2004年2月21日土曜日

You Really Got Me

Van Halen [ R.Davies ]

Van Halen衝撃のデビュー・アルバムに入っている曲だ。前の「Eruption」にド肝を抜かれて呆然としていると、たたみかけるように入って来るヘヴィなリフに再びKOされてしまう。とにかくカッコいいの一言!
最高のギター・サウンドだ。今でもこのアルバムのEddieのギターの音がベストだという人は多い。

さて、この曲は実は彼らのオリジナルではない。少し古いロックも好きな人ならよく知っているだろうが、Kinksという1960年代のイギリスのバンドの曲だ。
録音技術の進化のおかげで、10年以上も後のVan Halenの方が当然、良い音で録音されているが、演奏そのものは基本的には似たようなアレンジだ。「Kinksの曲をそのままやってみました」という感じである。

しかし、どう聴いてもVan Halenなのだ。そこが凄い。
まずはギターだ。合間にオカズを入れながらヘヴィなサウンドでワイルドに弾きまくっている印象だ。これだけで同じ曲が随分新しく聴こえるものだ。
ボーカルはオリジナルと近い感じだが、シャウトがDaveらしい。
リズム的にもオリジナルより早くなっていて、スピーディでキレが良い印象になっている。

演奏そのものはオリジナルに近い感じで、一番の聴きどころはやはりギターだ。ソロは古いロックンロール・タイプのチョーキングで入っておいて、途中でEddieのトレードマークであるライトハンドを絡める。
前の曲の「Eruption」はギターだけのソロのような曲で、ライトハンド奏法にビックリしつつもフリーで何でもOK状態なので曲にどう生かすかとは別のものだった。しかし続くこの曲で早くもその回答を示しているところが凄い。

もう一つ、この曲にはトリックがある。それはイントロだ。
ドラムもなしでギターだけでリフが始まる。どういうリズムで聴こえるだろうか。
普通に(?)音を追っていると、リズムが入ったところで突然リフが変化したように感じるのではないだろうか? 

頭から「ソララソ ラ」と聴こえるかもしれないがこれはリズム遊びの一種で、実際は、最初の「ソ」は前の小節の4拍半の音で、頭からは「ララソラ(1拍半休符)ソ」なのだ。 錯角させるのは、多分最初の「ソ」の前に入るギターのノイズだろう。ノイズといっても、もちろん意識してわざとに入れている音だ。「カカッ」と入るアレだ。 よく聴いてみてほしい。回答はKinksの方に書く。(^_^)

2004年2月14日土曜日

Strutter

KISS [ P.Stanley/G.Simmons ]

今日はバレンタイン・デー。そんなこととは何の関係もなく、KISSである。ド派手なメイクやステージ・セットで有名な彼らだが、意外にも(?)曲は素晴らしいものが多く、ただのイロモノではない。実は私は大ファンなのである。

大ファンの理由は、やはり曲なのだが、大きく分けて2種類のタイプが好みと合致する。 一つはBeatlesの影響を感じさせる素晴らしく美しい曲。Paul Stanleyの曲に多いがGeneのにもある。
もう一つは、Black Sabbathをアメリカンにしてオドロオドロしさを抜いたような骨太ロックだ。音が太いだけでなく、曲も芯がバチッと決まっていて、余計な装飾は最小限しかない。これは私がBlack Sabbathを好きなのとほとんど同じ部類のものだ。

さて、本日の曲「Strutter」だが、明らかに後者に分類される曲だ。KISS流骨太ロックの典型例だろう。
ギターのバッキングを聴けば、すぐにこれが古いロックンロール・タイプから来ていることが分かる。1950年代に繰り返されたギターのバッキングそのまんまだ。
これを歪みを持った太い音のギターでミドルテンポで弾く。メロディは1950年代ならメジャー系だろうが、KISSはマイナー調だ。これだけで最高にカッコいい。
メイクを含めたアヤシイ雰囲気のせいか、何かが起こりそうな惹き付けられる感覚すら漂う。

それでいながらサビはBeatlesバリのボーカル・ハーモニーだ。高音部はGeneだろうか。あれでGeneは結構高いパートを歌う回数も多い。

Beatlesバリの部分は一瞬だけで、すぐにAceがヘヴィなリフで切れ込んで来て骨太ロックの雰囲気に戻る。素晴らしくカッコいい!

