッコいいが、6弦3Fなので、ポジション移動が激しい上にすぐに次の音があるので仕方がない。
2~4弦のチューニングは変わらないので気にしなくて良い。だからオクターヴ上げの場合も3弦と2弦はオープン・チューニングの時と同じで、1弦だけ気にすれば良い。しかも1弦は1音だけだ。

曲構成を見るためにコード進行を記す。Aパートは、リフのところだが、「G」「G」「G」「D」「G」「C」「B♭」「G」「G」だ。Bパートはバンドで合わせ部分で、コードで出来たリフのように弾く。「D・C/B♭G・B♭G」「G」「F・D/CG・B♭C」「C」「D・C/B♭G・B♭G」「G/B♭」で、その後、ミッキーのスライド・ソロになる。ソロのコード進行は「C」「C」「C」「C/B♭」「G」「G」「G」「G/B♭」で、これをもう1回。結構長いソロだ。一番最後の「G」のところからは、トーキング・モジュレイター使用で変化を出している。恐らくバーニーだろう。

この後、Bパートにもう一度戻る感じになるが、スタジオ版では安っぽいエレキ・ドラムの音が入っているのが少し笑える。泥くさいスライドのブルースに当時最新鋭のエレキ・ドラムの音の取り合わせ。その対比の面白さを狙ったものだろう。
ドラムといえば、この曲のドラム・パターンはマーチング・バンド形式になっていて、スネアを「タカタカ タッタカ」と叩いていて、アクセントは8ビートの3拍目ではなく、行進曲さながらに全拍に入る。右!、左!、右!、左!、2拍子だ。

この曲の良さはスライド・ギターもあるが、何といってもヴォーカルだ。普通のギターよりスライドの方がより人間らしい感じのフィーリングが出るが、人間らしさで言えばもちろんヴォーカルの方が圧倒的に上だ(当たり前)。それを見せつけられるから、スライドの上に乗っかっているヴォーカルはカッコいい。それもほぼユニゾンのようになると、双方の良いところが相乗効果のように表われるように思う。デイヴィッドのようなブルージなディープ・ボイスの持ち主のヴォーカルは最高に相性が良いと思う。

2018年11月11日日曜日

I Don't Know

Ozzy Osbourne [ O.Osbourne/B.Daisley/R.Rhoads ]

Ozzyのソロ第1弾『Blizzard of Ozz』の1曲目を飾り、当時のライブでもよく1曲目で演奏された。長いOzzyのキャリアのほぼすべてのライブで演奏されている。

ドラがフェードインして来る音(テープの逆回転かな?)の後にギターのスライド・ダウンの音(6弦15Fから)で始まり、印象的で分かりやすいリフが始まるという、ランディの曲の典型例。
「A」のコード(4弦と3弦の2F)を鳴らし、2拍目から4拍目までは5弦開放(A音)をブリッジ・ミュートで16分で刻む。続いて「B」(2本の弦の4F)を鳴らし、同じようにミュートの16分を刻む。更に「C」(2本の弦の5F)に16分の刻み。そして2拍ずつ「G」と「D」のコード。実に分かりやすい。「G」と「D」のところはノーマル・ハーモニクスの場合もある。「Crazy Train」等と並び、つい弾きたくなってしまうリフだ。

ちなみに、ライブでは合間合間にオブリガードが入る。それがかなり個性的。強力なピッキング・ハーモニクスが多いが、トリルや開放弦を利用したもの、低音でのもの、ノーマル・ハーモニクスと色々ある。歴代ギタリストの比較をする際に、オブリに注目するのも面白い。(例、ジェイクはまったく独自の細かいフレーズを入れ、ザックはランディと同じような路線で勝負等)
とりあえずここでは一番最初のヴォーカル前に入るオブリを見てみよう。弾き方は、2弦1Fと開放を3回、3弦2Fと開放を2回、4弦2Fと開放を1回、5弦3Fと開放という具合だ。シンコペーション的に最初のをもう1回多くやる場合もある。ピッキング・ハーモニクス気味に弾くと感じが出る。
何回か後には超早弾きのオブリもあって、弾き方はシンプルだがとにかく早いというのがある。3弦の5F、4F、2Fをハンマリングとプリング・オフを繰り返すパターンだが、1拍で3回ハンマリングとプリング・オフをするので、6音鳴っていることになる。1小節で24音だ。

