2018年9月25日火曜日

Imagine

John Lennon [ John Lennon ]

超有名曲で、John Lennonの理想の世界を表わしたような曲。静かに切々と語りかけるようなPVも印象的。
「Happy Xmas」という曲の歌詞の中に「War is over, if you want it」というのがあった。「戦争を終わらせるには(武力や政治や宗教の思惑が絡んだ難しい話しではなく)、ただ、あなたが想うだけでいい。その「あなた」が世界中にいれば自然に戦争は終わる。(逆に言えばやりたいヤツがいるから戦争は起こるということだ)」というような意味で、「ただ想うだけでは何も変わらない」という反論があるだろうが、まず想うことが大切で、それが沢山の人に広がれば力(Power To The People)になるという考え。
これと同じく、「人の想い」のようなものを大事にした内容だと思う。この曲も「想像してごらん」と優しく呼びかけ、「しがらみや制限がない世界を想像しよう」と呼び掛ける。ただ想像するだけでは何もならないと思うかもしれないが、想像すら出来ないのでは話しにならない。まずは第一歩として重要なのだ。
ジョンは静かに語りかける。

You may say I'm a dreamer
But I'm not the only one
I hope someday you'll join us
And the world will be as one

こういうことを想像していると心が落ち着き、和らぎ、安らかになるようだ。
ジョンは決して強制しない。「神を信仰しないと地獄へ落ちるぞ」とも言わない。「あなたもいつか仲間になれれば」と願うだけ。

「想うだけ」「想像するだけ」「願うだけ」というと、まるで無力なもののようだが、それがすべてのスタートになる。「世界が一つに? 無理に決まってるじゃん」というのでは何も始まらない。「無理と思ってもいい。でも、ただ想像するだけなら出来るよね? やってみよう」ということなのだ。

曲はこれ以上ないくらいにシンプルだ。
最初は「C」と「F」だけ。一瞬「シ」の音を含めた「CM7」の音になるが、コードの流れをつけるための「シ」だろう。
「ラ シ♭ シ」が少し浮遊感を感じさせて、どことなく夢の世界にいるような気分にさせる。そう、そこは夢の世界かもしれないし、想像の世界なのだ。

次のパートも「F」からベースだけ下がっていくような音使いで、「F」「FonE」「FonD」「F」「G」「G7」となる。よくコピー譜なんかでは「FonE」を「Am」、「FonD」を「Dm7」にしてあるものを見かけるが、あくまでジョンは「F」から下がっていくだけのイメージで作っていると思う。

「You may say」のところからがキレイで、コード進行は「F」「G」「C」「E7」の繰り返し。ゆったりと、淡々としている中だと「E7」が劇的に聴こえる。

ベースもドラムも最低限という感じで極めてシンプル。それだけにピアノの存在感が大きい。
ピアノもシンプルすぎるくらいだが、こうなると弾き方の強弱まで真似したくなる。

実際の音だが、出だしの「C」の音は、中央の「ド」のオクターヴ下と2オクターブ下の「ド」を左手で抑え、そのすぐ右(高い音)の「ミ」と「ソ」を抑える。つまり、中央から高音側は何もない。意外に低い音だ。裏拍の「ド」は左手の親指だけ。小指の「ド」はずっと伸ばして、コードチェンジの時だけ鳴らす。ヘヴィすぎないように優しめで(聴こえないのはダメ)。そしてどの音もとても深いタッチで弾く。「ラ シ♭ シ」はちょっと軽めだ。
「F」になっても左手はずっと変わらず、右手がちょっとだけ変わる。ピアノをやっている
人はすぐ音を沢山重ねたがるが、この曲はシンプルさが肝。ピアノ・テクニシャンには退屈極まりない曲だろうが、ほとんど和の侘び寂びの世界のようにシンプルさを追求する。オブリガードもソロもいらない。

この曲は「天国がないのを想像してごらん」とか「宗教がないのを」という歌詞があるために、宗教者からは不評だ。宗教を否定するということは、共産主義者だとか、イギリスでは葬式では使用してはいけないとか、色々言われているが、そういうことではなく、本来、宗教というのはもっと自由であるべきもので、権威づけなくても、立派な教義がなくても、信じればそれは宗教だ。「キリスト教の教えでは」とか「仏教では」と考えるから小難しくなってしまうが、それは宗教が生まれてから時間が経ち過ぎて複雑化しすぎているからだと思う。
この曲で歌われているように「想像してごらん」ということ自体が実は宗教だ。ジョンは決して宗教を否定しているのではない。宗教にまつわるシガラミとか権威とか掟とか上下関係とか、そういう面倒くさいものを嫌っているだけで、本来の宗教心は自分の心の中だけにあるものだ。このあたりは小乗仏教の考えにも近いかもしれない。

「いつの日か世界から戦争がなくなり、一つになったら」と願うこと自体が宗教だ。しかし、「そう思うなら教会に寄付をしろ」とか「それならまず他宗教をつぶせ」とか「広宣流布して折伏だ」とか、そういう方向になるとまた違う方向に行ってしまう。
まずは自分自身が心穏やかにそういう世界を想像し、「そんな世界がいいな」と思うこと。「そのためには隣人を説得して」とか思わない。今月のノルマのためでもなければ自分の宗教的地位のためでもない。
ジョンは静かに穏やかに語りかけてくる。ただ、真に願っているのか、それが重要だ。理想についてよく考え、思い続けることが力になると言っているのだと思う。

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