ロック・ソングの善し悪しにはリフが重要な役割を果たす。カッコいい曲にはカッコいいリフがつきものだ。
この曲の場合、50年代風バッキングが最初のリフともいえるが、Beatlesバリのパートの直後の「Strutter!」と叫ぶ部分のリフが最高だ。とてもシンプルなところが骨太感を強調していて尚良い。

ギター・ソロ。やはりとてもシンプルで骨太だ。ペラペラの音で流麗に弾かれてもちっとも魅力ではない。どんなソロを弾くにしろ、サウンドはズ太い音であることが条件だ。
Aceのソロは本当にシンプルで誰にでも弾けるような感じだが、起承転結がハッキリしているせいかスリリングな感じがする。テクニックがなくてもカッコいいソロが弾けるという代表例のようだ。

最近、アメリカではKISSとAerosimithが一緒にツアーをしたようで、Joe Perryが飛び入りでこの曲をプレイしたそうだ。聴いてみたいものだ!

2004年2月10日火曜日

The Way It Is

Bruce Hornsby & The Range [ B.R.Hornsby ]

先日、ラジオでかかっているのを聴いて一発で気に入ってしまった曲だ。調べてみると、実は1986年のNo.1ヒットだった。
Bruce Hornsbyという人もまったく知らなかったのだが、かなり有名な実力派ミュージシャンで、Huey Lewis & The Newsの「The Valley Road」、Don Henleyの「The End Of The Innocence」といったヒット曲も彼のもので、他にもGrateful DeadのメンバーとしてやBob Dylan、Leon Russellといったベテランとの活動も知られている。知らなかったのは私ばかりなり。(^_^;

さて、この曲に限らず、彼の曲はどれもピアノ・サウンドが目立っているが、初めて聴いた時は最近録音されたMIDI系の音かと思った。しかし1986年なので自分で弾いているのだろう。音は本物の生ピアノとは思えないほどアタックが強くキラキラしたサウンドだ。しかし薄っぺらな音ではなく、私の大好きな中低音の暖かみは豊かなので問題なし。曲の構成はかなりシンプルなのに、なぜか盛り沢山に聴こえるのは、やはりこのキラキラのピアノ・サウンドのせいだろう。

ざっと曲をコピーしてみると、コード進行は「Am7」 「Em7」 「D」 「C」 「G」 「D」 「C」の繰り返しがほとんどだ。かなりシンプルだ。
「D」と「C」と「G」は何の数字もつけずに書いたが、実際は色々な音が混じっているので、複雑なコード名をつけるべきかもしれない。基本的には9thの音を多用していて、この3コードの時も多く出て来ている。7thもよく出て来て、これらの音がカッコ良く散りばめている感じ。

イントロの後、リズムが入って来るとすぐにピアノがバーンと3つのコードを順に鳴らす。裏で入るタイミングが最高にカッコ良い。コードでは「C」の部分で、最初が「ドレソシ」、次が「ドレソラ」、最後が「ドミソ」だと思うが、9thにトップの音が下がって来るパターンといえるだろう。このヴォイシングにもセンスを感じる。

サビに当たる部分と言えるのか、この最初のパターンから変わる部分もピアノがカッコ良い。音は「G」の時に「ラ」「シ」「ソー」、「F」の時に「ソ」「ラ」「ミー」、「C」の時に「レ」「ミ」「ソー」となる。やはり9th重視だが、この音の選び方!すぐには音をとれずに何度も聴き直してしまった。

ソロも聴きどころだ。基本的にはコードトーンを中心に崩しているのだが、とにかくカッコ良い。全部は紹介しきれないので、先のコードの繰り返しのうち、3回目の出だしの上昇ラインを例にすると「Am」の時が「ドミラシ」「ラレミミ」、「Em」の時が「ラシシレ」と来て下降ラインに入り「ソファ#レシ」。更に「D」の時は「ミレシファ#」と「レシソレ」、「C」の時は「ラソレシ」といった感じ。上昇ラインでは同じ音を連続するところもカッコいい。
選ぶ音は基本的にコードトーン、プラス7th、9thといったところなのが分かると思うが、スケールで考えてその場で弾いているだけかもしれない。