リフもライブでは少し弾き方が違っていて、2つめのコードはオクターヴ上も一緒に弾いているように思う。つまり押さえ方は、4弦から1弦にかけて、4F、4F、7F、7Fとなる。次のコードも同様。

その次のパートのコード進行を見ていくと「G」「F」「G」「F」「G」「F」「F/ConE」「D/C・G」で最初のリフに戻る。
「F」の部分はアルペジオっぽいフレーズだが、8分で4弦3F、3弦5F、4弦3F、2弦6F、3弦5F、1弦3Fと弾く。3回目はこれをダブル・ピッキングで2音ずつ16分で弾く。曲の後半ではディストーション系のエフェクトを更にONにして(すでに充分歪んでいるのに)、「ジョォワァァァー」という音を出すというフレーズ以外でのオカズを入れている。(バンド・メンバーは「フライパン」と呼んでいたという話しを聞いた気がする)

次のパートは、スタジオ・バージョンとライブとでは結構弾き方が違っていて、スタジオ・バージョンは「Dsus4」的な感じで弾く。スタジオ・バージョンはよく譜面が出ているので、ここではライブ・バージョンを優先するが、まず5弦開放を8分で2回鳴らした後、3・4弦の7Fをダブル・チョーキングとチョーキングなし、そして7Fと5Fの音、2小節目の3拍目と4拍目が「C」と「G」。この繰り返しだ。

そしてミドル・セクション。テンポが半分になり、曲調はガラッと変わる。そして私が好きなパートでもある。
コード進行は「D」「DonC」「DonB」「F」の繰り返し。このパートでランディは3本のアコースティック・ギターで色々やっている。よりメロディックなのだが、ここでは一人で弾けるライブ・バージョンを取り上げよう。
まず、ライブではギタリストは一人なので、音はそのままで優しいピッキングに変えて弾いている。コード・アルペジオとメロディ、ところどころにオブリガードという感じのプレイだが、こちらもなかなか聴き応えがある。
まず最初の「D」は、1拍目にコードを鳴らし、ヴォーカル・メロディと同じタイミング(1回目はヴォーカルはないが)で2減でメロディを弾く。「DonB」のところは「G」かもしれないが、それれは明確に「G音」を鳴らしているからだ。「D」なら4度の音になる。
「F」の時が色々変わり、6thや9thの音も使っている。1回目は多分6弦1F、4弦0F、3弦2F、2弦3F、3F、2F、0F、3弦0Fでのアルペジオだろうと思う。2回目は2・3弦の10F、3弦の12Fのハンマリングとプリング・オフ、3・4弦の10F、4弦12Fのハンマリングとプリング・オフ、以下省略、3回目は6弦1F、1弦3F、3弦0F、4弦3F、1弦3F、3弦0F、1弦3F、5Fではないか。1弦3F、3弦0Fは9度の音、もしかしたら2弦0F(♭5)の音も入っているかもしれない。
あともう1~2パターンある。

それからソロだ。基本的にGマイナー・ペンタトニックでのプレイだが、ところどころにトリッキーなフレーズが散りばめられている感じだ。2弦10Fを押さえておいて、13Fをピックでタッピングするトリル技や、半音ずつ下がっていってスケール・アウトしたものなど、弾いていてなかなか楽しい。早弾きもあるが、結構キチッとしているので意外と弾きやすい。全部コピーしても損はないものだ。公式にはランディのライブは2種とスタジオ・バージョンがあって、どれも同じ構成のソロになっているが、よく聴くと結構あちこち変えて弾いている。ランディも楽しみながら気分で色々弾いていたということなのだろう。
ちなみに、ジェイクはこのソロを、少しだけ長く繰り返しを増やしたが大筋で似たような構成、ザックはほぼ同じように弾いていた。

