2018年3月29日木曜日

Let It Be

The Beatles [ J.Lennon/P.McCartney ]

淡々としたピアノに乗せて Paul が訴えるように歌う、少し悲しげなバラードに聴こえるのは曲の背景を知っているからだからだろうか。
Beatles 最後のアルバムのタイトル・トラックだが、アルバムが出た時にはすでにバンドは瀕死の状態。末期状態の時に録音されたまま放置されていてテープの山を整理したものがアルバムになった。そして間もなく解散。 「なすがままに」というのは時代の流れに乗った Beatles そのものを歌っているようでもある。

この曲のメイン楽器はピアノ。ドラム、ギター、ベース、オルガンも入っているが、断然ピアノの印象が強い。
発売当時は「子供のピアノの練習曲」と蔑まれたようなシンプルなピアノだが、よく聴くとちゃんと工夫もあって、同じに弾くのは意外に難しい。
右手はコードの4分打ちがメインで、シンプルこの上ないが、左手がその合間をぬって動いている。Paul がベーシストだからか、彼のピアノは左手が独特。しかも左利きだから、少し強めの音になる。

イントロの場合、右手はコード、左手はその合間に音を入れつつルート音が中心だが、例えば最初の「C」から次の「G」へ行く時に一瞬左手の「F音」が入る。最初はコードトーンの「E音」と思っていたが、そんな単純な雰囲気ではない。
アクセントの付け方も、2拍目と4拍目を結構強調するのは、体の中に8ビートが聴こえているからに違いない。
繰り返しの多い伴奏だが、毎回微妙に違うのは生演奏ならではか。繰り返しの間の「C音」の連打も、超単純だがカッコいい。

この曲はアルバムでのものの他、シングル版は別バージョンになっている。なぜかアルバム・バージョンが一般的のようだが、個人的にはシングル・バージョンが好きだ。細かな違いは色々あるが、一番の違いは間奏のギターだ。オーソドックスなペンタトニック・ソロのアルバム・バージョンに対し、シングルの方はアレンジしたらしいメロディで、こちらの方が George らしい気がする。
また、この2つ以外にも映画『Let It Be』での演奏や、『Let It Be Naked...』のバージョンもあるのでご参照のほどを。

2018年3月10日土曜日

Time and Word

Anderson Bruford Wakeman Howe [Jon Anderson / David Foster ]

YESの2ndのタイトル・トラックだが、ずっと後に Anderson Bruford Wakeman Howe(いわゆるABWH)でのライブ『An Evening Of Yes Music Plus』のバージョンが素晴らしい。オープニングのJon のソロ・コーナー(オープニングからソロ!)の中で観客席から登場し、歌いながら歩いてステージに上がって来る演出。バックはメインがギターで、少しのキーボードがあるのみ。曲の良さが浮き彫りになるアレンジだ。
Jon の伸びやかなボーカルが夕暮れの屋外ステージ(カリフォルニアの Shoreline Amphitheatre)の雰囲気にピッタリだ。

YESのバージョンを聴くと、プログレバンドを自負するだけのことはあってソレっぽいが、しかし70年代初頭(録音1969年)の古くさいアレンジで、工夫は凝らされているが、いまいちピンと来ない。ところが、このライブ・バージョンでは、余計な装飾は一切削ぎ落とされプログレっぽさはまったくないが、逆に曲の素晴らしさが目立つ結果となった。

YESのバージョンはコード進行も平坦で、ほとんど「G」一発で、ところどころに「Em」や「D」が出て来る程度。サビは「C」「Am」「F」「C」という感じ。
ABWH でのものも、同じ曲なのでそう違いはないが、様々な工夫が見られる。まず、ずっと「G」のところは「G6(1弦開放を入れる)」に4拍目だけ「Fadd9」にして変化を出している。
間のパート(YES もほとんど同じ)は「Fm」「Em」「C」「Ddim」「Fm」を挟んで「Em」から「E」へ。そしてサビになる。
サビはYESのバージョンと多少変わっていて、「C」「Em」「Amadd9」「F」「C」という感じになる。「Em」を入れたことでドラマチックになったし、「Am」もちょっとした工夫で爽やかな夕方の雰囲気にピッタリになった。2弦の開放を入れただけかと思う。

個人的には是非カヴァーしたい曲だが、これが難しい。特に歌の平坦な部分が出来ない!

