2018年7月3日火曜日

Lucy With The Sky With Diamonds

The Beatles [ J.Lennon/P.McCartney ]

不思議な雰囲気の漂う曲だ。中学生の頃、まるで万華鏡のような曲で、ヴォーカルは猫のようだと感じたものだ。
まず不思議なタイトルだが、 John の息子の Julian Lennon が4歳前に描いた絵に触発されたのだとか、タイトルの頭文字をとると「LSD」になるとか色々あるが、ここでは音楽のみを取り上げる。

ハープシコードのようなイントロの音色は、電子ピアノにプリセットされていた「Music Box」という音色だという。イントロはリズム楽器がないため、これが何拍子なのかも分からず、ベースが入って来て分かるという具合。このベースこそ、この曲の最重要楽器だと思う。
曲のキーは「A」。これに対し、ベースは1小節に1音しか出て来ないが、「A音」「G音」「F#音」「F音」と下がる。
「F音」?
キーが「A」なのに? よく市販の楽譜には「AonF」とコード・ネームが書いてあるが、キーボードもここだけ「E音」は外して弾いているので、ベース音だけではなく「Aaug」みたいな扱いになるはずだ。しかし「aug」の使用例としても「?」なので単に「F」と解釈するべきか。しかしそれにしても「F」にしては「C#音」なのでこれも当てはまらない。いずれにしてもこの部分がとても不安定で、不思議な感覚を増幅させる。実に印象的だ。

この部分を繰り返しながら、「Dm」「DmonC」を挟み、Bメロへ。何とイキナリ転調する。それも全体が半音や1音上がるというようなものではなく、完全に別個なパート、別個のメロディでだ。
スイングするようなリズムになって「B♭」「C」「F」「B♭」「C」「G」と来てようやくここで安定するのかと思いきや、またしても転調し、しかも8ビートに変わる。サビだ。
「D」を挟んで、「G/C」「D」を繰り返すサビになる。ベースとギターがユニゾンで上昇するリフを弾いていて、完全にロックだ。ところが不思議なことにまた最初のキーが「A」の部分に戻るのだ。このあたりが万華鏡のように感じる部分だろう。

その他、サウンド・メイキングとしては、シタールあり、スライド・ギターあり、レスリー・スピーカーあり、そしてもちろんシンプルなアコギのストロークもあり多彩。
極めつけはボーカルだ。John のダブルトラッキングになっているが、恐らくテープ・スピードを違えて録音しているいるのだろう。実際の John の声より甘い声になっているが、サビはノーマルだ。明らかに狙って変えている。当時、テープ・スピードを変える装置もなかったが、レコーダーに供給する電圧を変えることでテープ・スピードを変えたという。凄いアイディアだ。
このテープ・スピード操作も不思議さを出している要因の一つだと思う。

2018年7月2日月曜日

Stand By Me

John Lennon [ Ben E. King/Jerry Leiber/Mike Stoller ]

オリジナルは Ben E. King で、更に遡れば苦黒人霊歌の「Lord,Stand by Me」という曲になるが、そういうことは置いておいて、ここでは John Lennon がカヴァーしたバージョンを取り上げる。
John のバージョンは1975年に録音されており、とても格好良くてヒットもした。

When the night has come and the land is dark
And the moon is the only light we'll see
No I won't be afraid, no I won't be afraid
Just as long as you stand, stand by me

夜が訪れて大地が暗くなる時
月明りしか見えなくなる
恐れはしない
ただ君がそばにいてくれれば

有名な出だしの部分の歌詞だ。実に素直で素朴で説得力がある。1986年に River Phoenix で有名になった映画『Stand By Me』そのままの若者の危うさ、不安定さを感じさせるような微妙な空気感がある。

曲の組み立ては実にシンプルで、コード進行は「A」「A」「F#m」「F#m」「D」「E」「A」「A」を繰り返す。「So darlin', darlin'」の部分だけ「A」を引っ張って、後は繰り返しだ。

原曲はベース・ラインが印象的だが、John のバージョンは少しテンポ・アップして、アコースティック・ギターが全面に出ている。カッティングがカッコいいが、慣れないと意外と難しいかもしれない。ダウンストロークの時はブラッシング(ほぼミュートしてコード・カッティング)でアップストロークの時にコードの音を出す感じ。もう少し厳密に言うと、ダウンストロークの時も、普通にコードの音を出しておいて、出した瞬間に右手の親指の付け根あたりでミュートする感じだ。(単に右手でミュートしてコードを鳴らさないようにしても感じは出る)

ソロはスライドで、原曲を少し意識したようなプレイだ。コードを崩したような音使いで印象的で、似たようなプレイをしたくなるメロディだと思う。原曲のストリングスによるソロよりずっと素晴らしい。

ボーカルの聴かせどころは何と言っても「So darlin', darlin'」だ。ほとんどこの部分がカッコ良いかどうかですべてが決まると言っても良いくらいだ。
Johnのボーカルはここが最高にカッコいい。ちょっとだけハスキーな感じでワイルドなシャウトをしている。この曲はカヴァーも非常に多く、色々な人が歌っているのを聴いたが、Ben E. Kingを含めてもJohnのバージョンが一番カッコ良く聴こえる。