見てきたように、この曲には様々なオブリガードが入っている。入れられるスペースが沢山あるということだし、ランディをできるだけ尊重しようという前提でも、ランディ自身が色々なオブリを毎回違った感じで様々に入れているのだから、勝手に色々入れても冒涜にはならないだろう。曲としてきちんと成り立ちながら色々遊べる曲というのは最高だと思う。キッチリと作られている場合が多いメタル曲にはなおさらだ。曲自体にダイナミクスもあるし、ライブ向きの曲と言えるのではないかと思う。

2018年11月6日火曜日

Hallelujah, I Love Her So

Ray Charles [ Ray Charles ]

1950年代のロックンロール・オールディーズ曲。結構有名な曲でたくさんの人がカヴァーしている。
50年代のオールディーズというと単純な3コードの曲かと思うが、この曲は結構複雑だ。パッと聴くと他の3コードの曲と同じように聴こえるので、私も長い間特に気にしていなかったが、最近テレビで偶然に耳にして、意外に面白そうな曲だと思い、初めて音をとってみた。どう解釈して良いか分からない部分もあったが、ネット上に大量に弾き方等が出ているので、それも参考にした。なかなかカッコいい曲なので、是非どうぞ。

まずメイン・リフ。キー「A」として、「ラ、ド#、レ、レ#ーミ」(ベースはもう少し動くが)というのは単にコード「A」に対するありふれたリフ。これを繰り返すような曲だが、アレンジの妙で素晴らしい曲になっている。
この2小節に渡るメインのリフにコードをつけてみる。ずっと「A」として弾いても悪くはないが、それぞれにコードを当てた方がリフが強調され、それだけで曲っぽくなる。
「A/AonC#」「D/D#dim7・E9」となる。最後の「E9」は「E」や「E7」でも構わない。これを2回繰り返し、次の展開に移る。

ざっとコード進行を書いておくと、「A」「A7 (A7#5)」「D」「D#dim7」「A/C#7」「F#m/D7」「B7/E9」「A」となる。「A7#5」は4拍目にジャッと入るだけだが、ちゃんと弾いた方がカッコいい。「E9」のところは「E69」とかただの「E」でも大丈夫。それよりもシンコペーションする部分など、リズムに気を付けて弾くべきだろう。
コードで注目すべきは「A/C#7」「F#m/D7」の部分で、最初のリフに対し、もう1種類別にコードをつけた感じになっていて、こちらの方がよりドラマチックになる。特に「C#7」が効いている。「F#m/D7」もスムーズに弾くために、ギターの場合、「F#m」を高めの10Fセーハの形で抑えた場合、「D7」も10Fセーハの形か、4弦→1弦の順に「7F 7F 7F 8F」と弾く。

続いてBパート。「D」「Ddim7」「A」「A7」「D9」「C9」「B9」「E9」がコード進行。最後の9thの連発はナシでも雰囲気は出る。Beatlesがカヴァーした音源なんかはかなりシンプルに直している。

結局パートはこれだけだ。こんなにシンプルな作りなのに素晴らしい曲だ。おそらくレイ・チャールズはピアノなので、「リフに合わせてコードを弾いていると、結果こういうコード・ネームにになりました」ということなのだろう。「A」のコードとリフのメロディを意識して弾くと自然にこんなコードになる。

2018年11月1日木曜日

Friday On My Mind

Gary Moore [ H.Vanda/G.young ]

The Easybeatsのヒット曲のカヴァーだ。1987年のアルバム『Wild Frontier』収録。

個人的には素晴らしいカヴァーだと思う。オリジナルのEasybeats版はモロに60年代のビート・バンドっぽい感じで、Beatlesの出来損ないのような雰囲気があったが、ゲイリー版は80年代仕様にブラッシュアップされてカッコ良くなっているし、ちょっとダサかったアレンジも見事に修正されている。オリジナルと比較しながら見ていくことにしよう。

