2004年3月7日日曜日

さくら

森山直太朗 [ 森山直太朗/御徒町凧 ]

昨年大ヒットした曲で、日本人なら誰でもウルウル来やすい卒業をテーマにした曲だ。この曲の歌詞を聞いてつくづく思うのは、卒業と桜の相性の良さだ。桜の美しさは1年の中ではほんの一瞬だけ。季節限定の、それも卒業の季節限定の美しさだ。

卒業というのは、自分が一歩成長した証であり、喜ぶべき節目であると同時に、友達や先生、中学時代や高校時代、大学時代といった自分の中の一つの時代との別れでもあり、これから始まる新しいステップへの不安も感じさせ、分かりやすいながらも微妙な感情が入り乱れるものだ。私は幼稚園の卒園式ですら同様の気持ちを持っていたことを今、思い出した。
この複雑な感情は桜の見事な美しさ、はかなさ、散り行く様、そしてまた来年へという希望などとオーバーラップさせやすい。「また来年」と言えど、忙しくて会えないかもしれないし、死んでしまっているかもしれないし、少なくとも今までのように毎日会うことはない。来年のことなど誰にも分からず、はかない願いだ。
「泣くな友よ、今、惜別の時。飾らない笑顔で、さあ」などと言われると余計に泣けて来る。別れが悲しい、会えなくて寂しいという感情だけでなく、今まで楽しかったね、ありがとうという感謝の気持ち、それぞれの道を頑張ろうという勇気など、様々な感情が混ざっている。

これを書きながら、日本でも入学を秋にしたらという声も聞くが、やはり卒業は桜と一緒に、と思った。

曲はピアノの伴奏だけのシンプルな曲だ。曲の構成そのものもかなりシンプルだが、サビの後半の部分の、「さらば友よ、旅立ちの刻」のコード進行が「A」 「E」 「F#m」 「C#m」で、その後の「変わらない笑顔で」の部分が「D」 「AonC#」 「Bm7」 「Esus4」 「E」となっていて、ベースの下降が綺麗だ。(例によってキーは少し違うかもしれない)

歌はファルセットを多様しているが、メロディの途中や歌詞の単語の途中で切り替えているところを見ると、たんに高音が出ないからファルセットにしているだけだろう。何度もスイッチする時は少し違和感を感じるが、歌詞に浸っているからそれほど問題ではない。

この曲を初めて聴いた時は、「卒業&桜なんて大昔からあるテーマを、いかにもというクサい歌詞で大袈裟に歌っているなぁ」と批判的に思ったが、しかしどれだけクサくても、このテーマは日本人の気持ちをとらえやすいのだなと思った。大ヒットして、夏になっても秋になっても冬になってもテレビやラジオでかかっていることにも嫌気がしそうだが、春を感じるこの時期になると、いつの間にか口に出て来るところに日本人を感じる。

0 件のコメント:

コメントを投稿