2018年3月9日金曜日

Africa

TOTO [David Paich / Jeff Porcaro ]

名曲だ!素晴らしい。まず歌詞。難解でよく分からないという意見が多いようだけど、あまりに具体的に詳細に理解しようとすると分からなくなるのでは?
曲の発表当時のアフリカのイメージは、発展途上国(当時は「後進国」と呼んでいた)で、飢餓が発生したり、政情が不安定になったり、病気が発生したり、かなり過酷な地であり、しかしそのアフリカの大地でこれから生きてゆこうとする若者を題材に、アフリカの未来の希望を歌った曲かなと思う。
飛行機でやって来る彼女は文明の国からやって来るわけで、老人はエジプト等の歴史あるアフリカを表わし、ドラムはアフリカの文化、野犬はアフリカの野性、雨はアフリカの希望。特に広大な砂漠のあるアフリカにとって雨は恵みそのものだ。

曲を見ていこう。まず冒頭のキーボードのリフ。「A」と「C#m」でその間に「G#m」の音が入る感じ。アコースティック・ギターなら1,2弦の開放を多様して弾きたくなる。歌が入ってからは「B/D#m7」「G#m7/B」「A/E」「B/A・C#m」を3回繰り返し、4回目は「B/D#m7」「G#m7」「A/C#m」「C#m」となる。
サビは「F#m/D」「A/E」を繰り返し、一番最後の回だけ「F#m/D」「A/C#m」「E/F#m」「A/C#m」となる。

印象的なのはサビでのハーモニーだ。
高音の同じ音を連発するメインに対し、起伏があるハーモニー・パートが面白い。メインは2音しか出て来ず、下がるメロディだが、ハーモニーの方はどちらかというと上昇するようなメロディだ。つい歌いたくなる。

2018年3月6日火曜日

ぼくのミシシッピー

日下まろん [服部克久/山川啓介 ]

1980年のTV番組『世界名作劇場』の中の『トム・ソーヤーの冒険』のエンディング曲。豪快・痛快・爽快といった感じの物語で、小学生だった私も熱心に見て、19世紀半ばのアメリカに憧れを持ったものだ。
この曲は番組の最後に流れる恒例の曲で、トムとハックが川沿いを走っているだけのシーンをバックに流れる。オープニング曲も元気いっぱいでなかなか良い曲だが、ちょっと静かな雰囲気のこの曲は更に素晴らしい。まず歌詞が良い。

人が生まれる前から、流れているんだね
空より広い豊かな ミシシッピー・リバー
君はいつでも明日を 指さす矢印さ
知らない世界へ行こうと 歌ってる
きっといつか 行くよぼくも
君が目指す海へ
そして君に負けないくらい
遠く旅をするんだ

未来がある若者って良いよね、と感じさせてくれる。それは年をとった者の若さへの憧れなんだろうけど。「明日」とか「知らない世界」とか「きっといつか」みたいな曖昧で抽象的な言い方がピッタリはまる。

「C」「Am」「F」「G7」「C」「Am」「F/Fm」「C」というのが最初の部分。ギターがよく似合いそうなカントリーの雰囲気のある物語なので、この曲もシンプルでカントリーにも合いそうな進行だ。「ミシシッピー・リバー」のところが、「F/Fm」のところで、メジャー→マイナーという進行が泣かせる。
次の部分は「C」「Am」「F」「G7」を繰り返す相変わらずのシンプルさだが、次のサビで少し変わる。
「C」「Am」「F」「G」「Dm」「Fm」「C」「G」「F」「C」となる。
まず最初の部分だが、「きっと」が「ソドレ」で次の「いつか」の「い」が「ファ」。Cに対し「sus4」の音だ。次の「Am」の部分でも同じ繰り返し。どちらもコード・トーンの一つ上で、コードに戻りたくなる感じが良い。「Dm」「Fm」の部分も同様のパターンで大いなる希望の未来へ向かう若者の歌にピッタリ来るような雰囲気が出ている。
そして直後の「C」で突然演奏が止まり、歌だけになる。「そこから先は一人で行くんだよ」という感じ。そして余韻を残すような「F」もまた良い。キリスト教音楽の「アーメン」のような「F」だ。

2018年3月5日月曜日

さあ太陽を呼んでこい

東京放送児童合唱団 [山本直純/石原慎太郎 ]

1963年にNHKの『みんなのうた』で紹介された曲らしいが、私は小学校の音楽の授業で習った。長い間誰が歌っていて誰が作った曲なのか、タイトルすら記憶になかったのだが、最近、覚えていた歌詞から検索して分かった。作者も蒼々たる面々で驚いた。「ララララ」の部分も記憶になかったので「こんな曲だったのか」と少し驚いた。
小学校5年生くらい(1980年頃か)、初めて徹夜した朝に空が明るくなって来るのを見て感動した時にこの曲を思い出したので印象に残っていた。

歌詞は、若者がこれからの人生を夜明けに例えて漕ぎ出して行くような内容で、とてもパワフルだ。しかし小学生の私の印象に残っていたのは「どこかで誰か口笛を」という夜のミステリアスさや、「最後の星が流れてる」という時の変わり目の感動等だった。「人生の歌」というも、実は検索して知った最近のことだ。せっかくの石原慎太郎の詞をまったく理解せずにいた。
ただ、弁解させてもらうと、その原因はミステリアスに感じさせた曲調にあると思う。当時、他の音楽の授業で歌っていた曲とは違う曲調だった、ということだ。

