2018年10月23日火曜日

Race With Devil On Spanish Highway

Al DiMeola [ Al Dimeola ]

屈指の早弾きギタリストとして名を馳せたAl DiMeolaの代表作『Elegant Gypsy』からの1曲。ロック界のアルヴィン・リーやリッチー・ブラックモア等、早弾きギタリストと呼ばれる達人が何人もいたが、それらを遥かに凌ぐ凄腕として登場したのが、ジャズ/フュージョン界のアル・ディメオラだ。ヴァン・ヘイレンもイングヴェイも登場以前のことだ。
「早弾き」という言葉自体、一部の人以外にはそれほど使われるものでもなかったが、彼の登場以降は「早弾き」というだけで「凄い」と思われる時代になり、ロック界も含めてそれから10年以上も早弾き合戦のような時代が続くことになる。これをディメオラの影響と責任だというつもりは全くないが、彼の登場によりギター界全体が一段レベルアップしたような感じになった。まあ、ロック界ではペンタトニック、ジャズ界でもブルーノート等が全盛の中、それらが一段落ついて次のステージに上がるべき時代だったのかもしれない。
一応、ジャズというか、フュージョンに分類されるが、私個人的にはちょっとオシャレなロック・ギタリストという感じで捉えている。

で、この曲。特にディメオラの「早弾き」を世に知らしめたような1曲だ。タイトルのイメージぴったりの曲で、まさにデビルがスペインの高速道路をレースしているような曲だ。スペインを意識したメロディなのだろう。

最初から、単なる8ビートでないところに「ロックとは違うな」と思わせる。ベースとコンガのリズムが「これから何か始まるぞ」と思わせるワクワク感がある。
そして期待通り、ギターとのユニゾンでの16分音符の早弾きが登場。これは凄い。ギター、ベース、キーボードでのユニゾンも出て来るが、凄まじい限りだ。この後、バンドで合わせてブレイクしつつ、早弾きという繰り返しだ。
実際このテンポでの16分は結構早い。滅茶苦茶に早いというのではなく、キッチリとリズムに乗せた16分音符であるところが返って難しい(ロック系では符割無視の早弾きは結構多く、楽譜に書くと9連符とか11連符のような意識しているとは到底思えない符割になってしまう場合も多い)。そしてハンマリングやプリングが一切なく、すべてピッキングによる音だ。正確無比なピッキング・テクニックといえる。まさにマシンガン・ピッキング、凄いの一言。少し歪ませているとはいえ、ピッキングによる音の大小(強弱)もない。

最初のイントロの合わせが終わるといよいよ本編だ。主題のようなゆったりしたメロディ。ヂィメオラのビブラートは弦を横に揺らす(チョーキングのように)のではなく、縦(弦のテンションを強めたり弱めたりするように)に揺らす感じで、ジャークオフ(ジャックオフ)・ビブラートっぽい。コードは「Bm7 9」一発。時折11thの音も入っているようだ。
中盤には「Bm/A」「GM7/F#7・A7」のような感じになる部分もあるが、だいたい「Bm7」だ。

中盤から終盤にかけても16分音符の早弾きと2拍3連のフレーズが交互に出て来る感じで経過。ソロは基本的にダイアトニックで、このあたりはペンタトニック・ベースのロックとは決定的に違うところか。だが、それほどジャズっぽいわけでもなく、起承転結っぽく解決するわけでもない。終わり方もフェイド・アウトだし。
ドラムのグルーヴ感がさすがと言う感じだ。

余談だが、イングヴェイはこの曲を含めてディメオラを結構意識していると思う。「Trilogy Suite Op: 5」や「Krakatau」あたりに展開が少し似た部分がある。
また、HR/HMバンドのRiotが1990年にカヴァーもしている。割と忠実にコピーしている。

0 件のコメント:

コメントを投稿