まずテンポが随分遅くなった。と言っても、スローになったのではなく、Easybeatsが早すぎたのであって、ゲイリー版は普通に感じる。
そして印象的なギターのリフがキーボードに変わっている。2つめのコードは「D」にまとめられ、「A」の時のちょっとした変化が省略された。あまり効果的でなかったからやめたのだろう。
「G」のところで歪んだ激しいギターが一発入って来る。ハードロック・ゲイリーがカッコいい。
「B7」のところでリード・ギターがやっていたフレーズをシタールの音で入れている。
コーラス・ハーモニーでやっていたオカズもキーボードやシタールになっていて、だいぶ雰囲気が変わっている。

個人的にオリジナルでダサいと感じていたバンドで合わせる部分(「E/C」「AF#/BE」の部分)のアレンジが大幅に変わっていて、「C/G」「AE/AE」になっている。変な凝り方をするのではなく、シンプルにしたということか。

それから、大きな違いだと思うのが、ゲイリーのギター・バッキングがパワー・コード中心、つまり1度5度の音が強調されているということ。これはどういうことかというと、3度がないということは長短の区別が出来ないということで、「Am」→「A」はずっと同じコードに聴こえるし、特徴的な「B7」のところも「B7」なのか「Bm」なのか「B」なのか分からなくなっている。

もう一つ、結構重要だと思う変更は、サビの中に出て来る「Tonight」のコーラス・ハーモニー。3回出て来るが、1回目は「D」の時、2回目は「B7」の時、3回目はまた「D」になる。オリジナル版は、1回目は「to」が「ミソ#」、「-night」が「ファ#ラ」で、2回目は同様に「ミラ」「ファ#シ」で、3回目は「ファ#シ」「ラレ」となる。2回目の下のパートが1回目と同じで、これはつまり「B7」の調性を示す音を省略していることになる。主旋律に対して5度の音だからだ。3回目も同様。そのせいで少し不思議なコーラスになっている。
これに対しゲイリーは1回目から変化しない。メイン・ボーカルも変化しないので、つまり変化しているのはコードだけになる。「B7」の時のコーラスは5度と7度の音になりコード・トーンだ。このあたりはパワー・コードの多用と関連があるかもしれない。こちらの方がずっと現代的で良いように思う。
が、カヴァーしている他のアーティストのものを聴くとどれも原曲に従っているようだが、気にならないのだろうか?原曲へのリスペクトなのか、慣れすぎて違和感を感じなくなっているからか・・・?

サビでは、結構印象的な「F#7」の部分を、オリジナルは「トゥトゥトゥトゥ」とコーラス・ハーモニーでやっていたが、ゲイリーはキーボードで置き換えている。これでイントロからキーボードを使う必然性も出て来るというものだ。

ゲイリー版はこの後ギター・ソロが入る。ソロといっても、ゲイリーにしてはかなり控え目な部類に入る。まず、ドラムだけ残してブレイクし、キーボードでリフのようなメロディを入れる。曲調にも合わせてややエキゾチックな雰囲気。そしてギターが応えるように入る。キーボードとギターの掛け合いだ。
その後が好きだ。同じキーボードのフレーズを繰り返しながら、「Em」「Em」「GonD」「GonD」「AonC#」「AonC#」「CM7」「CM7」と進むのを2回。下降するベースに対し、ギターは5弦7Fから「ミー」「ラシー」「レミー」「ラシー」とどんどん上がっていって盛り上げる。最後は1弦22Fのチョーキングのトリルだ。そして「E」を刻んだ後、6弦開放をアームダウン。最高音から最低音だ。

この曲ではゲイリーのアレンジ力や曲の解釈の力が発揮されていると思う。原曲以上にカッコ良くするカヴァーは最高だ。それにゲイリーが変更した部分のいくつかは私もオリジナルを聴いて同意見だった部分なので、それも嬉しかった。