こんなピアノをさらっと弾けたら最高だろうなと思い、これからピアノに向かうところだ。

2004年2月4日水曜日

Jim & Janeの伝説

チェッカーズ [ 鶴久政治/藤井郁弥 ]

いきなりチェッカーズである。この曲はいつの時代の曲だろうか。1980年代なのは確かだと思うが定かではない。恐らく80年代後半だろう。久しぶりに思い出したこの曲、チェッカーズの中でもかなり好きな曲なのだ。「神様ヘルプ!」のようなおバカな曲より何倍も良い。
チェッカーズ自体にはそれほど思い入れがあるのではないが、かなり人気があったし、妹や弟が好きだったせいで、耳にする回数は多めだった。Beatlesっぽい戦略で売ろうろいう部分もあったのではないだろうか。当時、何度も「Beatlesみたいなやり方だな」と感じた覚えがある。

さて曲だが、好きな理由は、歌詞と曲の雰囲気が自分の中でマッチするからだと思う。日本語の歌詞の曲は、どうしても英語の曲よりも歌詞の比重が大きくなってしまう。
この曲の舞台は夜の道路で、バイクで飛ばしている。彼氏を事故で失った彼女を乗せて、彼氏を偲んでいる。だから楽しいドライブではない。
それでいながら他の車の赤いテールランプや対向車線のヘッドライト等が輝き、華やかなムードもある。悲しい場面に美しい風景。人の心は、たいてい複数の感情があると思う。1種類の感情だけということは稀だろう。特に相反するような感情が同時にあって、その複雑な気持ちを歌うような曲に魅力を感じる。

悲しい気持ちと嬉しい気持ちを歌う場合、大抵は悲しい歌詞に明るい曲調になるように思う。
この曲の場合もこれに似ていて、流れる車の輝きの風景と曲のイメージが合っているように感じるのだ。
走って行く車、走り抜ける事故現場といった次々に流れる風景は、時間の流れを強く意識させる。「動かない瞳が静かに濡れてゆくよ」という部分は、無情に過ぎて行く時間の流れの中で、彼氏と彼女の間の止まった時間を表わしていて、一方の時間は止まったまま、もう一方の時間も一緒に止めたいのだが、テールランプは次々に流れて行く風景。

この物語の中の「悲しみ」はとても分かりやすい悲しみだが、別に誰かが死んだりしなくても、誰にでも悲しみはある。その悲しみを振り切っていこうとするエネルギーを感じたい。爆音を轟かせながらバイクをぶっ飛ばす。若いエネルギーが一つの試練を越えようとする時の気持ちは誰にでも経験があり知っているはず。

悲しみ、流れ行く美しい夜の風景、若さ、越えて行く勇気。これらが分かりやすく伝わるのが魅力だ。

2004年1月29日木曜日

Tutti Frutti

Little Richard [ L.Richard ]

「ロックの王様」といえばChuck Berry。ロック・クラシックスをたくさん輩出したし、ロック・ギターの基礎を確立した。
しかしLittle Richardもこれに匹敵する存在だと思う。

何と言っても凄まじいばかりのボーカルだ。声は太いし、シャウトは最高だし、歌い回しも上手い。おまけに彼はサービス精神が旺盛なのか、たんに目立ちたがり屋なのか、衣装も派手派手なのが多く、見ているだけでも楽しい。そのスター性と迫力のボーカルだけで充分にロック界の王様クラスだ。直立不動で綺麗に歌い上げるスタイルのポップス界の常識からすると、とんでもなく野蛮で無茶苦茶なヤツという印象だったのではないだろうか。しかしそれが黒人・白人問わず熱狂させている。これぞ「ロックンロール!」と言いたくなる。

ちなみに、後に彼は牧師になったというが本当だろうか?