コード進行を見るとそれが分かる。歌い出しのところから、「Fm/C」「Fm/C」「Fm/C」「Fm」と来て、「C」「Fm」「C」「Fm」と続くのが前半。徹底的に「Fm」と「C」で出来ていて、しかもキーがマイナー(Fm)の中、「気持ち良さそに」の部分から「C」が先行するあたりから少しだけミステリアスな雰囲気もある。(このあたりは歌詞の雰囲気の印象の方が強いが)
この次の場面で「F7」「B♭m」「F7」「B♭m」と、いきなり「Fメジャー」だ。これがかなり効いている。
更に「E♭7」「A♭」と感動的に攻めて、最後に「C/Dm・Em」から「Fm」に戻る。この戻し方も、高らかに宣言しているようで更にドラマチックだ。
前半に単調な展開で印象づけておいて、後半に一気にドラマチックに攻める手法が見事なコード進行といえる。個人的には「E♭7」「A♭」の部分を「C#」「F#」にしたい気はするが・・・。

この後の「ララララ」の部分は歌詞に出て来る「口笛」なのだろうか。メジャー・キーになっていて、「F」「F」「B♭」「F」「F」「B♭」「G」「C」のようなコード進行だ。メジャーから戻すやり方は歌の時と同じ「C」から登っていく方法。

2018年3月3日土曜日

Love

John Lennon [ John Lennon ]

敬愛する John Lennon のラブ・ソング。ラブ・ソングというには生々しく恐ろしく素直というか素朴だ。超シンプルで淡々としている。

演奏もほとんどピアノだけでOKというくらいにシンプル。
イントロはピアノのフェードイン。「F#m」「C#7」「F#m」「D7」「G」「A7」「D」「F#m」「Em7」「A7」「D」というコード進行で、超シンプルなアルペジオでとても優しい音で弾いている。
歌が入っても同じ繰り返しで、Bメロだけちょっと変化がある。「F」「G」「D」「D」「Em7」「G」「D」「D」となって元に戻る。すぐに元に戻るところが「らしい」と思う。
歌が終わった瞬間に、再びフェードインする感じでイントロと同じピアノのアルペジオが聴こえて来る。
「愛」とは「かくもはかなく、しかし復活して繰り返される」という感じだ。

歌詞も恐ろしくシンプルで、「Love is real」「Real is love」のように「real」が「feeling」とか「wanting」とか「tuch」等に変わっていくだけ。それだけに、それぞれの単語に深い意味を求めてしまう。
唯一、ちょっと変わるBメロだけ歌詞もほんの少し変化を見せる。

Love is you
You and me
Love is Knowing
We can be

ここだけ他と違うパターンになっていて、「you」と「me」が出て来る。もちろん John と Yoko なのだろうが、「you」と「me」なので、誰と誰でも良い。「私」と「私の愛する者」でももちろん良いが、それだけではなく、相手が「家族」「友人」等はもちろん、「気に入らない奴」「嫌いな奴」「憎い奴」「異教徒」「侵略者」のような相容れない相手でも通じることに気づかされる。シンプルすぎて実に奥が深い。

2018年3月2日金曜日

Wind Of Change

Scorpions [ Klaus Meine ]

Scorpions の代表曲。まさに時代が変わった瞬間を歌ったパワー・バラード。ソビエト連峰が終わり、ベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終結した。TVのニュースだけだが、それを目にした私たちには涙なくしては聞けない曲だ。
強烈な喜びと感動と熱気の中、曲はとても静か。Klaus が淡々と歌うところが心の底から喜びを表わしている感じがする。

I follow the Moskva
Down to Gorky Park
Listening to the wind of change

この3行目が泣かせる。

An August summer night
Soldiers passing by
Listening to the wind of change

Take me to the magic of the moment on a glory night
Where the children of tomorrow dream away in the wind of change

簡単な英語だから訳すまでもなく泣ける。

さて曲だが、ドイツのバンドはアメリカと違ってマイナー調の曲が日本に通じるところがある。マイナーの使い方だろう。
まず最初はシンプルに「C」「Dm」「C」「Dm/Am」「G」となる。 サビは「C/G」「Dm/G」「C/G」「Dm/G」「Am/F」「G7」。
展開するBメロは「Am」「G」「Am」「G」「C」「Dm」「E7」と来てギターソロへ入る構成。
ギターソロは「F/G」「Em/Am」の繰り返し。(2つ目が「Am」になったりはするが)

どれもシンプルなのに名曲に感じるのは、やはり曲の背景が成せる業か。
最初のサビからAメロに戻るちょっとしたつなぎのメロディというかコードで「D音」つまりコードで言と「C9」になっているところが印象的で好きだ。こういうちょっとしたところがメロディックなのもドイツのバンドならでは。
イントロとアウトロの口笛のところは、「F」「Dm」「F」「Dm」「Am」「Dm/Am」「G」だが、アウトロは最初の4小節で切れている。「to be continued」といった感じだ。