2005年3月31日木曜日

Boku No Atama

Paul Gilbert [ P.Gilbert ]

Paul Gilbert といえば、泣く子も黙る早弾きギタリスト。難解な超高速フレーズをやすやすと弾いてしまう凄腕で、90年代には人気バンド Mr.Big で活躍、現在はソロで精力的に活動している。

その彼のニューアルバムの中の1曲がこれである。最初は Beatles のカバー「It's All Too Much」に興味がいっていたが、しかし「Boku No Atama」である。もちろん日本語の「僕の頭」の意で、歌詞も全部日本語。

以前、一時的に駒込や烏山に住んでいたくらいの日本好きで、寿司と焼そばと Puffy が好きで、Mr.Big の初来日時にはガクラン風の衣装を着たりする彼とはいえ、日本語とは! 日本語を勉強しているという噂はあったが、日本語スクールにまで通っていたとは・・・!

そのスクールで、「このギターは木で出来ています」「あなたの靴は何で出来ていますか?」というフレーズを習ったらしい。それを早速曲にしようというのが凄い。
そこで考えたのが「僕の家族は変な人で出来ています」というもので、しかし日本語として少し変だと指摘を受けたらしい。英語ならありそうなフレーズだが、確かに日本語では「出来ています」がおかしい。家族だから「構成されています」とか、「変な人たちです」と変えてしまわなければならない。
それで次に考えたのがこの「僕の頭はトマトで出来ています」だったという。

さすがに頭がトマトで出来ている人は考えることが違う。
トマトで出来ているという発想が凄いのではない。彼にとって未知の言葉の響きをすぐにメロディにしてしまうところが凄い。
彼のメロディに乗ったこの言葉は「僕の頭は~、トマト~で、出来ている」と、伸ばすところが実に自然だ。明治・大正の頃の作詞・作曲家は言葉の切れ目でフレーズが区切られるように気をつけていたというが、まさにソレだ。実に言葉がよく乗っていて聞き取りやすい。英語っぽいリズムに憧れる今風の日本語ポップスとはまったく逆の手法だ。日本語に慣れていない者ならではなのだ。

「でもトマトの方が、ナスより好きだよ」の接続詞「でも」が間違いではないかなどという些細な指摘は野暮だ。
それより、サビのハーモニー部「あなたの頭は何で出来てるか?」の Beatles チックな部分を聞いてほしい。重厚なハーモニーのせいでゴージャスになり日本語の曲っぽくない。考えてみれば日本のポップスはたいてい2声で3度のハモりだ。欧米はキリスト教の音楽の本場だから重厚なハーモニーが得意で、そのあたりも日本の曲と違う印象になる要因なのだろう。

このハーモニー部などは Paul がスクールで習ったフレーズそのまんまだ。最初の「僕の頭は~」の部分も習ったフレーズそのまんまなので、結局 Paul のオリジナルは「でもトマトの方が~」の部分だけということになる。

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