で、曲だが、実はこの曲は先にPat Boonがヒットさせている。もちろん、Boonの方がカバーだ。カバーと言ってもほとんど同じなのだが、Boonの方が軽やかで聴きやすい。Little Richardの方はパンチがある。何と言っても一番の違いはBoonは白人だということだ。白人音楽が白人にウケるという自然な流れとなる。
1956年、ロック黎明期のことである。

しかしBoonバージョンのヒットのおかげで、Little Richardも日の目を見ることが出来たとも言えるだろう。この曲を演奏すれば喜ばれるし、自分の曲なのだから誰も文句はない。
ピアノの鍵盤をぶっ叩きながら歌う姿は最高にカッコいい。まろやかなBoonの歌と聴きくらべると、ロックがどういうものかよく分かる。

決めは「A Wop bop a lu bop ba lop bam boom!」だね!

2004年1月22日木曜日

Colors

Saigon Kick [ J.Bieler ]

それほど有名でないフロリダのハードロック・バンド。東南アジアではそれなりに人気があったらしい。なぜこのバンドを知っているかというと、1991年のOzzy Osbourneのコンサートに前座として登場したからだ。 「あまり興味ないな」と思いつつも何となく聴いていたのだが、曲が進むにつれどんどん引き込まれ、この曲を演奏した時はすっかりお気に入りのバンドになっていた。
この時のOzzyの来日公演には2日連続で行ったのだが、2日目には前日が予習になっていたので、この曲を含め、ジックリと堪能することが出来た。
ライブから先に入るパターンはかなり珍しい。

このSaigon Kickというバンドだが、冒頭ではハードロック・バンドと書いたが、ジャンルを特定するのはなかなか難しい。クレイジーなメタル・ソングもあれば、この後流行するオルタナティヴのような曲もあり、かなりのポップ・チューンもある。Beatlesの影響も受けているであろう、印象的なコーラスワークも聴きどころだ。
トレードマークのボーカル・ハーモニーは、正にBeatlesのJohnとPaulばりで素晴らしい。ほとんどツイン・リードボーカルと言えるほどの迫力だ。ギタリストがハーモニーをつけているのだが、実際、後にリードボーカルが脱退した後は彼がボーカルも兼ねたようだ。

さて、この曲はバラードの部類に入る静かな曲だが、やはりハーモニーが印象的だ。同じコードで始まり、似たコード進行でのメロディだが、最初のハーモニーはルートに対し3度と5度、サビは1度と3度でハモる。

後半に2度転調があり、これがまた効果的で面白い。1回目の転調は全体が1音上がるもので、盛り上げるためによく使われる手法でどうということはない。しかしこの転調の後すぐにまた転調する。

最初に聴いた時は、この2回目が転調なのかどうかも分からなかった。似たメロディでマイナースケールになったのかとも感じたし、転調かどうかすら分からず、どういうコード進行になったのか即座には分からなかった。 答えは単純。たんに元に戻っただけ。つまり全体が1音下がっただけだ。慣れない進行を目の当たりにすると、実にいい加減な推測をするものだ。
元のコード進行は「Bmadd9」 「G」 「D」 「A」。すると2回目の転調直前のコードは「B」で終わり、1音下がり「Bmadd9」に戻る。このためメジャーからマイナーへ変わったように感じたのだ。音で言うと最後の音が「D#音」と「F#音」のハーモニーだったのが、1音下がった出だしは「D音」と「F#音」で、「マイナー化」が強調された感じになる仕組みだ。凄い。
この2回目の転調がとても印象的だった。

この曲を気に入ったもう一つは歌詞だ。「何だろう?」と思わせる歌詞の出だしはとても好きだ。いきなりその世界に引き込まれるからだ。この曲の出だしは「I can see the future」だ。「えっ?」と思い、イキナリ聞き入ろうとしてしまう。

それからボーカルの低音も魅力的だ。何箇所かとても低い部分が出て来るのだが、ハイトーンを上手に出すボーカルは多いが、ディープな低い声は高い音に負けず魅力がある。意識してのことか分からないが、ハーモニーの部分でも低音が目立つようになっている気がする。

基本的にヴァースとサビの2パターンしかない曲で、しかもコード進行が似ており、転調を無視すれば4種類のコードしか出て来ないのだが、こんなにも美しい曲になるとはと驚く。

2004年1月20日火曜日

Rock Box

Run-D.M.C. [ J.Simmons/L.Smith/W.Waring/D.McDaniels ]

