2004年9月4日土曜日

Practice What You Preach

Testament [ C.Billy/E.Peterson/A.Skolnick ]

カッコいいスラッシュメタルの最高峰と言っても良い曲。スラッシュ全盛の1989年の曲だ。

アメリカのバンドらしく、リフのリズムが少しハネていたり、アクセントがカッコいい。この曲のカッコ良さのカギはリズムだ。ドラムだけを聴いていても幸せになれる。

この曲もスラッシュの鉄則通りカッコいいリフが沢山出て来る。ところどころハーモニーになっているあたりは少し知的なセンスも感じさせる。
「ツツダンダンダン」というアクセントの最初のリフ。4拍全部にアクセントを入れると単純すぎてつまらなくなるように思うが、こうやってリフと合わせることで、分かりやすさプラスカッコ良さみたいなリズムになる。「ツッツダーダー」という感じの「Practice What You Preach」と叫んでいる部分のリフも最高にカッコいい。最初のつっかかる部分と次の伸ばす部分の組み合わせがカッコいいのだ。
どれも単純なので他にもありそうでなかなかない。

この曲の大きな聴きどころの一つはギターソロだ。曲全体の3分の1はソロなのではないかと思うほど長いソロだ。とにかくテクニカルの一言。早弾きのオンパレード。オーソドックスなチョーキングからフルピッキングの早弾き、ハンマリング多様のレガートな早弾き、ライトハンド、スウィープピッキング、アームまで何でもござれの豪華さだが、ギターにあまり興味のない人には長すぎて退屈するかもしれない。

しかしソロが終わるとすぐに元の元気なリフが始まる。MetallicaのJamesっぽいボーカルや元気な掛け声も男くさくて良い。

以前、バンドでライブをやった時に一緒に出演したバンド(いわゆる対バン)がこの曲をやって最高にカッコいいと思ったことがある。自分たちもスラッシュ系バンドだったのだが、完全に食われてしまった。男くさいのにテクニカルな雰囲気も与えるおいしい曲なのだ。

2004年9月3日金曜日

Wake Up Dead

Megadeth [ D.Mustaine ]

秋の夜長にスラッシュメタル。第3弾はこれもスラッシュの代表曲ともいえる名曲だ。
Metallicaのライバル的存在として君臨したMegadethで、1986年のアルバム『Peace Sells.. But Who's Buying?』の1曲目だ。

ほとんどリフだけで出来ているような曲だが、とにかくカッコいい。ボーカルなんて聴かなくても良い。とにかくリフ!だ。

まず最初にドラムのイントロから始まって、囁き系のボーカルが不気味さをかもし出すリフに入る。このリフはありふれていて特にヒネリもないだけに、この効果音的ボーカルはとても良い。
すぐにギターソロに入るが、個人的にはどうでもいい。

カッコいいのは次だ。リフの合間にリズムが止まりギターのツインハーモニーが出て来る繰り返し。ハーモニーがカッコいい。
このパートが次のパートを誘い、全員で同じリフを刻む。まさに「刻む」という表現がピッタリで、全員が頭を振り振り弾く様が思い浮かぶ。リフの合間の「カカカカ」というミュート音が最高だ。その昔に組んでいたバンドでこの曲をコピーしたことがあったが、ここがやりたくてやったようなものだった。歌詞もなく黙々とリフを刻むのが良い。

この後、ギターソロの掛け合いになる。以前バンドでやった時は、掛け合いだからやらないわけにはいかず、後半部分を弾いた覚えがある。それ以外はリフが弾きたかったからソロは弾かなかったのではないかと思う。その1回だけのソロはあまり深く考えず勢いだけで弾いた。気持ちはリフに行っているのだ。

ソロが終わるとリフは超高速に変わる。もともとかなり速いテンポなのにこのパートは16分音符のオンパレードだ。スピード感のあるハーフ・ミュート奏法で弾き切る。
同じ音を連発している部分は良いが、スケールをなぞったオカズのフレーズは速いだけに大変だ。

この後、ボーカルらしいパートを挟み、一度ブレイクをしてからまた新しいリフが登場する。ドッシリとヘヴィなリフだ。ここにギターソロが入るのだが、これはなかなかカッコいい。複雑そうに聴こえるライトハンドのパートの直後にオクターヴになるところが印象的だ。

この曲のビデオ・クリップを見たことがあるが、薄暗い場所のアヤシイ雰囲気の中で、金網の中でバンドが演奏し、その周囲を男たちが狂ったように揺さぶっているという、なんだか危険な感じのする映像だった。曲のカッコ良さに一役買っていたすぐれものクリップだと思う。

2004年9月2日木曜日

Welcome To Defiance

The Almighty [ R.Warwick/P.Friesen ]

