Gary Moore [ H.Vanda/G.young ]
The Easybeatsのヒット曲のカヴァーだ。1987年のアルバム『Wild Frontier』収録。
個人的には素晴らしいカヴァーだと思う。オリジナルのEasybeats版はモロに60年代のビート・バンドっぽい感じで、Beatlesの出来損ないのような雰囲気があったが、ゲイリー版は80年代仕様にブラッシュアップされてカッコ良くなっているし、ちょっとダサかったアレンジも見事に修正されている。オリジナルと比較しながら見ていくことにしよう。
まずテンポが随分遅くなった。と言っても、スローになったのではなく、Easybeatsが早すぎたのであって、ゲイリー版は普通に感じる。
そして印象的なギターのリフがキーボードに変わっている。2つめのコードは「D」にまとめられ、「A」の時のちょっとした変化が省略された。あまり効果的でなかったからやめたのだろう。
「G」のところで歪んだ激しいギターが一発入って来る。ハードロック・ゲイリーがカッコいい。
「B7」のところでリード・ギターがやっていたフレーズをシタールの音で入れている。
コーラス・ハーモニーでやっていたオカズもキーボードやシタールになっていて、だいぶ雰囲気が変わっている。
個人的にオリジナルでダサいと感じていたバンドで合わせる部分(「E/C」「AF#/BE」の部分)のアレンジが大幅に変わっていて、「C/G」「AE/AE」になっている。変な凝り方をするのではなく、シンプルにしたということか。
それから、大きな違いだと思うのが、ゲイリーのギター・バッキングがパワー・コード中心、つまり1度5度の音が強調されているということ。これはどういうことかというと、3度がないということは長短の区別が出来ないということで、「Am」→「A」はずっと同じコードに聴こえるし、特徴的な「B7」のところも「B7」なのか「Bm」なのか「B」なのか分からなくなっている。
もう一つ、結構重要だと思う変更は、サビの中に出て来る「Tonight」のコーラス・ハーモニー。3回出て来るが、1回目は「D」の時、2回目は「B7」の時、3回目はまた「D」になる。オリジナル版は、1回目は「to」が「ミソ#」、「-night」が「ファ#ラ」で、2回目は同様に「ミラ」「ファ#シ」で、3回目は「ファ#シ」「ラレ」となる。2回目の下のパートが1回目と同じで、これはつまり「B7」の調性を示す音を省略していることになる。主旋律に対して5度の音だからだ。3回目も同様。そのせいで少し不思議なコーラスになっている。
これに対しゲイリーは1回目から変化しない。メイン・ボーカルも変化しないので、つまり変化しているのはコードだけになる。「B7」の時のコーラスは5度と7度の音になりコード・トーンだ。このあたりはパワー・コードの多用と関連があるかもしれない。こちらの方がずっと現代的で良いように思う。
が、カヴァーしている他のアーティストのものを聴くとどれも原曲に従っているようだが、気にならないのだろうか?原曲へのリスペクトなのか、慣れすぎて違和感を感じなくなっているからか・・・?
サビでは、結構印象的な「F#7」の部分を、オリジナルは「トゥトゥトゥトゥ」とコーラス・ハーモニーでやっていたが、ゲイリーはキーボードで置き換えている。これでイントロからキーボードを使う必然性も出て来るというものだ。
ゲイリー版はこの後ギター・ソロが入る。ソロといっても、ゲイリーにしてはかなり控え目な部類に入る。まず、ドラムだけ残してブレイクし、キーボードでリフのようなメロディを入れる。曲調にも合わせてややエキゾチックな雰囲気。そしてギターが応えるように入る。キーボードとギターの掛け合いだ。
その後が好きだ。同じキーボードのフレーズを繰り返しながら、「Em」「Em」「GonD」「GonD」「AonC#」「AonC#」「CM7」「CM7」と進むのを2回。下降するベースに対し、ギターは5弦7Fから「ミー」「ラシー」「レミー」「ラシー」とどんどん上がっていって盛り上げる。最後は1弦22Fのチョーキングのトリルだ。そして「E」を刻んだ後、6弦開放をアームダウン。最高音から最低音だ。
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