ラップである。私はラップ・ミュージックのファンではない。曲には核となるメロディがほしい。リズムとMCだけでは、音楽として聴くには少し寂しい。おまけにリズムは機械的で単調なものが多いのも難点だ。グルーヴがなさすぎる。ラップが好きな人の中には「このグルーヴが最高」と言っている人もいるが、少なくともリズムで最も重要なドラムにはグルーヴはないのを分かってほしい。

さて、批判をするためのコーナーではない。Run-D.M.C.は、ラップを世に送り出した多大な功績がある。もともとはラジオのDJが、かけている曲のリズムに合わせて曲紹介をしたりしていたものが始まりというが、言葉をリズムに乗せてメッセージを伝えるという手法はとても面白いし、当時としてはとても斬新なアプローチだったと思う。
しかし、それもラジオのDJだからカッコいいわけで、ライブ・ステージでそれだけを聴くとなると、ノリとメッセージを聴きに行くということになり、音楽というよりは演説を聞くのに近い気がしてしまう。まして、日本人にとって英語の遊びを聞き取るのは難しい。聞き取れない演説は最悪だ。

で、この曲「Rock Box」である。一言で、カッコいい!!
散々批判をしておいてこういうのも何だが、一発で気に入るカッコ良さだ。充分ロックしているし、ドラムも明らかに人間のノリだ。グルーヴがある。

気に入る理由は明確だ。歌詞ではない。対訳でも見ない限り、聞いて理解するのはとても無理だ。
それは、まず第一にバリバリのロック・ギターが入っていること。サウンドも良い。最初のソロはほとんどメタル系のソロだ。それで「おっ」と思わせておいて、シンプルながらとても印象的なリフに入る。それも太いサウンドのギターによる。ここにリズミックなラップが入るわけだが、メロディ不足はこの印象的なギター・リフがカバーしているので全く気にならない。それどころか、リズムのアクセントを強調するような2人のコンビネーションがカッコ良さを引き立たせている。


ラップが好きでないこの私を一発でKOするとは恐るべき曲だ。(笑)

2004年1月19日月曜日

Road To Nowhere

Ozzy Osbourne [ O.Osbourne/Z.Wylde/R.Castillo ]

何と、これがOzzyの初登場だ。もう何度も登場していてもおかしくないはずだが、とにかく初登場だ。Ozzyの初登場なら、本来はRandy Rhoadsの曲にしたいところだが、気分で決まるコーナーだけにこういう選曲になってしまった。

さて前置きはこのくらいにして「Road To Nowhere」である。1992年の大ヒットアルバム『No More Tears』に入っているゆったりとしたナンバーで、バラードというのは少し違うがノリノリの曲でもない。
ギタリスト探しの名人・Ozzyの曲は、そのギタリストの影響を受けているのがはっきり分かる曲が多い。初代・Randy Rhoadsの曲はクラシカル、2代目・Jake E. Leeの曲はL.A.メタル、そして3代目・Zakk Wyldeの曲であるこの曲はカントリーっぽさが出ている。これらにダークで破壊的な雰囲気とポップさのOzzy印を押すと出来上がりというわけだ。 この曲最大の魅力はZakk色であるカントリーっぽさだと思う。Zakkも他のギタリストに負けず、充分にテクニカルなギタリストだが、この曲は細かなテクニックを超越している。

私はよく一言で表わして「大陸ノリ」と表現している。コマゴマ・チョコマカしたものではなく、ドーンとゆったり、大きく構えた、正に大陸的なスケールのノリという意味だ。言葉で説明しても分からないだろうから、聴いてもらうしかないのだが。

静かなアルペジオのイントロに続いて登場するギターのメロディ。気持ちの良い伸びやかなフレーズで、特にスピードのある部分もないし、特殊なサウンドでもない。高度なテクニックも何も必要のないシンプルなものだが、これを弾くのは難しい。ビッグなドラムのリズムも重要だが、普通に弾くと退屈極まりない、とてもつまらないフレーズになってしまう。微妙なビブラートや音程、リズム感が重要で、そういう意味ではテクニカルと言えるが、とても単純そうに見えて、ここまで気持ちよく弾くのは至難の技だ。
広い大地とスカッと爽やかに抜けた青空を思い出させる。そしてこのフレーズの終わりと同時にピッキングの強弱でOzzyの歌の世界へと入り現実に戻る感覚。素晴らしい!