ヘヴィ第2弾はイギリスのThe Alimightyだ。スラッシュがほぼ死滅した後の1994年の曲だが、曲調はほとんどスラッシュだ。
しかし一番変わったと思うのはリズムだ。バスドラを多様してハネた感じ。ライブハウスで踊り狂っているバカども(←逆説的誉め言葉です。マジで)が目に浮かぶようだ。
The Almightyを知ったのは人気が出て少ししてからで、というかこの曲で知ったのだが、初めて聴いた時は「これが新しい時代のヘヴィ・ミュージックか」と感心したものだ。アメリカのバンドは比較的リズムがハネていたり踊れそうなものもあったのだが、スラッシュというととにかくヘヴィで激しいという印象が強く、実際、イギリスをはじめヨーロッパ勢の曲は直線的なものが多かった。ダンス・ミュージックとはかけ離れたクラシックが盛んな地域だけある。
それだけに、この曲のメインリフでのリズムは新しさを感じた。細かなドラムはその後の音を伸ばしてドラムがなくなる部分との対比になっている。こういう緩急もヘヴィ・ミュージックの醍醐味だろう。

スラッシュによくあった休符の醍醐味はこのバンドにもしっかり生かされている。休符が気持ちいい。ほんの少ししか出て来ないがそれが逆に効果的だ。思わず「はっ」とする。

「Defiance」とは名詞で、「権威や敵対する者への果敢な抵抗、反抗、挑戦」といった感じの意味だ。周囲に負けず自分の生き様をまっとうしようという、まさに「これぞ男」という感じの歌詞だ。
このバンドは本当に男くさい。鋼のような頑固さと汗の臭いがピッタリだ。男のためのバンドのようなもので、もちろん女性ファンもいるだろうが黄色い歓声は似合わない。
風貌など気にせず、ただバカのように一直線。現実的にはなかなか出来ないことだけにある種の憧れを持つ。

アルバムのジャケットは『星の王子様』かと思うような可愛いらしさだが、その中身は強烈なまでの精神性と骨太、汗くさロックが満載。そういうギャップもまたイギリス人っぽくて面白いところだ。

2004年9月1日水曜日

Seemingly Endless Time

Death Angel [ R.Cavestany ]

オリンピックも終わり夏も終わり、気分を新たにして、ヘヴィィィィィ・ミュージックだ!なぜか気分は荒くれ系。
心に浮かぶザクザク・リフはサンフランシスコ・ベイエリア出身バンド・Death Angelだ。バンド名は『死神』。ちょっとおバカな名前だが、どうでもいい。この曲は1990年のアルバム『Act III』のトップを飾ったもので、当時のメンバーはMark Osegueda(Vo), Rob Cavestany(G), Gus Pepa(G), Dennis Pepa(B), Andy Galeon(Dr)。相当若かったはず。

当時はスラッシュ・メタルと呼ばれていたジャンルで、スラッシュ(Thrash)は切り裂くの意味。ヘヴィメタル・ミュージックの中でも特に過激で激しい音楽で、切り裂くばかりの切れ味を持っていたのだが、90年代中盤までに絶滅に近い状態になってしまった。もっと重く暗いグランジとか囁き系を入れたゴシック・メタル、もっと極端なデス・メタル等に進化(?)していき、スラッシュという言葉も死語になってしまっている。
言葉の問題はどうでもいいのだが、音楽的にほとんどがEmキーだし、音はもともと似たような歪みギターだし、リフはカッコいいけど、そればかりでは長続きしないけど歌メロは単純だしリズムも似ている。そのあたりが衰退の理由かと思う。例えばゴシックのボーカルなどはかなり斬新だ。個人的好みは別だが。

しかしこの曲は多彩で、とにかくカッコいい。Metallica等もそうだが、生き残ったバンドの曲はよく考えられていて面白い部分が沢山ある。

なぜか波の音で始まる曲だが、そこに「ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッ」とヘヴィなギターが入って来る。この後、激烈なドラムとともに一気にハイテンションになるが、好きなのは次の展開からだ。ドラムが止まってリフが変わっていく。リフだけでもこんなにカッコ良く聴かせることが出来るという好例だ。
この後も次々とカッコいいリフが登場する。ボーカルは味付け程度で、リフに集中して聴きたくなるのが特長と言えるかもしれない。

中盤ではリズムが半分になる部分がある。特にヘヴィな曲ではこの遅いリズムがたまらなく好きだ。Black Sabbathに通じる重さを感じさせる。勢いを抑えることで、次にブッ飛ばすところまでエネルギーをためている感じが良い。

スラッシュにおいて、ギター・ソロはどうでもいい。ギター大好き人間のセリフではないようだが、個人的にはリフこそすべて。メロディックなソロは下手をすると曲をブチ壊しかねない。ソロならリフの延長のようなものや、シンプルでコードに沿った単純な音列を早く弾くとか、その程度で良いと思っている。

それよりもソロの後にあるリフの決めのところが格好いい。全員で合わせる箇所だ。スラッシュにはありがちではあるが、少し変な音(デミニッシュっぽい)を強調してジャッと音を切る休符は最高にカッコいい。うるさい音楽であればあるほど、音のない休符がまた生きて来るわけだ。クラシックのオーケストラがダイナミクスたっぷりに演奏するのと同じ理屈だ。