2018年12月25日火曜日

Bohemian Rhapsody

Queen [ Freddie Mercury ]

Queenの代表曲というだけではなくロック界全体の代表曲。本当に凄い曲だ。
Queenはもともとオペラっぽいコーラス・ワークの曲が多いグループだったが、この曲はその極致で、中盤はまさにオペラそのものといえるほどだ。
今上映中の映画『ボヘミアン・ラプソディー』も良いが、この曲で映画というと個人的には1992年の『ウェインズ・ワールド』を思い出す。バカバカしいコメディだが、この曲のシーンは最高だ。

曲は組曲のように全然違う雰囲気のパートがいくつもある。まず出だしは重厚なアカペラ・ハーモニー。続いてピアノの弾き語りによる静かなバラード。それにバンドが加わってきてだんだん盛り上がる。すると中盤にイキナリ曲調が変わる。まんまオペラだ。よほど人がいないとライブでは再現不可能というくらい作り込まれている。そしてまたイリナリ変わる。一転してハードロックになり、最後は前半のピアノのバラード調、アウトロで少しだけアカペラの雰囲気に戻るという構成。文字で書いても結構複雑だ。
重要なポイントだと思うのは、ピアノのバラードとオペラ部との対比だ。これがこの曲の肝。普通はキレイなバラードで纏めて終わるはずだ。「人を殺してしまい、人生もう終わりだ。皆とも別れなければならないが、どうか悲しまないでこれからも生きていってください」というような内容を美しく歌い上げる。ところがオペラになると一転、人間の本性が出る。色々な解釈があるが、心の内を歌っているのは間違いないだろう。不安な様子、心の葛藤を歌っているのも間違いないだろう。キレイ事で終わらないのがさすがだし、ロックだ。
ハードロック調の部分は更にハッキリと本音が出て、不安を通り越して開き直る。「そんならお前は俺に石を投げつけようって言うんだな」「唾を吐きかけようっていうんだな」という感じだ。
そして最後は「どっちにしろ風は吹く」という感じに悟りの境地に達する。

曲を見ていこう。かなり複雑だ。まずアカペラの重厚なハーモニー。4声を何回かオーバーダビングしているようだが、実際に歌うのは出だしからなかなか難しい。最初の音は下から「レ♭ ファ ソ シ♭」だが、特に「ファ」と「ソ」を同時に歌うのが難しい。レコーディングでは別録りだろうが、それでも難しい。コード的には「Gm7」「C7」「F7」「B♭」「Gm7」「B♭7」「E♭」「Cm7」「F7」「B B♭ A B♭」「B B♭ A B♭」「E♭/B♭onD」「D♭dim/F7onC」「F7onC」で次のパートへ入る。コード進行を見ただけでも難しそうだ。ピアノでコードを鳴らすだけでも結構楽しい。

次のピアノ・パートは「B♭」からアルペジオのように弾く。フレディは3拍目(ソ)と4拍目(ファ)の時にオクターヴ高い音を左手で加えて印象付けている。2小節のイントロの後の歌の部分から「B♭」「Gm」「Cm」「Cm7/F7」「B♭」「Gm」「Cm/Baug・E♭onB♭」「Am7♭5/A♭M7・E♭onG」で、後半は「E♭」「Cm」「Fm(ベースがファ ミ ミ♭ レと下りていく)」「B♭7」「E♭/B♭onD」「Cm/A♭m7」「E♭/A♭・E♭・Edim・Fm7onE♭」で「B♭」に戻る。コード・ナームにすると難しそうだが、弾いてみると意外と難しくなく、フレディが歌いながら音を探して作曲したのが見えるように、結構生々しい感じがする。
この後繰り返しとギター・ソロのパート。ブライアン・メイのハンド・ビブラートとタメ、そして特徴あるギターの音が素晴らしい。ベースが下りていく何度かめの「Fm」の後、更に「D♭ C B B♭」と下りて、「A」の四分打ちに変わる。ここからいよいよオペラ・パートだ。

ピアノがメインなのは変わらない。コードを見ると2小節のイントロの後の歌の部分から、「D A Adim A」「D A Adim A」「D A D A」「Adim A D A」「D♭onA♭/A♭7」「ConG/E7」「A」という感じ。この後が「ガリレオ」の部分。「I'm just a Poor boy nobody love me」の直前が「E」で、「B B♭ A B♭」「B B♭ A B♭」「A♭onE♭ E♭ E♭dim E♭」「A♭onE♭ E♭ E♭dim E♭」「A♭/E♭onG」「F/B♭」「A♭ E♭onG F#dim Fm7」という感じで続く。この部分の最後の
この後、コードを示すだけではよく分からないのでこの後は省略するが、4声の重厚なハーモニーだ。オペラ・パートの最後の「B♭7」を伸ばすところなどは、5声か6声くらいになっている。

そして今度はハードロック・パート。複雑なオペラ・パートの後だけにシンプルなギター・リフがとてもカッコ良い。コードもほとんど「E♭」と「B♭」「A♭」のみのシンプルさ。前のパートの続きなのでちょっと変なキーだが、ギターではあまり関係ない。このパートの後半で3連符で上昇するフレーズが良い。そしてそれをピアノが引継ぎ、次のパートへと移る。素晴らしい。
「E♭/B♭onD」と次の「Cm」の部分でギターがコード・トーンを鳴らし、その後のハーモニー・パートが実に美しい。ビデオ・クリップを見るとブライアンがライト・ハンド奏法のような右手の動きを見せるが、ここにライト・ハンドは出て来ておらず、おそらく指でピッキングのニュアンスをコントロールしているのだろう。
「Nothing really matters」の部分からは「Cm/Gm」「Cm/Gm」「Cm/A♭m7」「A♭onB♭」「E/A♭onE」「E/E♭dim」「B♭monD/onD♭」「C7」「C7/F」と来て、最後に「B♭ FonA BdimonA♭ C7sus4onG」「F」で終幕。
「A♭m7」や「A♭」の使い方など、最後までフレディっぽく流石と思わせる。

一番最後の4拍全部違うコードのところもとても難しそうだが、実際は「シ♭ レ」「ラ ド」「ラ♭ シ」「ソ シ♭」と下がっていき、間に「ファ」を挟んでいるだけで、とてもシンプル。それを無理にコード・ネームにしているだけで、曲全体的にそんな感じだ。弾いてみると、コードはそれほど難しくない。
だが、長くて複雑な曲を完璧に把握することと、1音1音意味を込めて弾くこと、そして何といってもコーラス・ワークに重点を置いて演奏するのは至難の業といえる。だからこそ、すべてを再現ではなく、ピアノ等でコードを追っているだけでも結構楽しいものだと思う。

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