ギターソロもアドリブで気分重視で弾きつつも、基本は「大陸ノリ」。時にドラムのリズムと絡んだり、本当に楽しそうなのが聴くだけで分かる。最高級のソロだろう。

2004年1月12日月曜日

Money Honey

Elvis Presley [ J.Stone ]

ケーブルテレビのヒストリー・チャンネルで『ロック・ヒストリー』という番組が放送されている。毎週30分程度の番組なのだが、貴重な映像が見れたり、様々なアーティストが登場したりするので良い勉強になる。

その番組の本編の後に、10分程度のダイジェスト映像が流れるのだが、その一番手がこの曲なのだ。毎週聴いているせいか耳に残って仕方がない。2004年早々には番組は終了してしまい、現在は1980年代のMTVの話題なので、Presleyの時代とは全然違うのだが、80年代のポップ・ロックやラップを聴いた後にPresleyを聴くととてもカッコ良く聴こえる。私は80年代よりも、50年代や60年代の方が好みなのだろう。
ちなみに、そのダイジェスト映像はその後、Buddy Holly, Little Richard, Chuck Berry, Beatles, Stones, Bob Dylanと続く。なかなかオイシイ。

1950年代後期は、今から50年近くも前になるが、その映像での「Money Honey」はとてもクリアだ。音も映像も素晴らしく、Elvisの弾くアコースティックギターがとてもカッコいい。たんにコード弾きをしているだけなのだが、とてもシャープなのと、ボーカルのリズムとマッチしている。歌詞も無理矢理つめ込んだようなものではなく、音符に合っていて聴きやすくノリやすい。出だしは「You know, the landlord rang my front door bell. I let it ring for a long, long spell.」だが、「ユノザ、ラーン、ロー、ラン、マイ、(フ)ローン、ドー、ベー」のように、伸ばす音が目立っていて、とてもリズミックに聴こえるのだ。

単純な3コードの曲とバカにしてはいけない。やはり一時代を築いただけのことはある。サビの直前で演奏がブレイクした時のボーカル、つまり「And asked him to tell me whatユs on his mind.」の部分が最高にカッコいい。2箇所のシャックリ唱法が効果的で、続く「He said」が更にカッコ良く聴こえる。

2004年1月2日金曜日

Mother Nature's Son

Beatles [ J.Lennon/P.McCartney ]

昔から大好きな曲。大自然を感じさせる雄大な雰囲気が最高だ。
曲はPaulがアコースティックギター1本でたんたんと歌っている、とてもシンプルな曲だ。ギターも特に難しい箇所はないので、少し練習すれば誰でも弾けると思う。
とは言え、そこはBeatles、何の工夫もないような曲ではない。例えば、コードの「A」と「D」が入れ替わりに出て来る部分も、そのままのコードを弾いてもいまいちバラバラした感じで雰囲気が出ない。押さえ方を少しだけ工夫する必要があるかもしれない。
最も面白いのは、「テュテュテュ」の部分だろう。パッと聴くと気づかないが、よく聴くとギターとボーカルとでハーモニーになっている。最初のコードはたんなる「D」だが、ボーカルのメロディに合わせるように、1拍毎に「A音」「F#音」「G音」「A音」がトップの音として使われている。コード「D」からは外れる音も押さえ方を変えて使われている。

このボーカルとギターのハーモニー部に続いて、下降していくような部分も特に美しい。「D音」が半音ずつ下がって行って、「G」「Gm」「D」と続く。素晴らしい!思わず「Yeah」と言いたくなるが、Paulもここで言っている。

この後、アルペジオっぽい間奏になる。ここはギターが2本ないと出来ないが、やはり美しい。私はこの曲は一人でしか弾いたことがないため、アルペジオの方はコピーしたことがないが、2人ギターがいればこちらを弾いてみたくなるパートだ。
ちなみに、一昨年のPaulのライブではこの曲をPaulがギター1本で弾いた。間奏部はどのようになるのか注目していたら、全然別のコード進行で「Mother Nature's Son」を連呼するパートに変えていた。やはり間奏はギター2本で味が出るパートなので、一人ではやっても意味がないと判断したのだろう。

右上から聴ける私の演奏もその時のPaulのを参考にしている。